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立ち読み危険『生き物の死にざま』

本日12月25日、扉の絵をクリスマスっぽく仕上げました。
メリークリスマァ〜ス。
サンタさま、いや、サタンさまでもいい、私に長澤まさみの顔をください。
まだ日付変わるまで数時間ありますので、鏡の前で待ってます。


2020年は洋服、アクセサリー、化粧品などへの物欲がすっかり削ぎ落とされ、アパレルショップをハシゴするよりも、紀伊國屋を彷徨い、本を買って読むという事に時間を使った1年でした。
これまでとは価値観が大きく変わったとよく耳にしますが、時間の使い方が大きく変わったという事が、そういう事なのかもしれません。ちなみに私の彷徨いランキング1位はこれまで通りLIFEなので、エンゲル係数高めな暮らしの価値基準は不動のようです。

さて、掲題の『生き物の死にざま』と姉妹本の『生き物の死にざま-はかない命の物語-』は、先日紀伊國屋で見つけて購入したものです。
生物に関する書籍コーナーで色々と吟味していたところ平積みにされていたそれらがふと目に止まりました。

生きざま、ではなく、死にざま、とな?

装丁にはペンギンやくま、カタツムリ、サケなどさまざまな生き物が淡い色合いで優しく描かれ、そこに「死にざま」という強い言葉がレイアウトされていることで、本書で語られるであろう命の儚さを予感させます。手に取ると、ザラザラとした触り心地が温かみを感じさせてくれる本です。

めくってみると30種類近い生き物たちが目次で項目立てされていて、ほとんどが知っている生き物なのですが、中には『アンテキヌス』といったちょっと聞き覚えのない面白い生き物も紛れ込んでいます。
それにしても、『アンテキヌス』の古代ギリシャ人感がすごい。初見で、肩から斜めに布かけてる人しか脳裏に浮かばへんわーと思っていたのですが、それは10㎝程のネズミのような有袋類でした。ギャップに萌えてしまいそうです。

へぇへぇなんて思いながら、その中の『タコ』の頁を開いて、少し立ち読みを始めました。私はタコを食べると胃痛がするアレルギー持ちで、たこ焼きも、どうしても食べたい時はタコだけ残して食べなければなりません。
私に胃痛をもたらし、大好きな食べる事の幅をせばめるヤツらは一体どんな死にざまなんや、見てやろうやないか、と。

…。

ん、これ、あかんやつー。


『全米が泣いた』やつにも『今年一番泣ける』やつにも『感動の涙が日本を包む』やつにも一切泣かなかったのに、タコの死にざまでまさか泣く日が来るとは思っても見ませんでした。

涙がポタポタとこぼれ落ちそうになったので慌てて上を向き、とりあえずめちゃくちゃ面白い事を考えて涙を止めようとがんばりましたが、何も思い浮かびませんでした。
都会の紀伊国屋書店で、ただただ天を仰ぎ、ツーと涙を流すドラマの泣き方してる人みたいになりました。

ごめん、どんな死にざまやなんて、ほんまにごめんなさい。

タコのオスとメスが出会い、卵を生み、お母さんとなったタコは命をかけて何も口にせず卵を守り、ようやく子どもが生まれる頃には力尽きて、死んでいく。
本書にも記載されているのですが、それらが愛なのか本能なのかはわからないのです。ただ、その命を次の世代に繋いで死んでいく、という淡々とした営みが愛に起因していると思いたいのが人間なのかもしれません。

私はこれ以上の立ち読みは危険だと察し、それら2冊を購入して家路につきました。そして、家で思う存分嗚咽しながら完読しました。クリスマスイブに。

とはいえ、泣けるところが本書の魅力ではありません。

これまで知らなかった生き物の生態を知り、進化の過程を知り、生き残るための遺伝子の戦略を知り、自然界のルールを知る事ができます。命を守るための命をかけたギリギリの戦いには、生きる知恵を感じます。さらには、子育てができるということは強い生き物である事の証(子育ては強い生き物としての特権)だという事実など、これまで考えても見なかった事にも驚くばかりです。

2冊で合計60種類弱の生き物が紹介されていますが、これら本を読む事で、この世に生きる多くの生き物の死にざまに思いを馳せ、そしてその中の1つとして人間の死にざまにも思いを馳せる事ができます。

人間は想像力を持つからこそ未来に希望を抱く事ができますが、一方で未来を憂い絶望に打ちひしがれる生き物です。だから“ただ今を生きる“ということが非常にむつかしい。そりゃ、長澤まさみにだってなりたい。(しつこい)
でもほとんどの生き物は、ただ限られた命で今を懸命に生きているだけです。
その事を改めて知り、さまざまな事を憂いてしまいがちな今、この本に出会えて良かったと思うクリスマスなのです。



#日記 , #エッセイ , #生き物の死にざま , #本 , #読書 , #紀伊國屋書店





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