![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88322388/rectangle_large_type_2_69c5c7f3eda326e3e5cea44d3264a0d7.png?width=800)
読書録📚ケーキの切れない非行少年たち
kindleでマンガ1巻を読んだら、新書の方が気になり読んでみました。
結果、読んでよかった!!
というか、日本人全員読んでほしい!
ケーキを等分できないことの意味
本書では、ケーキを等分にできないことが問題なのではなく、このような切り方をしているのが強盗、強姦、殺人事件など凶悪犯罪を起こしている中・高の年齢の非行少年たち、という点に問題があると指摘。
つまり、ケーキが等分できない、のような認知力を持つ彼らに、非行の反省や被害者の気持ちを考えさせる従来の矯正教育を行っても、意味がないということ。
※認知力に問題がある=必ずしもケーキを切れないということではありません
ケーキを等分できない子の生きにくさ
人は、五感(見る、聞く、触れる、匂う、味わう)を通して外部環境から情報を得る。
たとえば、認知力の低い生徒A。
聞く力が弱く、先生に「算数の教科書の38ページをあけて5番の問題をやりなさい」と言われても、後半が聞き取れない。38ページまで開いてどうしたらいいか分からなくなる。
そして、周りをキョロキョロしたり、ぼーっとしたりする。
これが度重なると、傍からは
"ふざけている""やる気がない"
とみなされる。
生徒Aは先生に何度も怒られるのが嫌で、わかったフリをする。
そして周りから"ウソをつく"と認定される。
ここでの問題点は2つ
先生側が、一般的な認知力に照らし合わせて生徒を判断しようとしていること
生徒は、認知力の低さゆえ、その状況や空気を読めず"自分はみんなから避けられている""自分だけ損をしている"と被害感を募らせる
このわかり会えない構造により、認知力の弱い子が学校生活でふるい落とされ、非行に走るという流れになるようです。
しかし、
非行=犯罪⇒後が大変なことになる
という感覚を万人が持っているかというと、そうではない。
計画が立てられない、見通しが持てない
非行少年に、
「あなたは今、十分なお金を持っていません。一週間までに10万円用意しなければないけません。どんな方法でもいいので考えてみてください」
こう質問したところ、
・親族から借りる
・消費者金融から借りる
・盗む
・騙し取る
・銀行強盗をする
といったものが出てくるようです。
ここでの問題は、「借りる」選択肢と「盗む」選択肢が普通に並んで出てくるということ。
「盗む」選択肢は普通じゃない。
しかし、万人に"当たり前"は通用するとは限らない。
しかしこの"当たり前が通用しない子"は、身近に少なからず存在する。
「クラスの下から5人」の子どもたち
本書の少年院の子たちは幼少期、被虐待歴、家庭内暴力、親の刑務所入所、離婚などもあるが、全員に共通しているのは、小学校時代に見られる知的障害のサイン。
現在一般に流通している「知的障害はIQが70未満」という定義は、1970年代以降のもの。
1950年代の基準はIQ85未満とされていたが、人数が多すぎ支援現場の実態に合わなかったため引き下げられた。
つまり、知的障害はあるものの正式に認定されないIQ70〜84のグレーゾーンの子どもたちが現在もクラスに存在している。
その割合は全体の14%。つまり、1クラス35名のうち約5人は、支援が必要ながらも気づかれない存在になっている。
サインの「出し始め」は小学2年から
非行少年に共通する小学校時代のサインの例
・集団行動ができない
・嘘をつく
・人のせいにする
・その場に応じた対応ができない
・感情コントロールが苦手でカッとなる
(20個弱あったけど割愛)
これらの特徴が見つかるのは、だいたい小学2年から。
この背景には、知的障害や発達障害といったその子固有の問題、家庭内での不適切養育や虐待といった環境の問題がある。
しかし、その背景がクローズアップされることはなく、友達からバカにされ、いじめに遭い、親や先生から「手がかかるどうしようもない子」のレッテルを貼られ、問題児として扱われる。
「背景」に誰も気が付かない。
ここが問題。
褒める教育だけでは問題は解決しない
"褒める""話を聴く"は、その場を取り繕うのにはいいが、長い目で見た場合、根本的解決にはならない。
勉強ができない子に、「走るのは速いよ」「勉強ができなくてイライラしていたんだね」と話を聞いてあげたところで、勉強ができない事実は変わらない。
じゃあどうすればいいのか?
この具体的治療教育が本書に書かれているので、気になる方読まれてみてください。
所感
反省させる以前の潜在的問題を抱えている子は、犯罪報道の中だけでなく、身近にいると感じさせられた。
認知力が低い子がいることが問題なのではなく、そのような子を受け入れる土壌が脆弱ゆえに、被害感を募らせて犯罪を起こす、けど悪いことと認識していないため、反省させることに意味がなく再犯。
もともと悪いことをするはずじゃなかった子が、環境のせいで悪いことをしてしまうという流れはなんとかしなきゃいけないと、読んでからずっと自分にできることはないか考えています。
この構造に向き合うことは、社会のためにもなるし(刑務所にいる受刑者を一人養うのに年間300万、犯罪者を納税者に変えるだけで大幅な経済効果)、自分の家族が犯罪に巻き込まれる可能性も減らせる(幼児は性非行少年に狙われやすい)
違いを差別するのではなく、その子が世界をどう認知しているのかを理解し、適切な教育を施せる社会が望ましい。
これはもはや先生など教育関係者だけの問題ではなく、支援を必要とする子はクラスに5人はいるという当事者意識で向かわねばならないなと思いました。(我が子ももしかしたらそうかもしれないし)
マンガは、Kindle Unlimited無料なので、気になる方ぜひ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?