ロマンチストな彼と、そうでもない彼女
山の伝説〔超ショートショート〕
この山に有名な伝説があるんだよ。
いまキミが口に放り込んだブルーベリーガムを見て思い出した。
ここでは、春になると、羽の透けた美しい紫蝶を見ることがある。
滅多に出逢わないけど、たまに現れるその蝶の美しさは、この山では伝説になっているんだ。
あまりに妖艶な美しさで、不気味なくらいだから、あれはもしかしたら、何かの化身なのではと、噂もたった。
なんの化身かはご想像にお任せする。
僕の想像ではきっと、夜露に濡れた桔梗の花かなんかが、
月の光をたっぷり浴びて、
周りの動物や虫たちさえも見守ってしまうほどに光を放ち、
やがて蝶になり、舞う様だよ。
『なるほどね。だけど案外、そんなに美しいものともかぎらないわよ。もしかしたら、私がさっき吐き捨てたブルーベリーガムの化身かもしれないしね』
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