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ネットやゲーム依存の心理学

先日ゲーム・ネット依存についての以下の記事を見ていただいたそうで、取材を受けさせていただきました。その時にした話を少しまとめてみます。

お子さんがゲームばかりしてるとか、一緒に住んでる人がネットばかりやってる、スマホ見てばっかりとか、そういうことで心配になることがあるのかなと思います。

ネットもゲームも現代社会にはなくてはならないもので、10年先のことを考えると、科学はどんどん進化して、インターネットなしの仕事はほぼ考えられなくなりそうです。

私の過去ですが、ゲームやり過ぎだよーとか、テレビ見すぎだよーとか言われて育った30代中旬ですが、いまはテレビ見るとか(むしろあまりないか)、そんなに変なことではないですよね。

ネットやゲームについても、そういった過渡期にあるうえでの事象であることはまず抑えたうえで、どんな場合に対応が必要かを考えてみましょう。

ネット依存とゲーム依存は違う話である


まず前提にしたいのが、「ネット依存とゲーム依存は別の話」ということです。

ネット依存については、

心配で情報をずっと見てしまう、特定の動画を見る、SNSにはまるなど

ネットの利用方法にも色々ありますよね。ネットゲームも広く見るとネット利用にもあてはまります。

ゲーム依存についても、ゲームにどういった目的があるかによって意味が変わってきます。

課金要素がある場合はギャンブルの枠組みで考える必要があるかもしれません。仲間要素がある場合は、関係性への依存に該当するかもしれません。

そういったように、同じようになんらかのことがらにハマる、いわゆるプロセス依存ではあるといわれているのですが、それぞれの内容の意味が違うよってことは押さえておきましょう。

ネット依存やゲーム依存のチェック

ネット依存やゲーム依存といいますが、依存かどうかをわける基準はあるのでしょうか?

1つはアンケート式のチェックリストに答えてみるのはありかなと思います。

久里浜医療センターさんのホームページにアンケート式のテストがありますので、興味がある方やお困りの方はお試しください。

こういったテストからわかることは、依存の基準には

時間がどんどん長くなっていたり、やめようとしたがうまくいかなかった、やめようとしたときにイライラが止められなくなった、あるいは生活に支障が出ている

といったことがあります。

特に、睡眠や食生活に影響が出ることで健康上の悪影響が出てくる場合や課金額が自身の使えるお金の範疇を超えてきたりする場合は注意が必要のように思います。

上記のようなテストを使った調査では、ゲーム依存が約4%くらい、ネット依存が約5%くらいいる。大人を対象とした調査では、パンデミック前後でどちらも増えているという話もあります。

そういった場合にはなんらかの対処が必要な場合もありますし、専門機関の利用も考えてみる必要があるかもしれません。

家族の対応で気をつけたほうがいいこと

ネット・ゲーム依存について考えないといけないことは、「やめなさいではやめられない水準になっている場合も多い」ということです。脳機能レベルでの変化が起こっている場合もありますし、言ってやめられる場合は少なくとも病気ではないのかもしれません。

叱ったりや行動を監視したり、機器を処分したり隠したりすると、本人のイライラが増してしまって、さらにはげしい行動をとってしまう場合もあります

そうするとコミュニケーション上も、OFFなコミュニケーションになってしまうこともあるでしょう。

そもそもに、依存以外の問題、たとえば発達的な困りごとや睡眠の困りごとがベースにあって、学校や職場に適応できない場合もあります。

その場合には、ネットやゲームについて話し合うよりも先に話し合うべきことが色々あるかもしれませんし、話し合いでは解決できないこともあります。積極的に医療機関に相談することも必要になってくる場合もあります。

どう対応するか?

依存についての考えの1つに、ストレス対処のために依存行動をしているというのがあります。自己治療仮説というそうです。

ストレス対処として、ゲームをしたり、ネットをしたり、みなさんも日常的にすることがありますよね。なので、すること自体は問題ではないのです。

問題になる場合は、依存する対象が1つしかない場合です。ストレスがかかった時に、ゲームばっかり、ネットばっかりになると生活の幅が狭まってしまいます。その対処ができないことで、ストレスが余計に強くなったりもします。

対処法をたくさんもっておけるようにするのがいいかもしれません。ゲームやネットでストレス対処や暇つぶしをすること自体は悪いことではないのですが、それしかないという状態がまずそうということです。ストレスがかかった時に、対処法が1つしかないのがまずいです。

家庭内であればお手伝いをしてもらうなどの役割を担ってもらったり、依存行動以外の対処をできたらプラスフィードバックするなどが考えられます。

家族で楽しい会話をすることも必要かもしれません。お子さんであれば、お子さんがおこなっているゲームやネットに興味を持って、その会話をすることで、会話が楽しいと思えるようになることもあるでしょう。

そういったことをきっかけにしていくと、ゆくゆく話合いが進んでいったあとでは、ネットやゲームについてのルールを作っていくなど、話し合いをしていくこともできるかもしれません。

本人は将来どうなっていきたいんだろうか?


もう1つ、こちらのものの見方を疑うことも必要になってくる場合もあります

本当にゲームをすることやネットをすることが悪いことなのでしょうか?

例えば、野球やサッカーに熱中している人に対して、そんなに熱中したら身体に悪いからやめなさいと言いますでしょうか?そしてそういう人が行っている行動を部活依存と呼ぶでしょうか?

本当に時間をかけて、将来になりたい職業に向けて取り組んでいることが、インターネットやゲームである場合、止めたほうがいいでしょうか?

まずは「どんなことを大切にしたいかを明確にする」のが必要です。プロゲーマーになりたい場合などは、むしろ集中して取り組んだ方がいいのかもしれません。ご家族でもそういったことを話し合う時間を作って、本人の将来についてゆっくり話し合う時間も大切になってきます。

一方、将来なりたい自分があるのに、漫然とゲームやネットを続けてしまう場合には、なりたい自分に向けて取り組む時間を増やすのもありかもしれません。

部活にしても、ゲームやネットにしても、先ほどお伝えしたように、かけるものが1つしかない場合、問題になったりします。

部活にしても、かけてきたものが先につながらなかった場合や終わった場合には燃え尽きてしまうこともあるので、いろいろなことに興味を持っていくことも大切だと思います。

今日の記事を書くにあたって、以下の書籍も参考にさせてもらいました。とても分かりやすい本なのでご興味がある方は読んでみてください。

ご紹介 ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本

最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。


筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

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