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800文字日記/20220408fri/035テーマ「図書館のなか」001

図書館の受付に立って異様な光景を見た。

奥の事務室で男が店屋物をほおばっていた。「できた?」と若い女を見上げる。若い女は自分の頬(ほお)にとんだ米粒を払い、書類を渡す。男はタバコの脂(やに)で黄色くなった歯を若い女に見せる。若い女は苦笑いをして書類を机に置く。男はそれを無視し青い血管が浮き出る女の手に触れる。事務室内が一瞬で凍る。こちらまで空気が伝わったのか受付の女が本を落とす。「きゃっ!」若い女は叫ぶ。「タカシ。事務室はパパの仕事場だ。遊ぶのなら館内で遊びなさい」男は子を叱る。老女が男のデスクにやってきて館外までとどろくような張り手を男に食らわす。男は目を見開く。「わたしが手本を見せます」老女は若い女にいって胸ポッケからボールペンを出す。男の手の甲にボールペンの先をつきさす。「ぐっ」男はあえぐ。「何様のつもりですか!」老女の怒号(どごう)で館内は地鳴りが起こる。ボールペンの先は男の手の肉にめり込む。肉の窪(くぼみ)は次第に血の溜まりとなる。「はうっ」痛みで男は涙を溢れさせる。「答えになっていない。立て」デスクから立つ男の股間を老女は蹴りあげる。悶絶(もんぜつ)する男を老女は顎(あご)でしゃくる。「あなたもやりなさい」。老女はボールペンを若い女に握らせる。若い女はおそるおそる男の手の肉にボールペンをめり込ませる。「ああ、良い!」男は勃起する。老女は頷(うなず)く。「次からはあなたが責任を持ってやるのよ」若い女はハイヒールの踵(かかと)で男の股間を押しつける。「ああ、もっと!」女は踵を沈ませる。男は白目を剥(む)いて失禁する。「あなた欲しいんじゃないの?」若い女は震える声でいってみる。「欲しいです」。男の子が窓ガラスに鼻を押しつけ事務室の中を見つめている。「なにが欲しいのよ!あのクソガキに向かっていうんだよ!」若い女は窓の外を指さして叫ぶ。「ぼくの反省が欲しいんです」

小会議室でよくやる演劇サークルの稽古じみた事務室の一部始終を見たあと、スーパーに寄って家に帰る。(799文字)


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