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官能ショートショート

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官能小説とショートショートを組み合わせたみたいなエスプリの効いた物語です。
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記事一覧

官能ショートショート「熱帯魚」

ふと目が覚める。
窓から午後の海風が入り、火照った体を気持ちよくすり抜ける。
あのまま眠ってしまったのね。
あなたも私の背中にぴったり体を寄せ、寝息を立てている。
お尻に当たるシーツが冷たい。
私たちが愛し合った証しがシーツを濡らしている。
まだ私の中からあなたのがあふれ出てくる。 
私の胸を後ろから包むあなたの大きな手に、私の手を重ねる。
サイドテーブルに置かれた二人のパスポートと腕時計。
その

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官能ショートショート「言葉の効用」

「君は最低だな」
頭の中によみがえってくるのは、上司が私をののしった言葉だった。
身体がささくれ立っているような気がする。
私はひとりカウンターに座って強めのカクテルを何度も口に運んだ。
何杯目かの注文をバーテンダーに告げる。
カウンターの中から私を気遣う言葉が返された。
女ひとりで酒をあおる姿に対しては正常な言葉だ。
確かに落ち度は私にあったかもしれない。
でも、その言葉は仕事の仕方を責める話か

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官能ショートショート「人生の意味」

順子と三度目の逢瀬。
20年間、女房以外の身体を知らなかった俺が、今、順子を、違う女を抱いている。
汗まみれの少しだぶついた順子の腹の上で腰を動かすたびに、吐き出される吠えるような歓喜の女の声。
突き上げながら、手からあふれる順子の乳房を何度も掴む。
俺の額の汗が波立つ順子の乳房の上に落ちる。
この久しぶりの快感と、男としての充足感。
俺は今まで家庭の為に散々苦労して来たんだ。
これは頑張ってきた

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官能ショートショート「おもてなし」

君が僕の顔を跨ぐ。
君と付き合って初めてのことだ。
四つん這いから、脚を徐々に開き静かに腰を落としてくる。
君の一番女らしい部分が、僕の鼻に着きそうになる。
同時に、乳房の柔らかい感触が僕のお腹に着地した。
僕の一番男らしいものが君の細く少し冷たい指に握られる。
僕の硬い側面を君の舌が這い始めた。
目の前の君は、濡れ、開き、粘膜はピンク色に充血し、きれいだった。
そこは僕の舌によって更に濡らされる

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官能ショートショート「セカンド・バージン」

よくある話だ。
中年に差し掛かった時の同級会。
昔の彼女と再会。
二次会で飲んで、酔って、いい雰囲気になって、そのままホテルへ。
人生も半ばを過ぎて、酸いも甘いもある程度噛み分けることが出来るようになった自負に、少しの冒険心が混ざると、こんな一線は簡単に越えられる。
部屋に入ってから奈緒は無言だった。
二十数年振りのお互いの身体。
何を話していいかわからなかった。
身体の変化を話せば、野暮になる。

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官能ショートショート「エプロン姿の効用」

今日は彼が仕事帰りに私の部屋に来てくれる。
初めて彼に作る手料理。
買い物した帰り、ふと立ち寄った雑貨屋さんで大きなフリルのついた、ピンクのエプロンを見つけて衝動買いした。
お料理してる姿もかわいいと思ってもらいたくて。
早速エプロンを着て、お料理の支度。
初めて見せるこんな姿。
ちょっと恥ずかしいかも。
彼が来た。
「お疲れさま。もうすぐ出来るから、冷蔵庫にあるビールでも飲んで待ってて」
リビン

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官能ショートショート「ロマンスグレー」

「何も怖がることはないんだよ、みんな僕に任せておけばいい……」
部長が私を見つめ言う。
部長には奥さんも、私と同じくらいの娘さんもいるのはわかってる。
でも、どうしようもなく惹かれてしまった。
私から誘った。
飲み会帰りのラブホテル。
私は初めてだということも告白した。
その初めての人が部長であって欲しいとも告げた。
ロマンスグレーの短い髪。
スーツ、シャツ、ネクタイのセンス、その着こなし。
すべ

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官能ショートショート「お持ち帰り」

じゃーん!
お持ち帰りしちゃいました!……と。
おお、かわゆい寝顔だねえ。
亮君、亮君、ねえ、ちょっと、ここ、私の部屋だよ、いいの?
それに亮君寝てるの、私のベッドなんだけど、いいの?
ハイ、ゆすっても、起きない、と。
大分飲んだもんねえ。
というより、私が飲ませたのか……ははっ。
お酒弱いの知ってるんだ。
何事も事前のリサーチは大事なんだよ。
亮君、覚えててね。
じゃんじゃん飲ませたあとは、担当

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官能ショートショート「誕生日プレゼント」

彼は浴室から濡れた体のまま出てきた。
脂肪の見えない引き締まった身体。
そこを直線に流れ落ちる雫。
腰に巻いた小さな清潔そうなタオル。
そのタオルの中央が水平に持ち上がっている。
二十歳の男の身体。
繁華街で拾ったの。
今日二十歳になったから、友だちとお酒飲みに来たんだって。
私はベッドの上でもう裸になってた。
私に覆いかぶさる彼。
舌を私の唇に差し込みながら、胸を荒々しく揉む。
硬く熱いものが私

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官能ショートショート「嫉妬」

俺は妻、幸恵の大学時代からの友人、法子を呼び出し問い詰めた。
「なあ、幸恵が浮気しているみたいなんだ。君は何か心当たりはないか?」
法子は唇に少し笑みを浮かべて、上目使いで俺を見上げ答えた。
「ばれちゃった? 実はそうなの」
事は重大なはずだが、彼女の様子は、まるでいたずらを見つけられた子どものようだった。
「相手は誰だ!」
声を荒げ、問い詰めた。
「聞きたい?」
笑みは消えない。
「当然だ! 俺

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官能ショートショート「ウェディング・デイ」

花嫁の控室。
純白のウェディングドレスをやっと纏うことができた。
立ち上がりくるりと回る。
揺れるレースの裾。
ひとりでに顔がほころぶ。
私は着付け係の人に「ちょっとトイレに行ってきます」と言って部屋を出た。
急いで廊下突き当たりの「多目的トイレ」に向かう。
トイレは「使用中」になっていた。
ドアをノックし、中に声を掛ける。
「私よ」
ドアのロックが外された。
急いで中に入り、直ぐドアに鍵をかけた

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官能ショートショート「義父と台所で」

「響子さん、台所の隅でこそこそ何をしているのかね?」
「あ! 義父さま、べ、別に、何も……」
「ん、どれ、どれ、見せてごらん、響子さん」
「あっ、だめです、義父さま!」
「ほう、これは、これは……りっぱなキュウリだね……ふふ、まさか京子さんが、こういうことをするとはね、思いもよらなかったよ……」
「いえ、これは……」
「いや、なに、そんな恥ずかしがることはないんだよ……思い出すよ、死んだ美佐江も同

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官能ショートショート「仲の良い姉と弟」

姉:「入るわよ」

弟:「な、なんだよ急に、部屋に入るときはノックしてよっ!」

姉:「あ、今、なに隠した?」

弟:「な、なんでもないよ、あっちいっててよ」

姉:「見せなさい!」

弟:「ああっ、だめだよぅ!」

姉:「なに、これ? これ、あんたの?」

弟:「そ、そうだよ、べ、別にいいでしょ? 返してよ!」

姉:「へえー、あんたもこんなものに興味を持つ年頃になったんだ?」

弟:「友達も持

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官能ショートショート『帰り道』

暖炉の前。
彼と寄り添い、素肌に同じ一枚の毛布をまとい、炎を見つめていた。
ラジオからは、数十年振りに襲った寒波の状況が繰り返し聞こえてくる。
でも、太い丸太でできた壁は、完全に外界の気配を遮断し、今感じられるのは暖炉と彼の温もりだけだった。
都心からほど遠い山中に十五戸ほど建つ高級貸しコテージ村に、私たちはお互いの家族に偽りのスケジュールを告げ、たどり着いた。
彼の肩にもたれかかりながら、雪が張

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