ドレス
結婚式は、和装だった。
憧れだった。
嬉しかった。
赤い和傘をさしてもらい、ちょこちょこと歩く姿は、少しは綺麗にみえたかな。
心のなかでは、「頭が重たくて、お辞儀ができないよぉ。少し顔を傾けると、首がもげるかも」
なんて、思っていたのだけれど。
それでも、
神社の境内で行われた神前式は、厳かで清らかで、幸せに満ちていた。
披露宴では、お色直しで、頭もセットし直してもらい、カラードレスを着た。
貸衣装店で、たくさん試着させてもらって選んだ。
ピンクのひらひらや、キンキラのゴールド、マーメイドタイプに、「どうやって歩くんですか?」というドレスまで、色々着てみた。
目の前に広がるきらびやかな世界に、心はワクワクとドキドキに満ちていた。
自分が着たいと思うドレスと、他人が見て似合うドレス。
どちらにしようか、迷いに迷った。
着たいドレスと似合うドレスが同じだったらよかったけど、違っていたから。
家族やお店の人に見てもらい、考えて考えて。
結局、他人が見て似合っているドレスにした。
白が基調で、淡い花柄が可愛い、素敵なドレス。
みんなに「似合っている」と言ってもらえたし、後で、披露宴の写真を見ても、これでよかったなと思った。
でも……
もし、似合ってなくても、着たいドレスにしていたら、どんな気持ちになったのかな。
後悔はしていないけど、ちょっとだけ、どうだったかなぁって思ってしまう。
自分の記事を見返しながら、リンクするドレスの思い出。
自分が書きたい文章と、読まれる文章って違うかもしれないなって。
まだまだ、そんなことを考えられるレベルじゃないのだけれどね。
でも、だからこそ。
今は、着たいドレスを沢山着てみようと思った。
とっても恥ずかしいけれど、見てもらえたらと思う。
☆
言葉のドレスを身にまとい、鏡の前に立つ。
後ろには、こんな私のことを見てくれる人がいる。
どんな顔をしているのか、怖いけれど、勇気をふり絞って振りかえる。
『どうですか? 似合ってますか?』
そして、いつの日か……
「着たい」と「似合っている」が一致するドレスを見つけられますように。
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