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雪のち桜【終わりと始まり】


バスを降りると、雪が散らついていた。


とぼとぼと、歩き出す。

大きなバックの紐が肩に食い込む。

「重いな……」


頭と頬に、雪がへばりつく。

「冷たいな……」


下ばかり向いて歩いてきたから、どの道を通ってきたか忘れてしまった。

「でも、いいや。帰り道なんて分からなくても」


気がつくと、目の前に大きな建造物があった。

「あ、病院についた」

「しばらく、ここで暮らすんだな」


無表情な言葉だけが、頭に浮かんでは消えていく。


ただ、世界が灰色に見えていた。

真っ白い雪が降っているというのに。



受付を済ませ、病室へ。

入院中の注意事項を聞いた後、すぐに点滴の用意をすると伝えられた。

腸の病気に加えて、別の感染症にもかかってしまい、腸の出血、肝機能低下、脾臓も数倍に腫れているとのこと。

身体中のリンパ節が腫れて、苦しかった。

「わたし、どうなっちゃうんだろう」


花の女子大生の時間が終わりをつげる。


終了の鐘が鳴っている。


絶望……



入院生活は、何もすることがなかった。
絶食なので、食事の楽しみもない。イヤホンでテレビを見ていても、耳がすぐに痛くなった。

本を読んでいても、疲れてしまって横になる。


だからといって、ずっと寝られるはずもなかった。


恋人ができたばかりだというのに。

好きで好きでたまらない人と、楽しい時間を過ごせると思ったのに。


「別れを告げられるかな」

「私から別れようかな」


「悲しすぎる」


「夢じゃないよね」


繰り返される思考に

ただ、ひたすらに涙が流れる。


何度、目を閉じて、開いても

ボヤける視界の先に、「ポタッ、ポタッ」と落ち続ける点滴。


止められない現実。



滴る液体に呼応するように

底がない闇に、ゆっくりと確実に



私は、落ちていった。





つづく。












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