小説「定食屋がVtuberをやってみた」2
2 初配信
お店が休みの日にいつもより早めに起きた。シャワーを急いで浴び、お店の食材の残りで作ったスープを飲みながら配信の準備を始める。
配信でこれから話す内容をメモしていく。お店に来たお客さんの話、食材の仕入れの際の失敗談、簡単な料理の作り方など1時間くらいは話せるような内容だ。
いよいよ配信を始めるボタンをタップする。いろいろなVtuberの配信を見てきたが、いざ自分が配信を始めるとなるとこんなにも緊張するものなのか。
ボタンをタップした。さっそく3人が自分の配信に来てくれた。「こ、こんにちは。ユイといいます。初めての配信なのでよかったらフォローお願いします」
なんとか挨拶の言葉が出てきた。まずは言葉が出てきてホッとした。
「素敵な声ですね」というコメントをもらった。声を褒められたのは初めてだった。
会話はなんとか続いた。「定食屋さんをやられてるんですか?すごい!」ユイのプロフィールの自己紹介欄をリスナーさんが読み、そこから話が広がっていく。
今回の配信で10人くらいがフォローしてくれた。ユイは楽しそうに話し、表情も豊かだった。
配信を始めて1時間が経過した。今日の配信を終えようとした頃だった。
「こんにちは」見たことのあるアイコンだった。
「ルカさん!?」私は驚きのあまり声が裏返った。
「来てくれてありがとうございます。今はお昼休み?」まさかルカさんほどの人気ライバーが自分の配信に来てくれるとは思いもしなかった。
「配信を始めたばかりの人はちゃんと一覧に出るからね。お昼休憩中だから少しだけ。ユイという名前は本名から取ったの?」ルカさんはコメントした。
「はい。初めてなのでまだわからないことだらけです」ユイはまだ不安な表情をしている。
「大丈夫。ちゃんと話せてるよ。キャラクターもちゃんと動いている。大成功だと思うよ」ルカさんの優しいコメントに安心した。
少しやりとりした後、ルカさんとも別れ、私は配信を終えた。今までに感じたことのない疲労と達成感を感じながらベッドに転がり込んだ。
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