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本の話

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#ハヤカワepi文庫

恥辱

恥辱

まえがき 今年もこの季節がやってきた。

 今年も発症してしまった。

 ハヤカワepi文庫の季節。

2024 今年はジョン・マクスウェル・クッツェー『恥辱』である。

 Disgrace / J.M.Coetzee (1999)
 鴻巣友季子 訳

 もちろん僕はクッツェーがどんな作家かは全然知らなかった。
 書店に行くと『ポーランドの人』という彼の最新作が売っているのが目につく。白水社のツイ

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一年の始まりはハヤカワepi文庫を読まないといけない病に罹っている

一年の始まりはハヤカワepi文庫を読まないといけない病に罹っている

 宿痾である。

 書くのを忘れたけど、去年はラッタウット・ラープチャルーンサップの『観光』をよんだ。
 今年は『悪童日記』である。

悪童日記 Le grand cahier
 アゴタ・クリストフ/堀 茂樹 訳 (ハヤカワepi文庫)

 この作品は、ハヤカワepi文庫のおすすめ本を調べているといつも名前が上がる名作だった。なのでいつか読もうと想いつつもどこか敬遠していた。戦争の話で、重たいもの

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2021年の始まり――ビラヴド

2021年の始まり――ビラヴド

(ハヤカワepi文庫さまに敬意を込めて)

 まずはじめに、一年のはじめにはハヤカワepi文庫を読まないといけない。そういう自分の中のルールあるいは慣例、もしくは習性のようなものがある。誰しもそうである。気づいていないだけで、右足から家を出る。そういう類の話だ。

 そして今年は、トニ・モリスン、『ビラウド』を読んだ。去年、ようやく増刷して、書店で入手することができるようになった。前々から読みたか

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一年の始まりに

一年の始まりに

 読んだ。今年も読んだ。

 今年はボリス・ヴィアン、『心臓抜き』
 過去を持たず、空虚な存在として生まれた精神科医、ジャックモール。
 彼はクレマンチーヌの出産を助ける。自らが産んだ三つ子を異常なまでに愛するクレマンチーヌ。でもこの世界には善も悪もないように見える。子供たちはそんな母親を嫌いも憎みもしない。空を飛ぶだけ。善意や悪意はあるかもしれないけど、去った夫アンジェルも、川に捨てられたものを

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