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#骨

プラスチック袋についた骨の粉

プラスチック袋についた骨の粉

遺跡からは、骨だけでなく、骨を加工した人工遺物も出土します。過去に遺跡に暮らした人びとが、動物とどのようにつきあい、動物にどのようなシンボリックな意味合いを投射していたかが明らかにできるため、そうした人工遺物がどのような動物の骨から作られたのかを明らかにするのは重要です。
しかし、ヒトが加工することによって、多くの場合、形から動物種を特定できる特徴は失われます。人工遺物から破片を採取してDNAやタ

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古代分子が明らかにする中世の骨病変

古代分子が明らかにする中世の骨病変

骨ページェット病 (Paget's disease of bone) という骨病変があります。一部の骨の代謝が異常に活発になり、骨が変形したり、痛みが生じたり、骨折しやすくなったりする疾患です。世界的に見ると、西欧で発症率が高く、特に英国では55歳以上の成人の1−2%が発症しているという報告もあります。

発症の原因についてはよくわかっていませんが、遺伝性の骨ページェット病の5割に共通する遺伝子変

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道端で人骨をみつけた話【人類学者の日常】

道端で人骨をみつけた話【人類学者の日常】

自然人類学を学ぶ授業では,たいてい,レプリカでなく本物のヒト全身骨格を詳細に観察して,スケッチをする骨学の実習があります.自分と同じホモ・サピエンスの体のなかに,どのような形の骨があって,どんな働きをしているのか,こういう機会でもなければ,なかなか知ることができません*1.

道端に人骨が落ちている?さて,今回のお話は,私がそうした骨学の実習を1週間ほどみっちりと受けていたときのこと.いろいろな形

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鉛の棺の数奇な運命

鉛の棺の数奇な運命

「福者Idesbald」という修道士が,今回紹介する研究*1の主役です.彼は,12世紀ベルギーのとある町の大修道院長で,1167年に亡くなり,シトー修道会のしきたりからすると稀なことに,鉛でつくられた棺に葬られました.

古文書の記録によると,福者Idesbaldの葬られた鉛の棺は,埋葬から70年経った1237年に開かれ,中身が確認されました.鉛の棺はその後再埋葬されましたが,そこからさらに400

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