読書まとめ『働かないニッポン』→社会を豊かにするための労働は終わった?
『働かないニッポン』河合 薫
一言で言うと
社会を豊かにするための労働は終わった?
概要
書店で見かけて気になったので、
図書館で借りて読んでみました。
私はいま有休消化期間中で、
労働から一時的に距離を置いている状態にあります。
距離を置いた状態で、当たり前のようにやってきた
労働について冷静に見つめ直したいと感じているのかも。
著者が主張する「働かないニッポン」とは、
以下の三層で構成されていると読み取りました。
自己保身に走る「ジジイ」
承認欲求が満たされない「働かないおじさん」
歪な社会構造に嫌気がさした「無気力な若者」
※年齢層や性別を含んだ言葉が使われていますが、
精神性や言動による区分です
三層のそれぞれが、承認欲求に飢え、
自己効力感を失っているのが日本の現状。
その結果、仕事への熱意が世界中で最下位になるほど、
歪んだ社会が形成されています。
本書を読むにあたっては、
以下 3点の問いを立てていました。
なぜ働かないニッポンになったのか?
将来、世の中はどうなっていきそうか?
今、自分はどうするのか?
本稿では、これらの問いに対する考えを書いていきます。
① 急成長が労働の価値にギャップを生んだ
社会が豊かになったのに、
貧困のときのマインドで
働かせようとしているからだと考えました。
労働とは本来、
社会に必要なモノやサービスを生産する行為です。
戦後、労働基準法が制定されるにあたっては、
「8時間労働で足りるかどうか」が
論点になったそうです。
国民にとって最低限必要な
モノやサービスを生産するのに、
法定の 8時間労働では足りないと考えられていました。
しかし、法定労働時間を超えた残業に対して
欧米同等の 50% の割増賃金を支払うようにすると、
企業の負担が大きくなりすぎる。
妥協案として、欧米の半分=25% 割増で
残業可能とした、という経緯があるそうです。
働く側も「自分の労働が社会を豊かにするんだ!」
というロマンを抱いて邁進していたと思われます。
一方で、現代における労働の目的は、
最低限必要なモノやサービスの生産よりも、
購入のためであるように感じます。
高度経済成長やグローバル化によって、
日本にはモノやサービスがあふれるようになりました。
すでに一定の豊かさを獲得した社会では、
個人の労働が社会を豊かにする、
という感覚は持ちにくくなります。
その結果、労働はお金を得るための行為として
扱われているのではないでしょうか。
むしろ、過剰生産のために残業して、
その疲労や虚無感を過剰消費で
癒そうとしているようにも見えます。
近年 FIRE が取り沙汰されるのも、
必要最低限のモノやサービスが
十分に生産されていることの裏返しであると感じます。
「購入のための労働」をしなくても
十分な購入ができる(Financial Independent) ならば、
自分が「生産のための労働」をしなくても(Retire Early)
社会が回る、という前提に基づいているはずですし。
週休三日制も同様ですね。
社会に必要なモノやサービスを
生産するために働いていた世代と、
十分に豊かになった社会で
購入するために労働する世代。
この世代間のギャップを
しっかりと認識する必要があると感じました。
また、十分に豊かになった社会においても、
ある程度の歴史を持つ会社や組織の上層部にいるのは、
生産のために働いていた世代です。
会社・組織の制度も、
必然的にその世代の「常識」で設計されます。
その結果、購入のために労働する世代には
居心地が悪い・労働意欲が削がれるのでは、と考えました。
② 承認欲求が満たされる場に人が集まる
SOC の高い組織や、周りの SOC を高める人のところに
人材やリソースがより一層集中すると考えました。
SOC(Sence Of Coherence) は、
首尾一貫感覚と訳されています。
「『世界は最終的に微笑んでくれる』という確信」
と本書では表現されていました。
「努力が報われると信じられる感覚」、
note にたとえるなら
「記事を投稿したらスキやコメントがつくと信じられる感覚」
かなと思います。
SOC が高い組織とは、その場にいることで
承認欲求が満たされる場だと解釈しました。
著者は、職務保証があったり、
長期雇用・終身雇用を確信している時に
高い SOC が成立するとしています。
職を失う不安がなく、
安心して働けることが SOC を高める、
という考え方かなと。
それに対して私は、長期・終身雇用よりも、
組織と労働者がゆるくつながり続ける社会に魅力を感じます。
流動性の高い IT 業界に
身を置いていることもあるでしょう。
退職してもつながりを持ち続け、
情報交換や再雇用も活発であってほしい。
所属しているときだけでなく、
離れていても自分の SOC を高めてくれる組織って、
魅力的だと思うんですよね。
組織との適切な距離感は、
業界の風土や個人の好み・性格によるでしょう。
終身雇用・強い結びつきを求めるか、
転職後も細く長くつながり続けるか、
選ぶ主体は労働者です。
多くの会社は離職率の低さをアピールしますが、
細く長くつながりたい人にとっては
「離職率が高い=悪いこと」とは言い切れません。
離職者と継続的な関係があることを
測る指標が必要なのではと思います。
③ 他者を満足させ、自己効力感を得るために働く
生産・購入だけでなく、
自己効力感を高めることも
重要な目的であると捉えて働くことに向き合います。
労働の本来の目的は生産なので、
他者のためにするものです。
社会とつながり、他者を喜ばせることが第一。
その結果、他者からの承認が得られるので、
自己効力感も高まります。
本書では、働くことに意味を見出す
ヒントとなる6カ条が挙げられています。
その中の「愛をケチらない」、
「仕事にやりがいを求めない」を参考に、
アクションプランを考えてみました。
(否定形だったので肯定に捉え直しています)
「愛をケチらない」は、
「こちらから先に愛を渡す」と言い換えられます。
挨拶の先手を取る、感謝をバラまく、
などの行動で実践できそうです。
「仕事にやりがいを求めない」は、
「自分を探すな、他者を見よう」と捉えました。
原文がちょっと意表をつく表現なので補足すると、
自分のやりがいよりも他者に目を向けよう、
という意味合いだと解釈しました。
その方が仕事はうまくいくし、
結果的に自分も満たされることになります。
チャンスをくれた人や、自分の仕事を待っている人を見て、
自分が期待されていることを考えていきたいと思います。
もちろん、自分のキャパシティを大きく超えない程度で。
また、働くこと以外の生きがいを見つけることも
必要だと感じました。
「生産のための労働」が間に合っている以上、
働くことが生活の中心にある時代は終わったと思います。
私の場合は、自分の行動を計測・視える化して、
自分を正しく知ろうとすることが
ライフワークになりつつあります。
結局、自分がコントロールできるのは、
自分の行動だけですからね。
それでさえ 100% コントロール
できているわけではないので、
徹底的に観察する必要があります。
仕事も、自分の好き・嫌い、
得意・不得意を把握するための
手段のひとつとして捉えてみようと思います。
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いつも図書館で本を借りているので、たまには本屋で新刊を買ってインプット・アウトプットします。