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境界のともしび

こんにちは、函館移住者の花です。


今朝もいつものごとく、お布団でうずくまって、一度深呼吸をしてからお布団をひっぺがし、急いでセーターとあったかズボンに着替えました。

今日は同居しているお姉さんのお休みの日です。
ねえ。白ごはん食べない?
としきりにきいてくるので何かなと思ったら、


まあ、おいしそう。
彼女のつくるお茶漬け、好きなんですよね。
朝からあったかくなりました。

窓を開けると、今日もあたりは一面雪景色。
どおりで寒いわけだ。
明るい日差しが一瞬空を青くして、昨日は見えなかった山が遠くに見えました。

朝の函館に会いに行こうかしら。

もこもこのジャケットを着て、赤いミトンとベレー帽、マフラーを身につけて、ブーツを履きました。
外に降り立つと地面も空も真っ白。

お隣のお隣のお店の前では、長靴のおじさんが緑のショベルで雪かきをしています。

道路の脇には道の雪がどかされて、こんもり積み上げられています。

蜜柑色の作業服のおじさんたちが、路面電車の線路にたまった雪を溶かしています。


車はみんな真っ白な帽子をかぶっています。

風が吹いて雪の粉がマフラーにくっついて、息で溶けて、しっとりとマフラーを濡らします。


雪に生きる人たち。


坂を登るうちに車も人もまばらになって、街の音は雪に吸い取られ、静けさの中、雪を踏み締める音だけが、ぎゅ、ぎゅ、と残ります。

おうちの屋根にも車の下にも氷柱が輝いています。
坂を登って右に曲がると、急に強い風が吹いてきて、目の前が霞みました。

その向こうにうっすら見えてきたのは函館ハリストス正教会です。

函館ハリストス正教会は、1860年にロシア領事館の付属の聖堂として建てられ、のちに正教会となりました。1907年に函館大火で全焼しましたが、10年後に2代目の教会が建てられました。


教会へと続く階段をゆっくりと登っていると、かさかさと木の葉が揺れる音がして、ちらりと目をやると茂みに鳥が逃げていきました。


ぽつりぽつりと置いてあるベンチには、既に雪がこんもりくつろいでいたので、お隣に座るのは諦めて、ゆっくり教会の周りを一周しました。


日本正教会の生みの親、聖ニコライの石碑です。


12月の教会のカレンダーです。
ロシア語で書かれています。

教会の入り口に来てしまいました。
信仰は心の拠り所であり、人間の一部を担うものだからこそ、今まで足を踏み込んだことがありませんでした。

深く深呼吸をして、服についた雪を払ってから、静かにドアを開けました。

入り口に座っていたのは、落ち着いた年配の女性。
教会を包む空気に圧倒されて立ち尽くしていると、
「どうぞ隅々まで見ていってください。もうすぐここは新しくなってしまうから。」
と静かにおっしゃいました。

床は古い絨毯が敷き詰められていました。

正面を埋め尽くす油絵の聖人たち。イコンです。
イイススハリストス(イエスキリスト)のイコンをじっとみつめました。
呼吸がゆっくりと深くなり、静寂に包まれました。
音のない世界にかれらの息遣いが聞こえる気がしました。
目を閉じて深く息をすると、体に血が巡っていくのを感じました。
目を開けると彼らの体温を感じた気がしました。
イコンの中に佇む彼らは、私のことをずっと見てくれていたのかもしれません。


教会を出たとき、日の光が差し込んで、雪がいっそう白く、眩く輝いていました。

ふっくらつもった雪が嬉しくて、分厚いところばかりを踏んで帰りました。

⭐︎お店情報⭐︎
函館ハリストス正教会
拝覧時間: 10:00〜16:00
住所:040-0054 北海道函館市元町3-13
TEL: 0138-23-7387
Email: frclement205@gmail.com
HP: https://www.orthodox-hakodate.jp/

ライター情報はこちら!
https://note.com/another_hkdt/n/nab69fbc73ee5

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