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書きながら、見せながら、聞こう。

10年以上前の話ですが、コーチングの会社に入って、いわゆるプロのコーチとして仕事をしていました。クライアントとのセッションが終わると、パソコンで記録していたメモ(ログといいます)を手直ししてメールで送っていました。

セッションの間、ノートパソコンのディスプレイが衝立のようになってなんとなく話しにくかったですし、クライアントにしてみると、「何をメモされているんだろう?」という思いはあったと思います。

文字入力ミスを手直しして送るのも、ちょっとした手間でした。

ホワイトボードの効用に出会う

その後、ファシリテーションスキルを学んで、ホワイトボードの効用を知りました。ミーティングで出てきた会話をホワイトボードに書いて見える化することは、たしかにミーティングの質を高めます。

これをコーチングセッションに使ってみました。クライアントの話を書いていきながらセッションをしてみたら、圧倒的にこのほうがいいことがわかりました。

やることはシンプルです。クライアントが話していることの要点をホワイトボードにリアルタイムに書いていくだけです。それだけでいくつかの大きなメリットが生まれました。

相手の話を「書く」メリット

大切なのは、クライアントの言葉が文字にされてお互いに共有される状態を作ることです。書きながら、見せながら、聞く、のです。

こうすることのメリットを挙げてみましょう。

①ちゃんと聞いていることが伝わる
相手の話を書いていくのは、話の内容をきちんと受け止めているからできることです。クライアントは、自分の話をそのまま受け止めてくれたんだな、と認識します。自分の話をちゃんと聞いてくれるという行為は、それだけでアクノレッジメント*です。とても話しやすくなっていきます。

①認識の齟齬がなくなる
コミュニケーションには必ず誤認識が発生します。口頭での会話の場合はなおさらです。クライアントが話したことをその場で文字にして共有することで、「あ、そういう意味じゃないんです」と修正してもらえます。また、「何をメモされているんだろう?」という疑念が湧く余地はありません。

③話したことが目から入ってくるのでオートクライン**が起こる
1on1セッションの大きな価値は、話しながら自分で気づく、ということです。自分の声を自分で聞くことでもオートクラインは起こりますが、文字にすると、はっきりと自分の思考を認識でき、その上に新たな思考を重ねていくことができます。

④脱線しても話を戻せる
ファシリテーションスキルでも言われていることですが、途中で話が脱線しても文字として残っているので、「何の話でしたっけ?」と迷子になることがありません。また、話が展開していったあと、「そういえばさっきこういうことを言っていましたね。そことつながっていますね」というような新たな発見があることもあります。

⑤写真を撮って共有すればログを作る必要がない
どんな展開で話していったのか、次までにどんな行動を起こすのか、文字となって残っています。それぞれ写真に撮って残しておけば、次のセッションは、その記録を確認するところから始めればいいのです。新たにログを起こす必要はありません。

1on1セッションでは聞き手が話を「書く」

たくさんのメリットがありますから、チームメンバーとの1on1セッションで使わない手はありません。ホワイトボードがある部屋でセッションをするのならぜひ使ってください。

ホワイトボードがなければ、白い紙で構いません。隣、あるいは机の角の90°の位置で書いているものを見せながらセッションを進めてください。あなたが右利きなら相手の右側に座って、手元が見えるようにしてあげましょう。

オンラインなら画面共有をしながらで構いません。

いずれにしても、話し手は自分が話すことに集中し、聞き手がその話を書いていってあげるという形を大切に進めるとよいでしょう。

*アクノレッジメント
あなたがそこにいることに気づいているよ、と相手に伝えること。相手のことを仲間だと認識していることが伝わる。
**オートクライン
自分がアウトプットした情報をもう一度自分にインプットすることによって、思考が刺激され気づきがアイデアが生まれやすくなること。