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    ANITABIは「アニメーター」をテーマにしたドキュメンタリー映画を制作するためのクラウドファンディングを実施しています。このマガジンでは「アニメーター」をテーマにした記事を連載しています。

最近の記事

アニメーターの個人戦略⑤:アートアニメーションの世界に入る

アニメーターの個人戦略として、アートアニメーションの世界に入ることが挙げられます。 そもそもアートアニメーションとは一体なんなのでしょうか。アートアニメーションは、簡単に言えば「芸術性の高いアニメーション作品」なのですが、芸術の「未来や社会を人間が知覚できる形にする」という機能性を考えると、アートアニメーションは、アニメーションの未来を表していると私は考えます。 そのため、アートアニメーションでは実に様々な技法を用いて映像を表現するのですが、その技法そのものが作品であり芸

    • アニメーターの個人戦略④:海外に出る

      アニメーターの個人戦略として、海外に出ることが挙げられます。 アニメーターに限った話ではなく、活躍の場を国内から世界に広げることは、その分だけ顧客が増えることに繋がるので、結果として多くの人に作品を届けられるようになります。 また、海外のクリエイティブ業界は、日本の手描きアニメの可能性に期待している場合が多いです。日本式アニメーターとして海外に出て、コマーシャルアニメーションを掴み取れれば、日本国内では考えられないような収入を獲得することもできるでしょう。 それだけでな

      • アニメーターの個人戦略③:ハイパーメディアクリエイター

        世界的に活躍するアニメ監督の多くは、画をある程度描けるだけではなく、脚本を書いたり、3DCGを制作したり、映像を編集したり、音楽を作れたりします。メディアの枠組みを超えて、クリエイティビティを発揮しているのです。 マルチな才能は、一見すると特別な人にのみ与えられたもののように感じられるかもしれません。しかし、実態は異なります。アプリケーションとテクノロジーの進化により、誰もが70点ぐらいの作品を制作できるようになっているため、プロフェッショナルよりもマルチにクリエイティビテ

        • アニメーターの個人戦略②:監督になる

          アニメーターの個人戦略として、まず考えられるのが、監督になることです。 『アニメーション制作者実態調査2023』によると、動画マンの平均年齢が31.2歳、原画マンの平均年齢が40.4歳なのに対し、監督の平均年齢は61.6歳です。以上のことから、アニメ制作の現場は、数字だけで見れば極めて年功序列制だと言えます。 もちろん、歳を重ねれば重ねるほど、経験値とスキルが高まり、その結果として年配者が監督になりやすいというのはあるかもしれません。しかしその一方で、日本国内だけでみても

        アニメーターの個人戦略⑤:アートアニメーションの世界に入る

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          アニメーターの個人戦略①:業界のせいにせず、しっかり稼ぐということ

          前回までは、業界全体としてアニメーターの賃金を高める方法を解説してきました。 本記事からは、アニメーター個人の立ち回りについて解説していきます。 アニメ業界関係者の意見を目にすると、よく「アニメ業界は構造が問題」だとします。たしかに、アニメ業界は非常に複雑な構造になっていて、それが多くの障害をもたらしているかもしれません。 しかし、アニメ業界に限らず、上手くいかない理由を社会のせいにしてしても、何かが生まれるわけでもないし、何も変わりません。「社会を変えよう!」とする意

          アニメーターの個人戦略①:業界のせいにせず、しっかり稼ぐということ

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑦: 文化的側面から見るNFTの懸念点

          前回は、アニメーターの低賃金を解決する手段としてNFTを紹介しました。 本記事では、文化的側面から見るNFTの懸念点を解説していきます。 NFTはポンジースキームになりやすいまず第一に、 NFTは現状としてポンジースキームの側面を持ちます。 ポンジースキームとは、詐欺師が資金を調達するけれども、それを運用しない投資詐欺の一種です。実際、NFTで資金調達した後に、一向にサービスを開発しない事案がかなりあります。 また、いわゆる草コインと言われるマイナーな仮想通貨も、その

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑦: 文化的側面から見るNFTの懸念点

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑥: NFT

          ※この記事を読んでいる方は、クリエイターエコノミーについて一定の知見があると見てますので、NFTをゼロから解説するのは避けます。 以前、私が購読している中島聡(Windows95の開発リーダー)のメルマガで、こんなQ&Aがありました。 つまり、原画マンや動画マンが作成した「画」をNFTにすることで、それをアニメーターの収入に繋げようというアイデアです。 このQ&Aにもある通り、NFTだけでアニメ制作の費用を賄うのは難しいです。 でも、アニメの収入を改善する分には、非常に

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑥: NFT

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑤:制作から製作への転換

          アニメーターの低賃金を解決している企業の代表例として、京都アニメーションが挙げられます。京アニが取り組んだことを簡単に言うと「アニメ制作会社」から「アニメ製作会社」に転換することができたということです。 アニメ業界における「制作」とは、まさに「アニメ作品を制作する」ということです。一方の「製作」は、アニメ作品を作るための資金調達から始まり、アニメビジネスそのものを手掛けることを指します。 アニメ制作会社の多くは、アニメ作品を作ることができても、アニメビジネスをゼロから運営

          アニメーターの低賃金を解決する方法⑤:制作から製作への転換

          アニメーターの低賃金を解決する方法④:アニメスタジオの直営化

          結局のところ、アニメーターの低賃金を解決するには、アニメファンからアニメーターに対して、直接お金が入る仕組みを作らなければなりません。この間に中間業者が入れば入るほど、アニメーターの利益が少なくなってしまいます。逆に言えば、中間業者を取り除くことができれば、アニメーターの利益が増える可能性があるということです。そこで考えられるアイディアが、アニメスタジオの直営化です。 一般的に、アニメ制作の現場では、様々な業務が下請けに出されます。原画や動画はもちろんのこと、美術背景、3D

          アニメーターの低賃金を解決する方法④:アニメスタジオの直営化

          アニメーターの低賃金を解決する方法③:クラウドファンディング

          アニメーターの低賃金を解決する方法としてクラウドファンディングが挙げられます。一般的にアニメビジネスは、アニメ作品そのもので稼ぐわけではありません。アニメはプロモーション手段の1つであり、その後のグッズ販売やイベントなどの二次収入によってビジネスが成立っています。 そのため、アニメ制作会社にはあまり利益が入らず、グッズや音楽を制作する会社に利益が回る仕組みになっているのです。アニメーターの賃金を上げるためには、アニメ制作会社に利益が直接入る仕組みを作る必要があります。その際

          アニメーターの低賃金を解決する方法③:クラウドファンディング

          アニメーターの低賃金を解決する方法②:労働基準法と下請法の強化

          アニメーターの低賃金を解決する方法として、前回は労働組合の強化を取り上げました。 今回は、法律面の強化について取り上げます。 結論から言うと、労働基準法と下請法を強化するのです。 以前の記事でも紹介した通り、多くのアニメーターで労働基準法や下請法が適用されず、それが原因で劣悪な労働環境となっている背景があります。そこでアニメ業界に対する特別措置として「作画業のフリーランスアニメーターには特例で労働基準法と下請法が適用される」というように法律を整備するのです。 もしくは

          アニメーターの低賃金を解決する方法②:労働基準法と下請法の強化

          アニメーターの低賃金を解決する方法①:労働組合の強化

          アニメーターの低賃金を解決する方法として、挙げられるのが労働組合の強化です。 日本の代表的な労働組合としては、東映動画労働組合が挙げられますが、中小のアニメ制作会社で労働組合を結成しても、賃金交渉力を高めることができない現状があります。 それに加えて、業界全体の一貫した労働組合が結成されていないため、賃金交渉は各フリーランスのアニメーターに委ねる形に。結果として、労働基準法で定められている労働環境以下の待遇になっている現状があります。 逆に言えば、アニメーター全体の労働

          アニメーターの低賃金を解決する方法①:労働組合の強化

          アニメーターの賃金が低い理由③:労働基準法と下請法の対象外

          アニメーターの賃金が低い理由として挙げられるのが、就業形態です。 『アニメーション制作者実態調査2023』によると、425人の回答者の約半数が、労働基準法が適用されないフリーランスまたは自営業者です。 サラリーマンは、企業と雇用契約を結んでいるため、労働基準法と最低賃金法で最低限の労働環境が保護されます。一方で自営業・フリーランスの場合、労働基準法と最低賃金法の適用外となるため、法外な低賃金になりやすい現状があります。 本来であれば、自営業・フリーランスは一種の個人事業

          アニメーターの賃金が低い理由③:労働基準法と下請法の対象外

          アニメーターの賃金が低い理由②:多重下請け構造

          アニメーターの賃金が低い理由として、多重下請け構造が挙げられます。 前回の記事でも紹介した通り、アニメ制作では、まず製作委員会方式で資金が調達されて、その中で制作費がアニメ制作会社に渡ります。 しかし必ずしも、そのアニメ制作会社が全工程を担うわけではありません。大抵の場合、さらに下請けのアニメ制作会社に「動画」や「仕上げ」などの業務を外注することで、なんとか納品まで間に合わせます。そして、その下請けの会社がさらに下請けの会社(孫請け)に外注することも珍しくありません。

          アニメーターの賃金が低い理由②:多重下請け構造

          アニメーターの賃金が低い理由①:製作委員会方式

          前回は、アニメーターの賃金の現状について解説しました。 今回からはアニメーターの賃金が低い理由を解説していきます。 アニメーターの賃金が低い理由として、まず挙げられるのが製作委員会方式です。製作委員会方式とは、映像作品を制作する際に、複数の企業が出資する資金調達のことです。 一般的に、アニメビジネスは当たるかどうかわかりません。ハイリスクなビジネスなのです。そこで、製作委員会方式です。製作委員会方式であれば、リスクを分散させることが可能なので、万が一の損失を抑えることが

          アニメーターの賃金が低い理由①:製作委員会方式

          アニメーターの賃金は本当に低いの?

          「アニメーターの賃金が安い!」とよく言われていますが、はたして本当にアニメーターの賃金は安いのでしょうか? 一般社団法人日本アニメーター・演出協会の『アニメーション制作者実態調査2023』によると、アニメーターの平均年収は422.5万円、新人扱いである動画マンの平均年収は263.2万円とのことです。 また、アニメーターの1ヶ月の平均作業時間が「198時間」というデータも出ています。 これらのデータを統合すると、アニメーターの平均時給は1,778円、動画マンの場合は1,1

          アニメーターの賃金は本当に低いの?