みんなのぶん

家族はうかれて南の島へ旅立ち、都合により連休はひとり家で留守番をしていたわたくし　ここは南の島ではないのに連日南の島以上の暑さとなっていた　

そのせいもあり普段は料理をするほうなのだが、この期間まったくやる気が起きなかった　ひとりののんきさといい加減さも加味し不思議と腹もそう減らなかった　

最終日に友人とランチの約束をしていたが、そこの子が熱発し急遽とりやめとなった　ついでに友達もダウンぎみだった

その様子を聞き及び私が発した言葉は「ガスパチョ飲む？」だった　自分でも意表を突く一言よ　

ガスパチョってご存じだろうがトマト風味の冷製スープのことだ　スペイン料理だっけ　私にはカフェ店長時代というのがあって、その時に作っていたメニューのひとつだった

体の中から冷やしたら熱にいいのではないかと無意識に思いついたのだろうか自分　だからって具合悪い時に飲みたいものかは正直分からない

しかし友人の答えは間髪入れずのイエスだった　えっ飲める？　自分で提案しておいて聞き返す私

いやいいんよ　料理ってほどのもんじゃないしね　トマトもきゅうりもピーマンも冷蔵庫あるし　

子供は嫌いよね　じゃ一人分でいいかーと頭の中で計算していたら、「実は親も来てるんだよね」と言われた

オッケーオッケーもうこうなったらみんなの分作ったろう　夕方帰ってくる家族のぶんも作ったろう

トマトきゅうりピーマンパプリカ玉ねぎ塩クミンオリーブオイルブラックペッパー　バゲットは手元になかったのでさらさら仕上げとした

結局１０人前ほど仕込んだ

ひとりなのにこの野菜の量　朝には思わなかったことが起こるなあとしみじみ思う　そんなこんなで日々は続く

ふと旅行に行く前の甥っ子に言われた言葉を思い出した

「普通の毎日を過ごすこともいいもんだよね」ってしみじみ　その時は爆笑した　だって甥っ子はまだ７歳だ　達観しすぎもう還暦の境地だ

だが野菜を切りまくっていたら　今更沁みた　

ナターシャ