【事例でみる空間設計④】八丁堀nonke / 飲食店の新業態へのチャレンジを後押しするお店づくり
はじめに
こんにちは。& Supplyのデザイナーsakoです。
今回は、八丁堀に昨年の12月にオープンした「nonke」の設計事例をご紹介します!
「nonke」のオーナー、ゆうさんは銀座でバーを2店舗運営しており、
食事がメインのお店は今回が初挑戦ということで、
私たち& Supplyが異なる業態の飲食店を3店舗運営しているノウハウを活かしながら、新業態へのチャレンジを後押しする空間づくりができました。
どんなチームでお店をつくったのか、
どんな工程でプランニングしていったのかなど、
店作りプロジェクトのリアルな部分を振り返りながらご紹介します。
将来、お店を開きたいと考えている人にも参考になれば嬉しいです!
プロジェクトのはじまり
きっかけはご紹介から
「nonke」の内装を担当したきっかけは、同じく昨年、革靴のアトリエのリニューアルデザインを担当させていただいた「FYSKY」のてつさんからのご紹介でした。
↑吉祥寺で革靴を作る「FYSKY」の工房
「nonke」全体のプロデュースを担当していたMADE TO ORDERの松永さんをご紹介いただき、八丁堀に飲食店をつくる計画があること、銀座でバーを2店舗運営しているゆうさんが新業態としてお店を始めること、料理は渋谷にある飲食店「KAMERA」のオーナーシェフである亀谷シェフが監修することなど計画の全容を伺いました。
「異なる分野のプロフェッショナルが集まり、スキルを掛け合わせてチームで面白い空間を作ろう!」というワクワクするプロジェクトの中で、
& Supplyは空間設計の担当としてお声を掛けていただきました。
& Supply自社店舗の運営業態
私たちは、これまで自社運営の店舗を増やすたびにさまざまな飲食業態に挑戦をしてきました。
●1号店「LOBBY」/ 池尻大橋(2019年〜)
業態:ストリートバー
●2号店「nephew」/ 代々木公園(2021年〜)
業態:カフェ&ビストロバー
●3号店「Hone」/ 神泉(2022年〜)
業態:レストラン&バー
メンバーが常に刺激を受けている海外のデザインからインスピレーションを得ながら、1からコンセプトを練り、チームで会話を重ねることで各店舗で既視感のない空間づくりをしています。
(海外レポートもnoteで公開しています!メンバーが海外に定期的に訪れることで、新店のスタイルやデザインの着想を得ています。)
新しい飲食業態を「設計」し、「デザイン」し、「運営する」ノウハウを持っていることが& Supplyの大きな強み。
その点でも、今回のプロジェクトで私たちのスキルを活かした提案ができるのではと感じました。
現地調査とヒアリング
プロジェクトが始まったのは昨年の8月末。
お店となる物件でプロジェクトメンバーが顔を合わせ、現地調査とヒアリングを実施しました。
場所は東京都中央区、八丁堀と新富町駅どちらの駅からも歩いて3分の好立地です。
周辺にはオフィスビルがたくさんあり、昼間の時間から多くのサラリーマンが店舗前の歩道を行き交っていました。
大きな通りに面していて視認性もよく、ランチも需要がありそうです!
建物が築何年かわかる資料は残っていませんでした。
後ろの大きなビルがこの建物を避けるように建てられています。
おそらく70年ほど前ではないかと建物の所有者さんがお話してくれました。
店内は1階〜3階まであり、飲食店として使われていた1階が中途半端に解体された状態でした。
現地でヒアリングをした内容はこちら。
工事はいつでもスタートできる状態だったため、
早速プランニングをスタート。
設計と並行して、まずは残地された厨房機器やトイレ、ぼこぼこの床といった進められる解体を先行して動けるように見積を動かしました。
空家賃の期間をなるべく短縮できるように、プランニングから着工、引き渡しまでのスケジュールを立てるのも空間デザイナーの仕事です。
ゾーニングの検討
デザインの作業を始める前に、まずは席数や具体的なオペレーションのイメージがつくように空間のゾーニング案を複数作成して検討を行いました。
●A案
オーソドックスなL字のカウンター。
トイレが2つあるのは既存のまま。南側に勝手口があり、2階、3階へと続く廊下スペースと左の店舗スペースを完全に区分けしています。
●B案
入り口横にサッシを設けて、テイクアウトスペースを設けました。
店前の人通りが多いことやランチ営業も考えているとのことで、厨房の中から外へサービスできるスタイルの提案です。
また既存のトイレも1つ減らして客席のスペースを広げる案としました。
●C案
テイクアウトスペースは設けずに、B案のカウンターをコの字にして席数確保を優先したプラン。
ここで問題となったのは、
「既存の引き渡し状態から、どこまで解体できるのか」という点。
B案やC案のように勝手口の廊下の壁と店側のトイレを解体できれば、店舗のスペースが広げられてよさそうです。
そこで、物件の仲介業者へ確認をとっていただきました。
結果としては、「店と廊下の間仕切りは撤去しないでほしい。」
ということに。詳しい理由は以下です。
この条件を守りつつも、できるだけ店舗スペースを広げられるように案を再考し、最終決定したレイアウトがこちらです。
●確定レイアウト
a)入口は引き戸のサッシを作り、B案にあったテイクアウトスペースをつくりました。
b)ヒアリング時に「業態は和食バルながらメニューは和に偏らずいろんなジャンルをMIXした創作料理が楽しめるようにしたい」と伺っていたため、カウンターの形状は柔らかい印象のRにして、敢えて和食の板前感が出ないようにしています。
c)カウンターの奥は床を上げて、
ハイチェアや立ち飲みで疲れてしまう人が座れる場所としてローチェアを2席設けました。
カウンターの一体感を損なわず用途分けができる席構成にしています。
d)窓側の3箇所は半円のミニテーブルを設置して立ち飲みができるエリアにしました。
e)店舗側にあった既存のトイレは解体して、コート掛けと冷蔵ショーケースにすることで、客席のスペースを少し広げることができています。
レイアウトが確定してきた頃、
松永さんから「nonke」のロゴが上がってきました!
家紋や判子のような丸型の中に漢字で「呑気(のんけ)」のモチーフ。
和を感じられて老若男女に馴染みやすいお店になりそう!
この素敵なロゴの和の要素と円の要素を空間にも上手く落とし込みたいと思いました。
キッチン、厨房機器のレイアウトも料理を監修する亀谷シェフのアドバイスをいただきながら決定。
この段階で、空間の設備内容が確定してきたため、現場の解体工事を先行して動かしていくことなりました。
オーナーのゆうさん、全体のプロデューサー松永さん、料理のプロフェッショナル亀谷シェフ、空間を作る私たち& Supplyというチームワークで、お互いの進行を共有することで意思決定もしやすく、スムーズにプロジェクトが進んでいきました!
nonkeを表現する空間要素をつくる
お店の雰囲気は、そこで働く人や提供される料理そして空間で決まります。
’’呑む気持ち’’と書いて「呑気 nonke」。
そんなnonkeを表現する空間となるようにコンセプトを作りました。
■コンセプト
「呑んで食べ、気分が上がる」手触り感ある素材合わせで心地の良い酒場。
一人でも、複数人でもほっと心が落ち着いて、美味しいお酒と料理が進み、ほどよく「気持ちが高揚していくような空間」を目指すべく、
このようなコンセプトとしました。
そしてコンセプトを元に「nonke」を象徴する3つの要素をつくりました。
[nonkeを象徴する要素]
①暖簾 ②カウンター ③ディスプレイ
①暖簾
入店時のワクワク感や心地の良い空間で食事をしながら徐々に気分が高まる気持ちを高揚感や血色を感じさせるオレンジ〜ピンクの優しいグラデーションで表現しています。
入り口の扉と店内の大きな窓に採用することで、お店のキービジュアルにしました。
入り口は柔らかく温かみのある肌触りの「リネン」の生地を選定。
大きな3つの窓には、店内にいる人のシルエットがうっすらとわかり、お店に入りやすいように少し透け感のある「麻スラブ」という生地を選定しました。
日中は優しく光を通し、夜は逆に店内の灯りが暖簾を照らして外からみてものれんが印象的な店構えに。
お店の顔ともなったこのグラデーションカラーはサンプルを作成し、
チームで検討を重ねて決定しました。
②カウンター
料理を提供するカウンターは肌触りもよいベージュの左官で仕上げました。
「nonke」は和をメインに、他のジャンルもMIXした創作料理を出したいとヒアリングで伺っていたため、ジャンルを問わず料理や食器の彩りが引き立つように優しく柔らかいカラーを選定しています。
木造の建物で天井も露出しており、元々の木の要素が多かったため
左官仕上げにすることで、モダンなイメージをプラスしました。
③ディスプレイ
ボトルやグラス、カトラリートレイなど、見せる収納スポットを予めプランニングすることで空間の秩序を守りながらも活気が生まれます。
既存の空間の中で特徴的な3箇所のFIX窓は、額縁のように既存の窓枠に被せる木枠を作り、ボトルやドリンク、メニューなどを置けるようにしました。店内が狭く、窓際の立ち飲みスペースはテーブルが小さいため、料理のお皿は半円のテーブルに、ドリンクは窓側の木枠に置くこともできたりと自由なスタイルで使えるようにしました。
キッチン側の収納は、ボトルをディスプレイできる棚をつくりました。
丸い3つのブラケットライトがアイキャッチとなり、入店時に目が引くようにしています。
キッチンのディスプレイ棚、カウンターのR、半円のテーブルなどの円の要素がリズミカルに効いている楽しげな空間にしました。
完成!!
2ヶ月の内装工事を経て、ついに空間が完成しました。
「nonke」の施工は自社店舗でもお世話になっている合同会社ヨコケンの横井さん(通称よこちんさん)。
大工さん、左官屋さん、板金屋さん、塗装屋さん、設備工事の皆様!
現場でいろいろ聞くとなんでも教えてくれるいつも頼りになるとにかくカッコいい職人さんチーム。
家具制作は、これまたお世話になっている未来創作所の下田さん、飯塚さん、戸田さん。
短納期で厳しい中、本当に親身になって頂き、現場で想定外なことが起きても遅くまで一緒に悩んでくださったりと振り返れば目から汗が出るほどお世話になりました!
暖簾制作は、中村さん。
冒頭でご紹介した「FYSKY」の革靴を作っている職人の井出さんと同級生で、これまたご縁がある方に依頼することができて嬉しかったです!イメージをお伝えして生地の相談からサンプルまで時間をかけてぴったりなものをつくっていただきました!
空間づくりに携わっていただいた皆様、最高なお仕事を本当にありがとうございました!
オープン前にはゆうさんにご招待いただきプロジェクトチームで打ち上げをしました。
空間、ロゴ、グラス、ユニフォーム、コースター、メニュー、料理に至るまで、
チームで想いを共有しながら作ることができ、「nonke」らしさを隅々まで感じられるお店になりました!
同じ熱量で仕事ができるこのプロジェクトチームで空間設計のお手伝いができ、素敵なお店に仕上げられたことをとても嬉しく思っています。
窓の暖簾から漏れる柔らかな灯りが外からもお店の目印となり、
入り口の暖簾をくぐれば明るくて優しいスタッフの皆さんが迎えてくれる
初めての方でも入りやすいお店です!
オープンからたくさんのお客さんで賑わっていて、私の周りも「食べに行ったよ!」という声を頂いたりと、お店が盛り上がっていることを聞いたり、お店に伺う度に本当に嬉しいです。
みなさまもぜひ、「nonke」にお気軽に行ってみてください^^
お一人でも友人など複数人でも、和やかで気分が上がるお店ですよ!
さいごに
ここまで読み進めていただいたみなさま、ありがとうございました!
そして空間づくりでお困りの方、面白いものを作りたいと考えているみなさま。。。
初めての挑戦、大歓迎です!!
本気の空間づくりができる仲間を探している方はぜひ、私たち& Supplyにご相談お待ちしています。
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