マガジンのカバー画像

こと葉の蔵

5
あの時、あの場所で。記憶の断片を時々取りだしては日差しの中で干し、しまう場所「こと葉の蔵」をつくりました。むかしに書いた「ことの葉」も堂々と主役。
運営しているクリエイター

#読むこと

55.  執着の裏側

55. 執着の裏側

 2018年の正月をよく覚えています。東京に就職していた娘のNの帰省したのに合わせて、実家の母を誘い、久しぶりに家族でのんびり温泉三昧としました。

 有馬は六甲山系の谷筋にある温泉場。谷崎潤一郎や志賀直哉など文人も愛されたという謂われがあるだけに、どっしりとした赤褐色の湯には鉄分や硫黄分も豊か。太古の地層に蓄積した海水がエネルギーを含み、高濃度の源泉となってシューと噴き出した良泉なのです。
 母

もっとみる