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【そのさん】ADHDのワクワク☆ドキドキ☆初ひとり海外旅行

発達障害がひとりで行く初めての海外旅行ルポルタージュです。連載です。

金浦空港はとても綺麗で、こぢんまりしているから逆に迷うこともなくて安心できました。

画質が悪い?
違います、これはバーチャル韓国の写真なのでリアルの皆様には解像度が荒く見えるのです

まずは日本で予約しておいたポケットWi-Fiをレンタル。これ、本稿には収まらないので次回以降になるのですが、後々大後悔に繋がったので、注意欠陥の特性をお持ちの皆様は絶対プリペイドSIMにしたほうがいいと思います。いやでもプリペイドSIMにしたら元のSIM失くしそうだよなあ……。詰んでしまった。こちらの連載で大後悔の理由を大公開するので(寒っ)、どなたか最適解を教えてください。
本当は街中で両替したほうがいいのはわかっていましたが、私が行くのはソウルの端の方、オリンピック公園。絶対両替所なんてないだろと思い、金浦空港駅でワウエクスチェンジという機械を使いました。この機械では、ワウパスという交通IC・プリペイドカードを兼ね備えた激便利なカードも発行できます。街中には劣るものの、どうやら日本や空港で両替するよりは多少レートがよいようなので、皆様もご活用ください。あと、金浦空港駅、金浦空港の出口から10分以上歩くので、全然金浦空港駅という感じがしません。
ホテルまでは地下鉄で1本。オリンピック公園の近くの方がよいのかな? と思い、ソンパナルという名前も聞いたことのない駅に降り立ちました。
エレベーターが見当たらない。
後に普通に駅構内を見渡したら見つけたのですが、コンサートの整列開始時刻まで全然時間がありませんでしたので、私は覚悟を決めて階段を昇ることにしました。
いや死ぬて。
腕が痺れるほど重いキャリー。30度超えの気温。まあまあ段数ある階段。気が遠くなりました。
そこに現れた、アッパ(おとうさん)。
日本語も英語も通じなさそうですが、さっと私の荷物を掻っ攫い、重たそうにしながらも素早く運んでくれます。ひったくりか? と疑う暇もありません。あっという間に地上に出て、キャリーを返してくれました。サンキュー! ……いや、カムサハムニダ! 相変わらず日本語訛りですが、なんとか感謝の意を告げると、筋肉を強調するポーズをして二の腕を叩き、去っていきました。
韓国人、優しっ。
飛行機での件も相まって、人の温かみに連続で触れた私は感動していました。感動している場合ではないのだが。時間ないんだから。
飛行機代とチケット代に全振りしたので、宿は3泊で1万円台の激安ゲストハウスにしました。泊まる前から双方英語が下手くそすぎてディスコミュニケーションを起こしまくっており、一抹の不安。東京で言えば、池袋西口一番街みたいな雰囲気の飲み屋街の中にありました。更に不安。到着したのは、潰れた飲食店。どうやらこの2階以上が部屋のようです。エレベーターはなし。結局、階段を重いキャリーを持って昇らなきゃいけなくなりました。ハァハァ言いながら2階に昇るも、窓口なんてものはありません。韓国だからなのかゲストハウスだからなのか旅行経験が乏しくてわからないのですが、無人チェックインが当たり前のようでした。
事前に交換してあったLINEで到着を知らせると、4階の部屋を使えと連絡が来ました。ハァハァリターンズ。名倉、穴ぐら暮らし引きこもりのド世間知らずなので、韓国ではよくあるらしい、ナンバーロックの使い方が全然わからない。平たい黒いパネルを何度叩いても、数字が出てこない。どうやって使うんですかこれ!? と追いLINEをするも、今運転中だから! ごめんよ! と返ってくるのみ。やけになってペチペチ叩いたらやっと反応しました。どうやら手のひらとか複数の指とかでぺたーっと触ると反応するらしいことを学ぶ。
部屋は狭いものの値段に反してかなり綺麗でしたが、トコジラミがとにかく怖かったので、たくさんハッカ油を撒いてみました。夢中になって撒いていたから気づかなかったのですが、ふと顔をあげると壁に飛び散っていて、油汚れがべっとりと。
嗚呼、やってしまった――。
こういう、後先考えない感じが、発達障害って感じですよね。え? 私だけか?
軽く拭きましたが、全然消えてくれません。安宿を選んだのに弁償でお金をとられるなんて。でもとにかく時間がありません。調べたら中性洗剤でとれるらしい。この宿には共同キッチンがありますから、中性洗剤は置いてあるはず。帰ったらやってみよう!
気が気でなかったのがいけなかったのでしょう。経路を調べたらバスを使えと出てきたので、バス停に走ってちょうど到着していたバスに乗りました。
全然行き先が違いました。
確認しろよバカ。
韓国のバスは、数字が振ってあるので行き先が読めなくてもそんなに難しくないはずなのに。その数字を見ることさえ怠った。いや、まあ、単純に知らなかったんだけど。
乗り間違えに気づいたのは、乗って20分くらい経った後。最悪です。集合時間はとうに過ぎていました。そこからオリンピック公園に向かうには更に20分以上かかるようでした。泣きそうになりながら乗り換えて、開演1時間前の到着。とっくに入場は始まっていて、せっかくキャンセル料まで払って毎日粘ってよい整番を確保したのに、ほぼ最後尾でのご案内でした。
散々だ。
ですが、コンサートが始まった瞬間全ての悲しみは霧散しました。
冒頭、生バンドで奏でられる、私がいちばん好きな曲のイントロ
私はもう初手で号泣していました。この曲を生で聴くまで絶対に死ねないと思っていたのです。いざ聴くと、生きててよかった、と心から感じました。もう死んでもいい、ではなかった。日頃、歩く希死念慮として、死に損なって生きているだけの私が。
周りの本国ファンは大きな歓声をあげてとっても盛り上がっているのに、ひとりだけ、ずーっと泣いていました。こんなに幸せなことがあっていいんだ。
それに、狭い会場だったからか、最後尾だったのに幕張メッセでの日本公演の時より全然よく見える。近い。表情までくっきりはっきり。ちょっと気持ち悪いことを言いますが、網タイツが伝染しているところまで見えるくらいでした。
心ゆくまでコンサートを堪能し、日本ファンと少し話して、ホテルに戻りました。たぶん揮発性だったのでしょう、油汚れは勝手に綺麗さっぱり消えていて、まるで自分の心のようでした。

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あなぐらまえすとろ

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