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当事者としての『まち』のリサーチ。

先日、MTRL KYOTOで開催されていた『リサーチを考えるシンポジウム Vol.2 _どうやって新しいまちを「知る」か?』というイベントに参加してきました。

◆企画概要
不動産紹介&企画の観点から、どうやって新しいまちを「知る」か?じっくりと考える企画(中略)
細かすぎて伝わらない気づきや新しい視点の共有をサロン形式で発表し、リサーチについて登壇者・参加者双方ともに理解を深めることが目的です。

(イベントページより)

(詳しいレポートは、おそらくそのうち公開されると思います。)


参加した目的は、主催側・登壇者のみなさんが普段、どのように『まち』を見ているかを知りたかったのと、『新しいまちを知る』という視点を活用しながら、馴染みのある、もしくはそれぞれの地元をどのように見ておられるのか聞いてみたかったからです。

まずは主催の榊原さんの方から、リサーチの『事前』『最中』『事後』でどのような動きをしているのか、それらをタイプ別に分類したものをご紹介していただきました。

1.事前

『新しいまち』を訪れることになった場合、それは大きく下記の2つのタイプに分類されます。

①関心先行型
②機会先行型

①の「関心先行型」は、すでに自分が生きたいと思っていて、何かしらの目的をもっている場合。訪れたいスポットをリストアップしたり、下調べを十分に行っている状態。

②の「機会先行型」は、とくに意図していなかったけれど、仕事などをきっかけに訪れることになった場合。あんまり下調べをせずに行くこともある

こちらの場合は、事前の情報が少ないので【駅に立った時の戸惑いを大切にする】という、当事者として自分が感じたこともリサーチの一部になるんだと思う。

2.最中

続いて、そういった事前の情報をもとに(もしくは情報をもたずに)現地へ行ってみる。

①の「関心先行型」は、基本的に目的地が決まっているけれど、そのなかで、まちを観察する余白をつくるために移動は自転車やバスを使う。

②の「機会先行型」は、基本的にあまり情報をもっていないので、よそ者の視点・旅人の視点でまちを感じることができる。一方で、【知っていれば訪れたかった】という場所が出てくる可能性がある。

3.事後

行動の記録をドキュメントに残したり、訪問先リストを作ったり、なるべく細かくログをつくる。印象に残った項目、写真、リンク、概要メモなどを記しておくと、リサーチ内容に厚みが出る。


続いて、不動産業界でお仕事をされているゲストスピーカーの川端さん、岸本さんのお話へ。

おそらくこの辺もイベントレポートで詳しく掲載されるのかなと思いますが、ポイントだと思ったことだけ記しておきたいと思います。

<川端さんのリサーチ方法>
・「リノベーション」というテーマでリサーチし、気になったところはGMにてマッピング
・Instagramの現地語で地元の人が発信している情報を探す
・住む人たちのリアルな生活が見えそうなところをストリートビューで見る
e.g. 支流の近く、古い建物や町並みが残っている、荒い川、市場、商店街、Y字、地形が変なところ
・軍が管轄していたっぽいところ、碁盤の目のような道
・わざと暗いところや治安の悪いところを見ることも
・朝のまちへ出かける

そして、最後は『五感』。イケてる場所を探す。

続いて、岸本さん。

<岸本さんのリサーチ方法>
・路線価・データに頼らない
・時間帯を変えて街を観る
e.g. 同じ喫茶店でも朝・昼・夜それぞれの時間に滞在してみる(聞こえてくる会話がちがう)、ゴミの出し方、自転車の人を観察
→ その土地の『生活スタイル』を分析
・過去・現在・未来の情報をパラレルに捉える
e.g. 京都は歴史を重んじるので現在を知る本が少ない(「もしも京都が東京だったらマップ」にて今を紹介)
・どれがけ人の人生の引き出しがあるか(日常が調査)
e.g. 家賃相場、場の使い方を決める際もどれだけ当事者になれるかどうか

まちの『多様性』をつくるという課題に対して、『建物』を使ったアプローチを考えるのが岸本さんの仕事。

とてもかっこいいなと思いましたし、普段『まちづくり』という業界にソフト側から関わっている人間としては、ハードが一緒に変わっていくことのインパクトをひしひしと感じました。



最後に質疑応答へ。「sli.do」にどんどん質問が投稿されていきます。

・より、その土地ならではの「暮らし」を知るには?
・「都市」や「まち」の定義は?どんな基準で使っているのか etc...

わたしも、

馴染みのあるまちや地元をリサーチするときに、どのように『視点』の切り替えをされていますか? なるべくよそからやってきた視点を持てるよう、知らないまちに滞在しながら比較するための引き出しを増やそうと思っています。もし、みなさんが心がけておられることがあればお聞きしたいです!

という質問をしました。

読み上げられた瞬間に、川端さんには「そもそも、そのまちを『知っている』という前提がない」と言われそうだな〜と思ったら、そのまま返されてしまいました(笑)。確かに、文化的・歴史的・地形的すべての観点から『知っているか』と聞かれたら完璧ではないし、馴染みのある場所であったとしても、知り続けようとする姿勢は大切だなと思います。

ほかのみなさんからは、「友達と一緒に歩いてみて、その後SNSにどんな投稿をするか観察する」「そもそもリサーチすることがむずかしい。よく知っている場所でもあえて誰かにガイドしてもらう」「没入しているまちがそもそもない」「一本違えば違うまちという認識」などなど、いろんなご回答をいただきました。


(こういう時に匿名で質問してしまうのは、理解できているか不安だったり、質問があんまり得意でなかったりするから というヘタレさからだけど、最後に答えていただけて嬉しかったです。ドキドキするくらいなら、実名で書けばいいものを・・)



「明日、まちに出るのが楽しみ」

この場で話されていた内容は到底 ひと言では表せないけれど、そんな気持ちになったシンポジウムでした。


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どこまで実践できたかわかりませんが、先日美山を訪れた際にすこしだけ意識してみました。南丹市立文化博物館にて開催されていた「芦生の森~森の魅力を探る~」を見学して、すこしだけ地域の情報を仕入れ、あとは現地で話したことや感じたことを大切に。

ログはだいぶ簡易なSNSの投稿と、話したことのメモを残しています。写真はたくさん撮りました。

リサーチを目的として新しいまちを訪れるときに、自分の感覚をどこまで研ぎ澄ませられるかは、やっぱり普段からのものの見方や考え方だったり、経験値だったりでしかないのだと思いました。(このスライドを作った川端さんは偉大!)

美山の訪問を経て思ったのは、「子どもと一緒に巡ってみる」という方法でも、異なる視点からリサーチができるということ。彼ら・彼女らが興味をもつものや足を止める場所には、私たちが大人になるにつれて失っている(かもしれない)なにかがあるような気がしています。



そして、改めて地元・亀岡に戻って思ったのは、ここだけは【わたしがとことん『主観』でいていいまち】なんだということ。

主観が邪魔をしてしまうリサーチもあるけれど、なにかプロジェクトを起こしていくのなら、当事者であることもひとつの方法なんだと思いました。


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