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📕 | 読んだ気になる読書感想文。「竜のグリオールに絵を描いた男」③

📚 竜のグリオールに絵を描いた男
✍️   ルーシャス・シェパード
🌟 p.180〜p.318
👩🏻 読んだところまでネタバレ感想

第三章 始祖の石 読了🔚

「人生、長い間ずっと遠くにあって、とても手の届かないものと思っていた宝物が、いまコロレイをぐるりと包み込んで、その豊かな香りと情景で彼にめまいを起こさせた。どうでもいいではないか、誰が世界を動かしていようと、それで楽しみが減わけでもなく、喜びが減るわけでもない。
『竜のグリオールに絵を描いた男』竹書房, 2018年, 318頁

第三章は弁護士・コロレイと〝始祖の石事件〟を巡るミステリー仕立ての物語。

舞台は竜が横たわる谷の隣町へと移り、とうとう竜の影響力が一つ所に収まらなくなってきた事も伺い知れる。

正直、第三章が1番面白いかもしれない。
(※まだ先の話は読んでません)

コロレイの元にやって来た事件は、一見単純明快。

宝石研磨工・レイモンは、娘・ミリエルが宗教団体に取り込まれ、店の利権の半分を奪われた。
一つ物申そうと僧侶・マルドの元へやってくると、繰り広げられていたのは儀式という名の殺人劇。
怒りに駆られたレイモンが、〝始祖の石〟を使ってマルドを撲殺してしまった。

減軽の方向で持っていこうとするコロレイだったが、レイモンの告白から事態は一変。
どうやら〝始祖の石〟は竜の分泌物。
自分は竜の意志によって、ただ動かされたにすぎないと言うのだった。

このあとの大どんでん返しが、ひさびさに読み応え有りだったな〜と思いつつ、個人的に注目したいのは、先に取り上げたコロレイの台詞。

物語の最後で、全てを悟ったコロレイが指す〝宝物〟とは、漠然とした概念を示してはいない。

ミリエルの様な美人の恋人がそばにいる事

ありあまる財と贅沢に身を置く事

取り巻きの友人連中がいる事

華々しい仕事の上での成功がある事

どれも俗っぽいが、あまりに明確な夢ではないだろうか。

漠然とした何かの集合体ではなく、現実的な欲求を実現する日々の積み重ねこそ、彼に自信を与えてくれるのかもしれない。
この考え方は好きだ。

世界の何たるかを知る事よりも、楽しみや喜びを優先する方が、よっぽど自分を大事にしてるじゃないか、そんなふうに思う。

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