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「真理」と「うそ」を見抜く力ー常に心の片隅に懐疑の意識を持ち続けよう!

これは、NHKドキュメンタリーからの情報である。

太平洋戦争開戦の年の個人の日記や書簡など(エゴデータというそうだ)から語彙を抽出して、AIに読み込ませて分析する(SNSのように)と、1941年初め頃は日常をごく普通に楽しんでいた国民の様子が語彙を通して浮かび上がる。

アメリカ文化を謳歌して映画やダンスを楽しんでいた様子がその語彙から伝わってくる。

それが開戦までのたった一年で、戦争に関する語彙に変化していく様子が棒グラフで表される。

食事や余暇や娯楽やファッションなどについての語彙がどんどん減っていき、配給だとか外米だとか総動員だとか決戦だとかの語彙に置き換わっていく。そして、この戦争に勝ち抜くという類の勇ましい語彙が圧倒的に多くなる。

私たちの持っている日常感覚や意識のなんと移ろいやすいことかと改めて認識する。いとも簡単に国の情報操作に飲み込まれてしまっている。現在のロシア国民は、当時の日本と同じ状況下にある。ロシアの正当性を信じ支持している。

戦時下では、国家によってナショナル・アイデンティティーを求められる。それまで楽しんでいた欧米文化は敵視され、鬼畜米英などと言う言葉が日常に氾濫する。それは、今のウクライナの人々にとっても例外ではない。

ウクライナは、映画祭でのロシア映画の排除を要求した。

これにセルゲイ・ロズニツァというコスモポリタンの映画監督が反対の意思表明をした。彼は旧ソ連、今のベラルーシに生まれ、キーウに住んでいた人だ。

マイダン革命のドキュメンタリーを制作した人で、体制のプロパガンダの手法もそれを拒絶する市民の抵抗も熟知する人だ。

そんな彼があえて反対を表明した。そのために彼は、所属する協会から除名された。以下は、彼の思想と行動について語った記事である。

(2022年5月19日付朝日新聞 政治季評 少数者・異端者を脅かす戦時に芸術は真理知る種をまく 重田園江)から

(原文より抜粋)
「国家に住むのは人びとである。彼らは多様な感情と思想を持って生きている。悲惨な戦争のさなかにあっても、ナショナル・アイデンティティーに訴えて少数者や異端者を排除するのは危険である。

ロザニツァはそれを誰よりも理解している。

芸術家は(ハンナ・アーレントがエッセー「真理と政治」において示した)、真理を告げる者である。政治は権力者によるうそをばらまくことで、大衆を操作し動員してきた。

これに対し、芸術家は政治の外に立って、人びとが真理とうそを区別するための種をまく」のだと。

我々は、今享受している人権や自由を守る努力をしなければならない(と憲法12条で言っているそうだ)。そうでないと、いつの間にか意識の中に悪意の情報が忍び込んで、我々の意識がすり替えられてしまうかもしれないからだ。

不断の努力が大切だ、とは言ってもこれがなかなか難しい。だが、もっと自分の意識や言動を研ぎすまし、心の片隅に「懐疑の意識」を住まわしておくことが重要な気がする。悪意の虚偽情報に出会ったときに不快感や居心地の悪さを感じられるように。

ドキュメンタリーの中で、映像に向き合う2つの立場があった。一つは、ロシア国営テレビのスタッフ、一つはBBCのカメラマンの言葉だ。

あなたはどちらの立場のニュースが聞きたいですか?

*(SNSで流された映像をつなぎ合わせて編集して放映する)「今は現地に行く必要はないのです。ここにいながら情報が手に入る。社会は聞きたくないテーマは、求めてはいないのです」

*「自分は出来るだけ現地に赴いて情報を得たいと思う。映像をどう使うかは、良心の問題なのです」




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