第27回:『約束の猫』で、猫たちとちょっと現実逃避しませんか?

おはようございます、あみのです(=^x^=)今回の本は、村山早紀さん(作)とげみさん(イラスト)による短編集『約束の猫』(立東舎)です。同じ出版社から刊行されている『春の旅人』、『トロイメライ』に続く3作目になります。(話の内容はどれも関係がないので、今作のみでも充分に楽しめます)

絵本感覚で読めてしまうので、長編の物語が苦手な人にもおすすめです。村山さんの優しい言葉で溢れた世界観や、げみさんの美しいイラストは読んでいるだけで思わず現実を忘れてしまいそうになります。

収録作品紹介(Amazonからの引用)

4匹の猫が、あなたのもとへ。
七日間のスノウ:小学生の真実ちゃんは、公園で真っ白な子猫を拾い、秘密の隠れ家で育てようとするのだけれど……。
五千年ぶんの夜:引っ越してきたばかりの街。わたしは出会ったばかりの猫と一緒に、人間と猫の歴史を調べはじめた。
春の約束:みいこは、久しぶりに訪れたおばあちゃんの家で、あるお話を聞きます。それは、昔この家に遊びに来ていたという猫のお話でした。
約束の猫:頭に星の形の黒いぶちがある「星子」という名前の猫と、大切な「お父さん」の物語。

感想

4つの物語はどれも独立したものだと思うのですが、作中では「生まれ変わり」という要素も印象的に使われていて、実は全ての物語はどこかでつながっていたり…とちょっと想像も膨らみました。

村山さんの作品ではよく猫が登場します。今作はタイトルの通り「猫」がテーマの短編集となっていて、いつも以上に作者の猫愛を感じられる1冊でした。私はげみさんが描く季節や猫のイラストが大好きなので、物語の世界観に浸りつつ、煌めきのあるイラストも沢山楽しめたのが嬉しかったです。

作中では人間と猫の出会いや別れの様子が描かれていました。中でも小さい子が主人公のお話では、猫との死別はかなり重たい出来事なのではと思いました。

しかし、猫と死別するお話ではただ悲しい内容にしていたのではなく、先ほども述べたような生まれ変わりの要素とか新たな猫との出会いによって登場人物に希望を与えていたところに村山さんの優しさを感じられました。

特に印象に残ったのが、『五千年ぶんの夜』のお話です。この物語は、文明の変化に怯える主人公が子猫と出会ったことを機に人間と猫のつながりの歴史を知っていく中で、文明の発展のありがたみに気が付くといった内容でした。

インターネットのように日々私たちの生活を支えている技術もあれば、環境問題の原因になってしまうような人類が築いてきたものを壊してしまう技術も世の中には存在します。地球を愛する主人公が後者に怯えてしまう気持ちもよくわかります。

でも、1匹の子猫の命を救うことができたのも主人公がインターネットにて子猫の飼い方を調べたからであり、技術の進歩に対して絶望ではなく感謝の気持ちを持つことは、今を生きていくために凄く必要な考えであると思いました。私も今、世の中にあるものへの感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいです。

装丁もどこか懐かしさを感じる雰囲気で、何度も手にしたくなるような1冊でした。猫やイラストが好きな人はもちろん、ちょっと現実逃避したい人にもぜひ読んで頂きたい物語です!

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