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第178回:生きていることの尊さを感じる物語(月瀬まは:『君が僕にくれた余命363日』)

こんにちは、あみのです!先月はあまり読んだ本の感想をnoteにアップできなかったので、またこれからぼちぼち投稿できたらいいなと思います。

さて今回の本は、月瀬まはさんのライト文芸作品『君が僕にくれた余命363日』(スターツ出版文庫)です。

「他人の寿命が視えてしまう」主人公と、「自分の寿命を分け与えることができる」ヒロインの不思議な青春物語。スターツ出版文庫作品をはじめとする青春ものではよく見かける設定ですが、今という瞬間を生きているありがたみを存分に感じられる美しい物語です。

あらすじ

幼いころから触れた人の余命が見える高2の瑞季。そんな彼は、人との関わりを極力避けていた。ある日、席替えで近くなった花純に「よろしく」と無理やり握手させられ、彼女の余命が少ないことが見えてしまう。数日後、彼女と体がぶつかってしまい、再び浮かびあがった数字に瑞季は驚く。なんと最初にぶつかったときより、さらに余命が1年減っていたのだった――。瑞季がその理由を問うと彼女からある秘密を明かされる。彼女に生きてほしいと奔走する瑞季と運命に真っすぐ向き合う花純の青春純愛物語。

レーベル公式サイトより

感想

今作のヒロイン・花純には、自分の寿命を分け与えることができるという不思議な力があります。力を活かしてたくさんの命を救っていく花純ですが、一方で彼女に残された時間は物凄い勢いで減っていきます。

誰かが苦しむ姿を見たくないという理由で力を使っていた花純。でも彼女の行動は必ずしも相手にとっての「救い」となっていたわけではありませんでした。両親の死に対する未練があるとはいえ、お金を無駄遣いするように命を分け与える花純には、私も瑞季と同様疑問を感じる箇所もありました。

だけど花純の寿命が残り1年となった時、彼女は命を無駄遣いしたことへの後悔と生きていることへの尊さを感じるようになります。
そのことから残りの1年は大切に過ごそうとしていましたが、瑞季を襲った悲劇が花純の運命も大きく狂わせてしまいます。タイトルと花純が持っている力から嫌な予感は察していましたが、実際にこのような場面が描かれると、とても悲しい気持ちになりますね…。

残りの命を事故で大怪我をした瑞季に分けるという花純の選択には、彼女に「生きる」の本当の意味を教えてくれた瑞季に対する「感謝」と「愛」が込められているようでした。

花純からもらった1年+αを貴重なものとして生きていこうとする瑞季の姿には希望が感じられ、彼には花純が生きれなかった時間を大切な友達と一緒に楽しく過ごしてほしいと思いました。

人生はいつどこで何が起きるかわからないこと、そして生きていることがどれほど尊いことなのかを教えてくれた良作でした!

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