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ひたすら楽しい読書体験に出会えた『ノウイットオール』と著者にありがとう

異色すぎる連作短編!?として凄く気になっていた森バジルさんの『ノウイットオール』を読みました!

まず今作は、下記の5つの物語で構成されていました。(カッコ内は各作品のジャンル)

①探偵青影の現金出納帳(ミステリー)
②イチウケ!(青春小説)
③FUTURE BASS(SF)
④ラクア=ブレズノと死者の記憶(ファンタジー)
⑤恋と病(恋愛もの)

収録作それぞれのジャンルが異なるので、一見関係性のない話のように思えますが、実はすべての作品の世界観が共通しており、読めば読むほどサプライズが待ち受けるとても楽しい小説でした。「本を読んでひたすら楽しい時間を過ごしたい」と小中学生の頃の私はよく思っていたので、今作を読んで読書が好きになり始めたあの頃の気持ちを取り戻せたような気がします。

ある作品ではほんの一瞬でしかなかった出来事が、別の作品では濃厚に描かれている。また、ある作品で解明できなかったことが、別の作品では簡単に解明できてしまうなど、ジャンルの壁を越えているからこその発見と出会えるのも今作ならではの感動でした。

収録作同士のつながりを知るたびに、現実でも今作のように私の知らないところでミステリーやファンタジーめいた出来事が起きていたりして…!?と思わず想像してしまいました。

今作の本当の面白さが発揮されるのは2話目の青春小説「イチウケ!」だと思います。このエピソードは、M-1優勝を目指す高校生男女の奮闘が描かれており、お笑いへの情熱を感じる内容となっていました。

狭き門であるかつ、高校生の間だけという条件つきながらも、一生懸命お笑いと向き合い、やがて伝説となっていく千尋と葉由はゆのコンビにシビれました。正直この作品だけでも1冊の本として仕上がるのでは?と思ったくらいでした。ちなみに葉由の母が別のエピソードで意外な形で登場しており、その種明かしには思わず声が出たくらいでした。

ここはちょっと余談。著者の森バジルさんについてはスニーカー文庫の前作の時から私は知っていました。前作は特殊能力を持つ少年少女が活躍するお話で、個人的に不老不死のメインヒロインの残酷な過去を描いたシーンが衝撃的すぎて今でも印象に残っています。

結局前作はシリーズ化せず、森さんの他のラノベ作品も読めなかったのは本当に悔しかったですが、数年の時を越えて今度は一般文芸作品で森さんの新しい物語と出会えたことが何よりとても嬉しかったです。

イチウケ!のような青春小説もまた読んでみたいし、今作の様々なジャンルが行き交う世界観から著者の作風の更なる可能性を感じました。これからの作品でもわくわくとちょっぴり刺激のある読書体験ができることに期待したいです。

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