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第21回:谷崎の『痴人の愛』は、人の愛し方の変化を実感した1冊でもありました

こんばんは、あみのです。今回の本ですが、タイトルの通り谷崎潤一郎の名作『痴人の愛』です。私が読んだのは角川文庫版です。名作というと堅苦しい印象を持つ方もいるかと思いますが(私もそうです)、いつものライトノベルの感想を読むような気軽さで今回の記事も読んで頂けたら幸いです。

時代を越えて人々から愛される名作は、読んでいると作品が書かれた当時にタイムスリップしているような気分が味わえるところが凄く好きですね。

あらすじ(カバーからの引用)

「つまりナオミは天地の間に充満して、私を取り巻き、私を苦しめ、私の呻きを聞きながら、それを笑って眺めている悪霊のようなものでした。」独り者の会社員、譲治は日本人離れした美少女ナオミに惚れ込み、立派な女に仕立ててやりたいと同居を申し出る。我儘を許され性的に奔放な娘へ変貌するナオミに失望しつつも、その魔性に溺れて人生を捧げる譲治の狂おしい愛の記録。谷崎の耽美主義が発揮された代表作。

感想

まず、年を重ねていくに連れて「男に支配される側」から「男を支配する側」の女性に成長するナオミの変貌ぶりに凄く魅了されました。話が進めば進むほど官能的に描かれていくナオミの姿に、私も脳味噌がとろけるくらいでした笑。最近の作品でもそうですが、魅力的なヒロインが主人公の心を動かし、翻弄する物語は私の大好物のひとつですね!

「男を支配する側」の女性に成長したナオミは、譲治にとって理想としていた彼女の姿ではなかったのかもしれません。一度はナオミのことを手放した譲治ですが、純粋な少女だった頃から毎日近くで見てきたナオミの異常な美しさを忘れられなかったことから、結局彼女との甘い日常を取り戻すことを決意します。

性格は以前とは別人のようになっても、あの異常な美しさを自分のものにしたい譲治の欲望からは、人間の「本能」の逆らえなさをよく感じられます。作中にて、ナオミとの関係を「酒」に例えていた箇所がありました。体に良くない毒であっても思わず手を伸ばしたくなってしまう、飲酒とナオミと過ごした日々を重ね合わせた表現がとても秀逸だと思いました。

これを読んで馬鹿々々しいと思う人は笑って下さい。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。

終盤のこの言葉を読んだ時、序盤はアウトだけど、全体的に見て譲治とナオミのような年が離れすぎた男女の関係というものは現代ではよく見かけるし、特別変な関係ではないなと個人的には思いました。

しかし、解説にてこの部分について言及していた箇所があり、作品が書かれた当時は自由に恋愛ができない時代だったことを踏まえて本編を回想してみると、この物語が当時どんなに「異端」な内容だったのか、作品が発表されてから今に至るまで恋愛への価値観がどれくらい変わったのかをよく味わうことができました。もし今の世の中に譲治とナオミが生きていたら、どんな風に関係を築いていたのだろうかと思わず想像してしまいます。

序盤は可愛らしさ、途中からは美しさと色っぽさを感じる魅力的なヒロインに惑わされるような名作。譲治と共にリアルタイムでナオミの成長を追っているかのような谷崎の表現力も印象に残る1冊でした。今でも頭の中には私なりのナオミ像が残っています。

最後に、今回も読んで頂きありがとうございます。これからも沢山の名作を読んで、様々な時代を感じていきたいです。さて、次は何を読もうか。

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