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第38回:『逆ソクラテス』で「先入観」をぶち壊せ

こんにちは、あみのです。今回の本は、伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』です。超がつく人気作家さんの作品ですね。何人かのnoterさんの感想文を読んで興味を持ち、読んでみました!

敵は、先入観。世界をひっくり返せ!

まず、今作のこのキャッチコピーがめちゃくちゃ好きです。キャッチコピーだけでも「これはただの物語ではない」ことを予感します。

この物語には一体どんな独創的な世界が広がっているのだろうか、とてもわくわくした気持ちで読み始めました。

あらすじ(Amazonより)

逆転劇なるか!?カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える――「逆ソクラテス」
足の速さだけが正義……ではない?運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが――「スロウではない」
最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、”敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも――「アンスポーツマンライク」
ほか、「非オプティマス」「逆ワシントン」——書き下ろしを含む、無上の短編全5編を収録。

感想

「先入観」という言葉をカギに、登場人物の思いもよらない発想が次々に炸裂する前向きな気持ちになれた1冊でした!個人的には、美術館の絵画を使って大人を騙そうとするアイデアに序盤から笑ってしまいました。

目上の人が言うこと、目に見えている世界だけが必ずしも「正解」とは限らない。「先入観」は世の中の敵である。こういったことに小学生のうちで気付けるのがまず凄いなと思いました。

私は世間が決めたルールに沿って行動してしまう真面目な人間です。なので、もしこの物語が小中学生時代にあって読んでいたら、少しでも普段の行動の仕方とか変わっていたのかな…とふと思いました。(今、この物語が読める現役の小中学生がうらやましいです!)

とはいえ、現在の私が読んでも充分これからを生きていくのに必要なヒントを得ることができた箇所はたくさんありました。

中でも印象に残ったのが、『非オプティマス』というエピソード内の久保先生の言葉です。

もし、平気で他人に迷惑をかける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀そうに、って

私は人に迷惑をかける人間が嫌いで、日常生活においてそういった人間の話を耳にすると、イライラや生きづらさを感じてしまいます。

この先生の言葉は、そういった生きづらさを少しでも解消するきっかけにもなったと思います。これから迷惑をかける人間にイラついたら、この言葉を思い出すようにします。

印象的なセリフを残した久保先生ですが、一方で新人教師というのもあり、子どもたちや保護者から信頼されていないところがありました。

しかし、先生の学生時代の知人だという女性が騎士人(ナイト)たちに話した内容から、自分なりに教育現場の現状に向き合っている人物であることがわかりました。

学校では見えない努力を知ると、これまでは自分たちとは別次元の存在のように見ていた先生も、私たちと同じ世界の「人間」であったことに気が付きます。これはなんか学校のない日にスーパーとかで、知っている先生を目撃したときの感覚にも似ていると思います。

また、noteで伊坂作品の感想文を読んでいると、「読んでいると、短編同士の関係性が見えてくるのが好き」のようなことを書いている方をよく見かけます。

今作も短編で構成された1冊でありながらも、いくつかの物語では他の短編とのつながりを感じる要素が何度か見られました。短編同士のつながりが見えてくることで、作品全体としての印象も変わるところが凄く楽しいですね。

本格的に伊坂作品を読んだのは初めてでしたが、多くの方が「好き」と感じている面白さを体験できたひとりになれたことが何よりも嬉しかったです。

世の中における「先入観」について見直したくなる1冊。noteの世界にいなかったらおそらく読む確率が低かった作品だと思います。予想以上にインパクトのあった作品だったので、文庫化したときとかに再読したいですね。

今さら感はありますが、多くの人が知る超人気作家の面白さを発見することができて良かったです!

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