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第76回:不思議な話×26

こんにちは、あみのです!

今回の本は、村崎羯諦さんの『余命3000文字』(小学館文庫)という短編集です。何ヶ所かの本屋にて平台で置かれているのを見て、凄く気になっていた作品です。

他社の本にはなりますが、河出書房の「5分シリーズ」を読んで以来、短時間で読めるかつインパクトのある物語を集めた短編集に興味を持っています。いろんな作家さんの短編が読めるアンソロジーもいいですが、今作のようなひとりの作家さんの世界観が存分に味わえる短編集もまた別の魅力があって惹かれます。

いろんなジャンルを乗せに乗せまくった贅沢な1冊。思わず笑ってしまう結末の物語も、ちょっと恐怖を感じる物語も。読み手の心を満たす不思議な物語たちが待っています。

あらすじ(カバーより)

「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」ある日、医者から文字数で余命を宣告された男に待ち受ける数奇な運命とは――?(「余命3000文字」)。「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」母のお腹の中で引きこもり、ちっとも産まれてこようとしない胎児が選んだまさかの選択とは――?(「出産拒否」)。「小説家になろう」発、年間純文学【文芸】ランキング第一位獲得作品が、待望の書籍化。朝読、通勤、就寝前、すき間読書を彩る作品集。泣き、笑い、そしてやってくるどんでん返し。書き下ろしを含む二十六編を収録!

感想

「なんでこの人がこの配役に?」みたいな身近の思わぬ人が登場する夢を見ることって結構あるかと思います。そんな日常的に見る変わった夢の中にいるような、不思議な読書体験ができました。

表題作をはじめ、『彼氏がサバ缶になった』とか『出産拒否』とか『流れ星のお仕事』とか私には絶対思いつかないアイデアのオンパレード。中にはタイトルの時点では謎の領域に達している作品もある。

奇想天外な設定や皮肉交じりで意外性のある結末たちからは、作者の個性を存分に味わうことができました。ひとりの男の最期を3000文字でまとめるなんて、称賛しかない。

中でも私が推したい短編は、『食べログ1.8のラーメン屋』『何だかんだ銀座』『大誤算』の3作。

まず食べログと銀座は、設定で笑いました。前者は「食べログ1.8のラーメン屋」がどう物語を動かしていくのか短いながらも目が離せませんでしたし、後者は銀座で買った蜂蜜を木に塗ってお金持ちを呼ぶなんて夏休みの昆虫採集かとツッコミたくなりました。(でも銀座はラストが心に沁みます)

また『大誤算』は、金目当てで結婚したはずが、予想以上に長生きしてしまった高齢男性に興味を持ち始める妻の感情が面白い短編でした。確かに200年以上生きた人間が実在したら、私もどんな生活をしていたのか気になってしまいますね。あと歴史上の出来事についても個人的には聞いてみたい。

他にも恋愛の嬉しい瞬間・悲しい瞬間を切り取った物語や、ファンタジー色強めな物語など、作品ごとにそれぞれ違う世界を見ることができて、次はどんな物語が飛び出すのか、毎日この本を読む時間がとても楽しかったです。短編集なので気軽に読み返せそうなのもいいですよね。それにしても1冊で26の異なる世界が楽しめるなんてお得だと思う。

もっとこの作家さんが創る世界が見てみたい!と思えた刺激的な短編集でした。また短編がいくつかまとまった本が出たら読んでみたいです。

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今回の感想文を読んで頂き、ありがとうございます。もしかすると長編小説以上の衝撃や面白さがこの本にはあるかもしれません。まずは気になったタイトルの短編から読んでみるのもおすすめです。

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