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”大スベり” と ”大ヒット”

私:「貴社で今後行うべき取組は、A・B・Cの3つだと考えてます!」
クライアント:「・・・。なぜその取組?意味が分からない。」

”大スベり” だった。
プロジェクト完了が危うかった。
今までのやってきたことは何なのか?自信を失った。
初めて「案件継続しないで欲しい」と願った。

私がマネージャーとしてプロジェクトリードも多少経験した頃、未経験業界のトップクラスの企業に対して未経験領域で、プロジェクトマネージャーとして従事した案件であった。
未経験だらけのため、業界・領域経験者の先輩をアドバイザー的につけてもらったが、どこまで自身でリード出来るか?チャレンジしていた。
自社としても初めてのクライアント、2ヵ月で戦略方向性を示唆する超短期プロジェクトの中間報告での出来事。

クライアントのインプットも少なく、分析活動も道半ばの状態、提案の斬新さもあまり出せない中で、「分析活動から見える範囲で提示した方が良い」という先輩の助言を振り切り、”コンサルたるもの早く方針を提示すべし” と「方針提案」に踏み切った結果がこの反応だった。自分としてはもう少し議論になるかと考えていたが、議論にもならなかった。

「かなりマズい」とは思ったが、「失敗した」とは思わなかった。ここで謝っても意味がない、くよくよしている暇も振り返ってる暇もなかった。「最終報告までには分析に基づく提案を提示します」と言い、残り1か月弱でどう着地させるか?すぐに計画を立て、すぐに走り始めた。
クライアント担当者には自社まで来てもらって大量のインプットをしてもらった。先輩の推奨アプローチは丸ごと従い、業界・領域の知見を引き出し、夜中まで議論に付き合わせた。メンバーには分析観点を増やし大量の分析を夜中までやってもらった。
眠い・辛い・しんどい中で、最終報告当日の明け方まで最終化を行い、最終報告に向かった。

一通りの説明を行った後のクライアントの反応は、「なるほど、大体は思ってた通り」「まぁまぁかな」という反応。
元気いっぱいの時であれば、「思った通り」や「まぁまぁ」はコンサルとしてはイマイチである。「おぉなるほど!」「確かにそうかも」「そういう手もあるね」なんてコメントを1つでも2つでも狙わなきゃいけない。
ただ、この時は充分だった。大ピンチから及第点までは戻せた、何とか乗り切れた。

頭の中が徐々に真っ白になっていく中、クライアントから耳を疑う言葉が。
「ところで次フェーズの話ですが…」
多くの案件ではコンサルが「次フェーズやりましょう!」と言い、クライアントが「ちょっと考えてから…」となりがちなのだが、「次フェーズ」という言葉を出していない最終報告でクライアントからその言葉が出てきた。引き続き支援して欲しいという意図なので、コンサルとしては有難い話だ。
が、私は真っ白になりかけた頭が真っ白になった。代わりに上司が「もちろんやらせてください」と答えていた。

「私が抜けるなんて案は…?」と一応聞いてみたが「あり得ない」との回答。まぁ最初のフェーズを仕切っていた私が交代するなんてあり得ない、交代した人が私以上の苦労をするだけであり、またゼロからのスタートだ。ごねるのもムダなので次フェーズの提案・計画に早速着手した。

そんなことを繰り返し、気づけばかれこれ半年ほど継続的に支援をしていた。最初のフェーズほどではないものの、ずっとひぃひぃ言いながら何とか分析→提言する活動を繰り返し続けていた。
そんなある日、中期方針を提案する場があった。
「こんな質のいい提案は見たことがない」「いつの間にこんな仕込みをしていたのか?」「何もイメージ伝えてなかったのに」
クライアントの反応は”大ヒット”、その場で「これで行こう!」と即決。クライアント側では本件を喧々諤々議論必要だが時間がない、どうしよう…と思ってた矢先に出てきたアウトプットだったので、かなり喜ばれた。
その少し後、半年越しで初めて会食の場を設けて頂き、
「最初は色々と不安だったが、御社に支援してもらって本当に良かった。」
とおっしゃって頂いた。
感動で涙しそうになったが、どちらかというと安堵の気持ちの方が大きかった。

”大スベり” と ”大ヒット” 両方から学びはあった。
”大スベり” の時、「先輩の言うことを聞こう」「分析結果だけ言えば良かった」とは思わなかった。「知らないアプローチを得た」「提案の根拠が大事」「納得するしないは人により異なる」と思った。
”大ヒット” の時、「先回りしたら感動を生む」「相手の思考を踏まえつつ自身の考えを足すべし」「提案はハッキリしているのが良い」と思った。
一連の流れを経て、やはり”コンサルたるもの早く方針を提示すべし”と思った。

同じように「失敗」でも「成功」でも学びはある。
ただ、「失敗」=「計画に満たない結果となること」という意味で用いてしまうと、「より正確に計画を」「計画に届くように入念にチェックする」「ミスがあったらすぐ報告する」「結果に合うように計画を修正する」など、守りの要素が強く活動を委縮させるワードに感じてしまう。
逆に、「成功」=「計画以上の結果を得ること」という意味であり、「頑張った」「運が良かった」「嬉しい」という感想じみたものが残り、高揚感は得るものの「振り返り」をしなくなってしまっていないか?

農耕民族で和を重視し、安全・安定思考が強く真面目な日本人は、何をするにもリスク回避的になりがちだ。その上に「失敗」というワードを聞くと、どうしても攻める気持ちが減退してしまうのではないか。
「失敗を恐れず」「小さな失敗を繰り返し…」「失敗を許容しよう」とポジティブに言い換えたとしても、計画未満の結果は狙ってやるものではない。
振り返るべきは結果であり、「こうすれば結果が良かった」「こうすれば結果が下がった」「なぜだろうか?」「次はこうしてみよう」という、”計画対比しない” ことではないだろうか。

”大スベり” の時も、”大ヒット” の時はより多く、そして ”普通” の時も、なぜその結果になったのか?次もっと結果出すためにはどうしようか?次はこのやり方でやってみよう!、と学びを未来に繋げていこう。
「失敗を恐れず」ではなく、「より結果を多く出せるよう、テイクできるリスクを見極めて」チャレンジしよう。

失敗だ/成功だではなく、全ての結果から学び、経験を積むために結果を早く・より大きく出せるようになっていこう。

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