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【お店】 閉店した某リペアショップ R.E.(仮名)

郵便に普通に混じっていた1通のDM。何の気なしに目を通すと、駅の近くのリペアショップの閉店のお知らせだった。それも数ヶ月後に迫った閉店を、わざわざ伝えてくれるなんて。

閉店日が◯月◯日なので、もし御用命の方は△月△日が最終受付です云々、が記されていた。もちろん今までのご愛顧に対する感謝の言葉も添えられていて、ハガキにはきれいに整えられた店の写真が使われていた。最後までこのお店は本当に素晴らしいんだな。


2020年3月、感染症がじわじわ広がりつつある頃・・・。

「わ、ナンダコレ」

黒いバッグの片面にカビ?のような白い模様がほぼ全面浮き出ていた。

あーーーー。心当たりある。とあるレセプションに行って帰ったら消毒しましょうということで、次亜塩素酸系のスプレーをしたから、きっとそれで変色したんだな。でも片側だけ、なんでだろう。

どうしよう、これを模様と思って開き直るか、革染め用のクリーム塗って自分で直してみるか。いや、以前靴を染め直そうとして思いの外難しかったからやめた方がよさそう。ここはやはりリペアに出すのが無難かな。面倒だけど。

ということで地下鉄駅の近くにあるリペアショップに持ち込む#。チェーン店ぽくないきっちりした店構えがなんとなく信頼できる気がして、以前もお願いしたことがあった。私は単に靴底やらカカトの取り替えをしてもらっただけだけど、ブランドものの靴が修理棚にずらっと並んでいたので、おそらく実力ありのお店なんだろうと推測していた。

「何か特殊なものが付着しているようですね。でも何なのかちょっと見ただけでは分からないですね・・・」

「たぶん消毒液での変色かと思うのですけど」

「そうではないようです」

原因は不明。元に戻せるかは分からない。塗り直しても再度汚れ?が浮き出てきてしまうかも。また、片側だけ補修すると裏表で色が違ってしまうおそれあり。全体を塗り直す方がよいと思う、若い女性の職人さんが細かに診断を下してくれる。

お見積もりは片面8000円、両面で14000円。(税別)

こちら10万円くらいしたまぁまぁいい値段のバッグ・・・。しかし修理代はバッグ価格の1割超という半端な感じ。この修理代で新しく別のバッグ買えるといえば買える。この子、あまり使い勝手がよくなくて(見た目より物が入らない!但しチェーンは実はすごく軽くてgood)、微妙に気に入っていないという点も響き、ケチくさく少々悩んでしまった。

けど、やはりここはきっちり直すしかない。外見だけかっこよくて、ほどほど大きいくせに結局サイフとスマホしか入んないのかよ的な仕方ないバッグだけど。両面塗り直しをお願いする事にした。

修理を試してみますけれども、もしかしたら出来ないかもしれません。テストして無理なようでしたらご連絡します。そうなってしまったら申し訳ありません。また修理後変色しないか様子をみたりするので1ヶ月くらいかかります・・・と丁寧に説明をして預かってくれた。

そして1ヶ月ほど経ち、写真の通り、全く遜色なくバッグは元通り。引き取りの時も同じ女性が対応して、もしまた白くシミが浮き出てきたら連絡をください、と念を押してくれた。奥のガラス張りの部屋でも若い男性の職人さんが何やら熱心に作業をしているのが見えた。


今年の春お店は閉店。何事もなかったかのように、黒いバッグは部屋の片隅に。いまいち使えないやつだけど、愛着持ってやるしかないね。思い出の品になっちゃったから。


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