雨宮悠

あめみやゆうです。よろしくお願いします。

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マガジン

  • fromTECH.C.札幌

    • 99本

    TECH.C.札幌 ライトノベル&シナリオライターコースのマガジンです。学生作品やコンテスト情報、地元札幌のイベント情報などを発信していきます!【毎週月曜日更新】

最近の記事

愛の行方

 自分に自信が無かった。顔は全く良くないし話も気持ち悪い程下手。魅力的な所なんて一つも自分には無かった。だから勇気を出すことが出来なかった。ましてや、告白なんて。  気になっている人が居た。一目惚れだった。顔が良いとか胸が大きいとかじゃなくて、その雰囲気に惚れた。言葉を選ぶのであれば、大人しさの中に自分の趣味を詰めた感じ。それに性癖ドストライクで、ボタンシャツにネクタイを締めた服装で、そのままスーツを着ても全く違和感が無いような見た目をしている。スカートなどは一切履いている

    • 素直、尚。

       都会から電車で一時間程離れた田舎町に、とある少年がいた。中学生にしては高校生程には背が高く、声も低い。フリだかどうだか「付き合って」と言われて、そのまま「何に」と返す位には世間知らずで、職員室で「先生」と呼んでしまい、みんなを振り向かせる位には抜けている。そんな彼のお話。  当時中一の少年は、担任が好きだった。面白くてユーモアのある人だった。理科の授業を担当していて、バドミントンに熱のある人だった。  ある日、彼は溶連菌と肺炎を立て続けに引いてしまい、学校を一ヶ月程休ん

      • 気まぐれ夜の散歩

         「ヘェックション!…もうこんな季節だもん、夜は寒みいな。しかしまあ、お前も飽きねえよな。なんでそんなにゲーム出来るんだよ」  「なんでだろ、好きだからかな」  「まだヒロキでやってんのか?」  「当たり前だろ。自分の名前でやってもいいだろ?」  「そうかよ。莉奈はそれでいいのか?」  「アイツは大丈夫だよ」  「息子は?」  「健太も大丈夫だよ、莉奈が面倒見てくれてるし、莉奈がキツいって言ってる 時は俺も手伝うし」  「ゲームなんかせんで面倒見てくれとか言われんのか?」  

        • 夢を見ていた

           水曜の夜九時少し前、家のチャイムが鳴る。恐らくは注文したカフェイン錠剤だろう。病院の先生には止める様に言われているが、一日という時間を水を飲む感覚で作業を進めねばならぬ自分は、そんなことに耳を傾けている場合など無かった。究極の音、一音一音を産み出せるアイデア全てを振り絞って重ねて、そこに言の譜を載せる、最高峰の曲を作る為には、生活等投げ得る覚悟は出来ていた。既に知名度は有る。自分のそれまでの曲を聴いてくれる人も百万といる。しかしそんなものはどうでも良かった。何なら認めて貰う

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          あの客

           いつも夜の九時半にコンビニへ来る、肩まで伸びた暗めのオリーブの髪色を、軽いポニーテールで束ねている、三十代位に見えるテンション低めの、仕事着の制服とエプロンまんまの女性客。いつも何かしらの物とハイライトメンソールを注文する。ああ、今日も来た。  「あと、ハイライトのメンソール一つお願いします」  はっきりとしない低い声とパッとしない見た目が、僕は好きだった。正直、歳の差とか僕には関係無くて、向こうが良ければ全然いいんだけどなあ、なんてくだらない妄想をしている。  煙草だけ買

          マジックなんかじゃないんだ

           「あの、」  春だった。  三月二日、卒業式まで後一週間。僕はそれなりの公立大学へ無事に受かっており、あとは卒業式を迎えるだけで、自宅待機の状態だった。家から最寄りのコンビニへ行くと、見覚えのある背中と髪型がいた。  「大輔、お前も買い物か」  「おっ、春樹じゃん。どうした?」  「ネットで服買ったからさ、それの支払い」  「なるほどな。折角だし、ちょっと団地公園でも行かね?」  「懐かしいな。いいよ、暇だし」  近くの団地にある公園、小学生の時から皆で

          マジックなんかじゃないんだ

          Be mine あらすじ

           音楽サークルの飲み会で出会った大学二年の主人公、萩原亮。亮が好きなバンド『Seek Back』が好きだったということをきっかけに、前の席で飲んでいた大学三年の内山優奈に話しかける。飲み場所を変えた後、二人はSeek Backについて盛り上がり、今度のライブを一緒に見ることになった。音楽を通して始まった少し大人な青春ラブストーリーです。 第一話 第二話 https://note.com/yamadare/n/nc75eb79fbeb2 第三話 https://note.

          Be mine あらすじ

          Be mine 第三話

           補講期間も含め、一ヶ月以上続いた夏休みも終わって、ちょっとだけ憂鬱な学校へと行き始める。一番面倒なレポートの課題は、みんな何とか終わらせていて、目の隈が酷い人が何人かいた。ご苦労様でした。  優奈の顔はちょくちょく見る。お互い友達同士で昼ご飯は食べるけど、連絡とかはまあまあする。よくある何時間開けてメッセージを返す、とかはもう無くて、気楽に話せる関係だった。でも、お互いの友達を大事にしているから、講義の終わった後とかに、ようやく二人の時間があった。  ライブの日まで後二日。

          Be mine 第三話

          Be mine 第二話

           あの日から三週間が経った。僕は今まで通りとそんなに変わらない生活を送っていた。強いて言えば優奈と話すようになった位だ。一線超えた関係になったけど、まだ付き合ってはいない。かと言ってお互い忙しいから、あれっきり一回も会ってすらいない。  僕は変わらず、週四でバイトをして日々生きる為のお金を稼いでいる。親からの仕送りもあるけど、いざという時の為に半分は貯金はしている。もう半分はCDや服を買ったり、友達と遊ぶ時に使う。最近はスマホの音楽アプリでストリーミングしていつでも聴けるから

          Be mine 第二話

          Be mine 第一話

           僕が彼女と連絡を取るようになったのは、八月末の音楽サークルの飲み会で会ってから。向かいの席に座ってた女性のスマホのロック画面をちらっと見ると、僕の好きなバンドのライブの時の写真が見えて、それをネタに僕から話しかけたのが始まり。黒いフリルシャツと白いチノパンを履いて、K-POPとか聴く感じの人なのかなって思っていたけど、人は見かけによらずって事だね。後で二人で別のお店行く?って、向こうから誘ってくれた。  彼女は行きたいバーがあるからと、僕を連れていく。バスと電車を乗り継いで

          Be mine 第一話

          この目で見たもの

           十六歳の時に、後天的な不老不死の病に病に罹った主人公が、悟られまいと、自分の身を世間に知られないように日々を過ごす。幾年も過ぎたある日、自分の住んでいた街が戦争に巻き込まれ、国を越えて逃げる事に。そこで出会った「夢少女」と出会い、心を通わせ合い、友達を超えた存在へとなっていく。ずっと若いままの彼女の生き様と夢少女の未来、そして世界の結末を、お楽しみください。 https://note.com/preview/n12a8df730ad0?prev_access_key=cd

          この目で見たもの

          この目で見たもの

           世間一般で言う所の不老不死っていうのは銃で撃たれても槍で突かれても死なないものを指すらしい。周りの奴らに聞いたら死なないって言ってるんだから死なないじゃんとか、そもそも無傷なんじゃない?とかって意見が大体だった。体がずっと再生し続けるんじゃない?って言った奴もいたな。今は三四一回目の十六歳を過ごしている。時が過ぎるのは早かったり遅かったりした。花の咲く時から、世界が終わる直近の瞬間も、誇張なしに、この目で全てを見てきた。人の移り変わりも、常識というものの変化も、全て。  私

          この目で見たもの

          泡沫の夢、夜の一夢

           私、いつもは最寄りの駅から徒歩三分で着く「エブリシング」っていうカフェでバイトをしてます。いつもは木土日の週三で仕事していますが、今日は店長さんに初めての夜勤をやって欲しいと言われました。カフェなのに夜勤?とは思いましたが、とりあえずはいと言っておきました。  電車を降りると、広場にはハロウィンカラーの装飾がそこら辺に展示されていました。やっぱりかぼちゃのくり抜きは可愛いですね。言われた通り午後八時、仕事先へ着きました。普段通り裏口から入って着替えをします。すぐに店長がこち

          泡沫の夢、夜の一夢

          割れて映る

          ふらふらしてるあなたはだれなの? 「わたしはおばけなのよ」 ふーん きいたよりもかわいいのね すきなこととかあるの? 「そうだねえ」 「こどもをながめているのがしあわせかな」 ふーん わたしね、しゃぼんだまがすきなの! いっしょにしよ? 「いいわよ」 「しゃぼんだまにねがいをこめてふくらませるとね、それがかなうのよ」 そうなの? わたし、おばけさんとともだちになりたい! 「ふふふ、ともだちになりましょ」 ちいさくくしゃみをした おばけさん、私は友達のままです

          割れて映る

          あんたが好きだった髪はもうさよなら

           八月だった。曇りの夜にちょっと変わった。  だらしない夏休みを過ごしていた僕は、またふらふらと深夜のコンビニへ行く。いつもと同じ缶ビールとコーヒー、それと数日分の菓子パンカップ麺、あとちょっとだけ気になる美味しそうな新商品を買う。四千円くらい支払って、重たいエコバッグを手に提げて帰る、それだけのはずだった。  泣きながら誰かがこちらに歩いてくるのが少し見えた。あまりはっきりと姿は見えないけど、泣き声からするに女性で、こんな夜にそんな泣いてたら心配でしょうがないから、とりあえ

          あんたが好きだった髪はもうさよなら

          【三題噺】「夏至」「スニーカー」「高校生」

           六月下旬、夏至を過ぎた土曜日のこと。どうも今日は雨降りで蒸し暑く、外出が億劫であるが、生憎今日は体育祭。しょうがないけどシャワーを浴びて、朝ご飯を食べる。母親が高校生最後の体育祭だから験担ぎにと、朝からカツカレーを作る、朝から重たいけど本当に美味しい。じめじめとしていて憂鬱だがのんびりはしていられない。スポーツセンターまでバスで行く必要があるので間に合わせる必要がある。  シューズやタオル、着替え一式と塩飴を五ついれた大きな水筒をリュックサックに入れて、スニーカーを履いて大

          【三題噺】「夏至」「スニーカー」「高校生」