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柔と剛よく剛を制す‐NHKドラマ「虎に翼」の感想

ドラマ「虎に翼」が、めっちゃ、おもしろい。日本で初めて、法曹界に入った女性の話だ。きっかけは、Audible版「【さり】ではなく【さいり】です。」を聴き、伊藤さんのドラマを観たいと思ったから。

ちなみにAudible版では、伊藤さんご本人が朗読。ハキハキした声で、自分の気持ちを正直に伝えている。弱さも強さもあっさりと認め、生い立ちや気持ちを正確に伝えられるところが彼女の魅力ではないか。すがすがしい言葉のシャワーが、聞いていて心地いい。

世の中で「強い人」を挙げるならば、まさに、伊藤さんのことだと思う。イヤフォンで「【さり】ではなく【さいり】です。」を聞くと、私のとなりに彼女が来て、さわやかに語りかけてくれるようだ。

そんな彼女の魅力にとりつかれて観始めた朝ドラだが、主人公の猪爪寅子が、伊藤さんご本人のキャラクターにそっくりな雰囲気を醸し出している。

何か問題が起こると、強く抗おうとするわけではなく、「はて。」と、いったん立ち止まり、冷静に受け止め、自分なりの解決策や折衷案をすばやく提案する。かといって常に冷静でもなく、「猪」のように、母親の反対を押し切り法曹界への道を突き進んだり、男女差別する相手にカッとなり怒鳴ったり引っ掻いたりして「寅」、はたまた「爪」があらわれることも。そこも見ていて痛快だ。

「柔よく剛を制す」ということわざがある。「柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえつけることができる」という意味であるが、猪爪寅子に関して言えば「柔と剛よく剛を制す」といった感じだ。「虎に翼」という、いわばドラマのタイトルのような展開にこれからも期待したい。

「虎に翼」の魅力は他にもある。今まで、ほぼ触れられてこなかった「生理痛の表現」、「男や女はこうあるべしへの疑問符」、「男装・華族・留学生といった多様性を扱う」ことなど。特に「生理痛」の演出は画期的。当たり前のことを当たり前に扱うこのドラマを通して、新しい時代の風が吹いていると感じる。

伊藤沙莉さんのことは、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」のナレーションで知った。地に足のついた、説得力のある声だなと。それでいて語り口は軽やかで、聴いていて本当に疲れない。「疲れない声」ってとっても大事。親近感があって分かりやすく、唯一無二のチャーミングな声。これからも、もっともっと活躍してほしい。


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