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読書感想No.30『桜のような僕の恋人』
“桜を見ると思い出す。
どれだけ時間が流れても、やっぱりどうしようもなく君を想ってしまうんだ。“
こんにちは、天音です。
今回の読書感想は、宇山佳佑さんの『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)です。
🌸あらすじ(裏表紙)
美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて恋人同士になる。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。美咲は、人の何倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。老婆になっていく姿を人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。桜のように儚く美しい恋の物語。
“TikTokで話題“。本屋で見かけたPOPです。
全体的に青っぽいコーナーにこの本はありました。
TikTok。インストールしたことはないんですが、名前は知っています。
ダンスや豆知識なんかの短い動画を投稿するアプリという、勝手なイメージを抱いていました。
どうやって話題になるのかと気になって手に取ったんです。
後から調べて知ったのですが、TikTokでは書影と一緒に感想を投稿して広まるんですね。なるほど。
この本はあらすじからもわかるように、とても切ない恋愛小説です。
正直にいうと、文体がかなり若く、誇張された一人称語りなために、慣れるのに時間がかかりました。
半分くらい読むと慣れたのか結構力強く物語に引き込まれたのですが、少し読むのに苦戦しましたね。
私の文章を読んでくださった方はなんとなく察しているかと思うんですが、私って基本的にテンションが低いんですよ。陰鬱なんです。
そんな人間なので、桜のような恋愛話に若干ついていけなくて。
普段時速10キロで走ってる人間が、時速100キロの乗り物に即座に適応できますかっていう話です。
でも後半はすごくぐいぐい読めたのでさすがでした。
美咲本人もですが、周囲の人のどうしようもできなくて苦しい感情とか、やり場のない苛立ちとか、胸に迫ります。
美咲のお兄さんは最初、好かん奴という印象だったんですが、ラストは一番好きな人にまでランクアップしていました。
一人の女性が恐ろしいスピードで枯れていく話なんですが、それでも瑞々しい感情が溢れている物語だったと思います。
大好きで、一生一緒にいたい人がいたのに、その夢は絶対に叶わない。
最後に晴人は美咲に対して、とある償いようのない罪を犯します。しかしそれは、ある意味美咲にとって救いだったのではないのかなとわたしは思うんです。
晴人の中で美咲は、まさに写真の中にいるように美しい姿で残り続けていると思い知らされたでしょうから。
かかっている音楽とか、着ている服とかがとても細かく描かれているので、読んでいるだけなんですがドラマや映画を見た気になれます。
色々指示が多いと感じました。
読者の想像の幅は狭まりますが、読者が脳内で同じ映像を見ることには適している本だと思います。
私と美咲の年はほとんど変わりません。
もし同じ病に冒されたとき。
私ならどうするかなと、悩みました。
同じ答えを辿るのかなあ……?
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