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地方進出するのは良いが、東京の呼吸そのままだと地域人材を潰しかねない問題

東京などの大都市の企業の、地方進出が盛んになりつつあります。

大企業の地方支社は珍しくありませんが、最近ではスタートアップやベンチャー企業も事業拡大に伴い、地方に拠点を開設したり、人材採用目的で地方に進出する流れも加速してきました。
東京で仕事を経験した人が、地方都市にUターンして就職や起業するケースも増えています。

地方に東京ベースの高収益の仕事、面白い仕事が増える。それ自体僕はとても良いことだと思いますし、個人的にも後押ししていきたいです。一方で、さまざまな課題も浮き彫りになってきています。

その一つが、東京から赴任したマネージャーやリーダーと現地採用者のギャップです。

東京でバリバリ進めてきたマネジャーやリーダークラスの人たちが、さも当たり前のように「東京の呼吸」(スピード、コミュニケーションの仕方、タスク粒度、キャリア観など)で仕事を進める
それが、現地で仕事をしてきた人の呼吸と合わない。どちらが良い悪いの話ではなく、ギャップが存在するということです。いままで育ってきた環境、働いてきた環境、コミュニケーションの仕方、キャリア観などが違うのだからギャップはあって当然です。

ところがこのギャップを放置したまま(あるいは気づかずに)突っ走ってしまうと、これがうまくない

東京本社の呼吸だけで突っ走ってしまうのは危険

最初は頑張ろうとして東京の呼吸についていっても、やがて疲れて心が折れてしまう現地採用者もいます。
それだけは何としてでも避けなければなりません。企業としてあるまじき姿ですし、レピュテーションリスクを負うことにもなります。

地方進出・地方採用を進める際、企業組織は以下の3つの対策をとる必要があると僕は考えます。


1.マネジメントレベルを上げる(多様性理解力・対応力向上含む)

異なる地域間、異なる職種間など、カルチャーや呼吸が異なる人たちと共創する場合、マネージャーやリーダーにはより高いレベルのマネジメントが求められます。今回のケースでは、東京で東京近郊のメンバーだけと仕事をする場合よりも、マネジメントのレベルを上げていかなければならない。
(多様性理解、他者理解、仕事の粒度や業務量調整、丁寧なコミュニケーションやフォロー、合意形成、共創力向上など)

最悪なのは、仕事力(目先の成果を出す能力)は高いが、組織や人を育てた経験や資質がない人がマネージャー/リーダーになってしまうケース。目標管理オンリーで東京本社だけの「べき論」でメンバーを追い込んでしまう。メンバーはもちろん、マネージャー/リーダー本人も気の毒です。

マネージャーやリーダーの育成やフォローアップ(メンタリング、スキル育成など)にも組織は投資をしてください。

2.業務目標、事業目標のレベルを下げる

目標レベルを下げる(「いったん下げる」も含む)マネジメントも重要です。
メンバーが疲弊したり、心が折れてしまっては元も子もありません。持続可能ではない。東京ベースの、バリバリの業務目標や事業目標をいきなり課すのは無謀すぎるかもしれません。
東京と現地の呼吸のギャップの存在を言語化しつつ、いきなり高い目標を掲げない(疲弊させない)、2年~3年スパンで慣れによる習熟効果を織り込みつつ、計画的な人材育成もしながら立ち上げていく。計画的なソフトランディングも要考慮です。

また、バリキャリではなく「もう少し余裕を持ってはたらきたい」人もいることでしょう(そのようなキャリア観に変わる人もいます)。
キャリア観にあわせた、制度や仕事の仕方のバリエーションもそろえていきたいところです。

3.育成に時間をかけて投資する

メンバーのスキルアップも極めて重要。
仕事の進め方、コミュニケーション能力、ロジカルシンキング、共創力など、それまで現地の企業では学ぶ機会や実践する機会がなかったケースも十分想定されます(東京の大企業と異なり、人材育成にまるで投資しない企業も地方では少なくないです)。

中には「会議で発言したことすらない。なぜなら、私がいままでの職場で経験した会議とは、上位の役職者だけが話をする場だったから」と言う人もいます。そのような背景があることも理解(または想定し)、まず自分の意見を持つ場を体験する、意見を組み立てる経験をするところからはじめる必要があるかもしれません。

「無経験」なだけであって、決して「無能」ではない。そういう人もたくさんいます。拙速な判断は、どうぞなさらないでいただきたい。

育成に投資する。即の成果を求めず、業務での実践を通じて成長していく。
その姿勢も重要です。たまたま今まで機会がなかっただけで、スキルを身につけ活用機会を増やせば伸びる人はたくさんいます。


これらのギャップを発見、および異変を発見するためにエンゲージメントサーベイなどの定点観測をおこなうのも良いでしょう。変化をとらえて、対策をとる。その仕組みづくりも大事です。

また、地域人材の事情を良く分かっている仲介役、メンター役を顧問・アドバイザーとして起用するのもありでしょう。

・(東京から赴任してきた)マネージャーやリーダーの壁打ち相手、悩みの相談相手として
・現地メンバーの相談役、あるいは本人が言いにくい(または言語化できていない)心の声の代弁者として

外部メンター(顧問・アドバイザー)の主な役割

東京の呼吸の仕事や成果の出し方にチャレンジしたい思いは強いけれども、体がなかなかついていかない……すなわち、心はついていっても体がなかなかついていかない人もたくさんいます。途中で疲れてしまう人も見てきました。そのような悲しい景色を、僕はなくしていきたいですし、心地よく持続可能な地域共創の景色を創っていきたいのです。

共創とは一方のやり方を押し付けることではありません
お互いが変わらないと、共創も地方創生もうまくいかないでしょう。
(ダイバーシティ&インクルージョン)

相手や地域特性を丁寧に理解しながら、焦らず時間をかけギャップを解消していきましょう。