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バンジージャンプ

この時期は、お天気だとウンザリする
花粉症にウンザリしてるわけだけど
まあ、天気に罪はない、仕方ない

外に出たくなかったけど
約束だから、仕方ない

アパートの下の階では、先ほど
新しい住人の引っ越しが終わった模様
さっそく、表札を見てみる

木場

キバなのか? コバなのか?
まあいいか、人の名前に罪はないから
これも、仕方ないなあ

近くの横丁の古本屋
黒ねこが寝ている
本の上で、珍しく
本好きのわたしとしては
本の上に横になるなんて
と、言いたい気持ちもあるのだけれど
いかんせん、ねこの言葉を話せない
仕方ないので眺めることにする
まったく、昼間っから寝てるなんて
けしからんヤツめ

手を伸ばしてみる
ねこの耳が、ぴくっ
ちょい動く
フフッ
いいもの見れちゃった

昨日の夜、考えたこと
死んじゃいたいけど痛いのはゴメンだ
あー、なんて、わたしらしいんだ
そんなんだから、いまだに生き長らえてんだよ
まったく、仕方ないな

そんなことを、突然、簡単に思っちゃう自分に
ひどく驚きもしちゃった
あまりに驚きすぎると、逆に自分でも
アレッ?
って思っちゃうくらい、ひどく冷静に対応できたりして
ああ、いま、なんかわたし、ヘンに冷静だなあ
なんて、人ごとみたく
あるいは、俯瞰的に
そんなふうに自分を分析できたりする

そうは言っても、そんなようなこと、そうそうあるはずもなく
経験したことなんてないかなあ
っていう人だって、珍しくないのかも

そんなもんですか?

ああ、この人は、経験したことがない側かあ
だからって、軽蔑とか、そんな感情はない
ただ単に、経験したことがない、それだけのこと
バンジージャンプをやったことがない
そういうのと一緒だ
バンジージャンプ、二回、やったことあるんだなあ、わたし

島を離れて、上京、もうすぐ十二年
三十を前に、いろいろ考えちゃう
もう少し、と思う
けど、できるのかな、やれるのかな
とも考えちゃう

最近、知り合った人からの誘いで
駅前で、募金活動のお手伝い
募金をしたことはあった
お金を入れるとき、ちょっと恥ずかしさがあった
けど、箱を持っての募金活動は、なかった

バンジージャンプみたいなものかな

最初にお金を入れてもらったとき
なんだか恥ずかしさがあった
案外、できるものだなあ
なんて、わたしは、声も出さず
ただただ、立ってるだけなんだけど

バンジージャンプみたいなものだったなあ

もう少し、ここでやってみるかなあ
ちゃんと飛べんじゃないかなあ

募金活動の帰り、いつもの街の景色が、少し違って見えた
そんな気がした

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