そういう家
パスタ、とは言わず
スパゲッティー、と言う
そんな家だった
嫌だったのではない
ただ、そういう家だった
というだけ
そのスパゲッティーには
赤いのが、かかっているのが常で
白だったり
黒だったり
緑だったり
透明だったり
そういったことは
一度もなかった
嫌だったのではない
ただ、そういう家だった
というだけ
中学のとき
家が建てかわった
新しい家になって
母親が、急に、パスタ
と、言うようになった
母親が言うところのそのパスタは
ぜんぜん、赤くなかった
別の日には、いままで
出たことがなかった、グラタンなるものが
テーブルに並んでいたりした
嫌いだったのでも
美味しくなかったのでもない
新しくなった家は
きれいで、住みやすかった
けど、以前のような
そういう家
ではなくなってしまったようで
ちょっぴり、さみしさがあった
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