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鉱物備忘録

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今まで集めてきた鉱物についてただ語るだけのエッセイ。
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2020年3月の記事一覧

No.25 シナバー

No.25 シナバー



日本では辰砂(しんしゃ)と言う名の方がポピュラーだろう。
赤い岩のような状態で産出することが多く、不透明な個体がほとんどなのだが、この標本は小ぶりながらも透明感のあるかっちりとした結晶である。シナバーはとにかく目で確認できる大きさの結晶で産出することが少なく、このシナバーも小豆ほどの大きさしかない。それでも、大きくしっかりとしている方なのだ。そのため割と近くでこのシナバーの標本が売られていると

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No.24 アパタイト

No.24 アパタイト



ライムグリーンのアパタイトだ。クラックやインクルージョンは多めだが、透明感がありフレッシュな印象がある。
一般的にアパタイトと言えばブルーのイメージが強いようだが、私はどちらかと言うと今回のようなライムグリーンやイエローのイメージが強い。
ずっと何でかなぁと思っていたが、最近ようやくその理由が分かった。
私が鉱物集めを始めたのは大学三年の頃。それまで鉱物について無知だった私は少し知識を身につけ

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No.23 ラピス・ラズリ

No.23 ラピス・ラズリ



ラピス・ラズリは正確に言うと鉱物ではない。ラズライトをベースにソーダライトやダイオプサイトなどを含んだ岩石である。
今回のラピス・ラズリはまるで夜空のようなルースである。白い点々はカルサイト、金の点々はパイライトだ。一般的にはもっと青味が深く濃いものが一級品とされるが、私はこのぐらい斑点が多い方が岩石らしくてあざとくなく好みである。特にパイライトの金色はラピス・ラズリの青によく映え、まるで夜に

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No.22 パイライト

No.22 パイライト



一見作り物のように見えるが、実は自然の中で採掘された正真正銘天然の鉱物である。
その証拠に、表面はぱっと見つるつるしているように見えるが、ルーペで拡大してみてみると細かい鱗のような跡が残っている。恐らく結晶が成長した時にできたものだろうと分析できる。仮に人工物ならこのような無意味で不要な細工はしないはずだ。
そう考えると「自然ってすげぇな」と常々思う。私は全鉱物の中でパイライトが一番好きだ。自

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No.21 クリソベリル

No.21 クリソベリル



キラキラ輝く太陽のようなクリソベリル。光を当てるとフレッシュな輝きが満ち溢れてくる。少しインクルージョンが入っているがそれも輝きに華を添えていてまた良い。
クリソベリル。「ベリル」という名前がついているが、ベリルとは全く別の鉱物である。化学組成も違うし硬度も屈折率もベリルとは異なる。どちらかと言うとベリルよりコランダムに近い鉱物だ。
じゃあ何で「ベリル」という名がついたのか?
理由は簡単、発見

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No.20 スピネル

No.20 スピネル



情熱的な赤が凛々しいスピネル。光に照らすとその赤がより強調され、幻想的な神々しさも感じられる。大きさが大豆ほどで、当時900円で買ったものだ。
スピネルは200年前まで宝石として認知されておらず、特に赤いスピネルはルビーとして流通していた。化学組成がコランダムに似ている上にコランダムより美しく鮮やかな原石が採れやすかったため、勘違いしやすかったようだ。
のちに「スピネル」が鉱物として認知された

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