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No.25 シナバー

25.シナバー

日本では辰砂(しんしゃ)と言う名の方がポピュラーだろう。
赤い岩のような状態で産出することが多く、不透明な個体がほとんどなのだが、この標本は小ぶりながらも透明感のあるかっちりとした結晶である。シナバーはとにかく目で確認できる大きさの結晶で産出することが少なく、このシナバーも小豆ほどの大きさしかない。それでも、大きくしっかりとしている方なのだ。そのため割と近くでこのシナバーの標本が売られていると聞いた時には、すぐに飛びつきその店に向かって購入したのをよく覚えている。そのぐらいこのようなシナバーの標本は貴重なのだ。
ちなみに、周りにある白い鉱物はカルサイトだと思われる。周りの母岩やカルサイトと比べると結晶の小ささがよくわかる。
このシナバーは赤みが強く、光を当てると赤みが増して燃えているように見える。
個人的に、私はシナバーを見ると頭の中でポルノグラフィティの「メリッサ」が流れてきて、荒川弘氏の漫画「鋼の錬金術師」を連想してしまう。
何故か?
元々シナバーは中国で古くから薬として使われてきており、粉末にして飲んだり防腐剤に使われていたりしていた。
その後シナバーは不老不死の薬の原料として使われるようになり、「賢者の石」と呼ばれることもあったという。
賢者の石、と言えば。鋼の錬金術師で主人公のエルリック兄弟が作中追い求めていたアイテムである。もちろん、それがシナバーとは別物だとはわかっているが、アニメを見ていた身としてはどうしても意識してしまう。だから私はシナバーを見るとアニメ一期のオープニングテーマである「メリッサ」が自然と頭に流れてきてしまうのだ。
もちろん、シナバーを使って等価交換はできない。少なくとも私は無理だ。
ちなみに、シナバーは熱すると水銀が気化した状態で発生する。これを吸い込むと最悪死ぬので絶対にやってはいけない。余談だが、先ほど「薬として粉末にして飲んだ」と言う事を書いたが、個体のシナバーを飲み込む分には問題はないらしい。でもよい子は真似しないことをお勧めする。
更にどうでもいい話だが、私はしばらくシナバーの和名「辰砂」を書くことができなかった。そのためそれがバレないように話すときには「辰砂」、スマートフォンや手で書くときは「シナバー」と使い分けていた。今は「十二支の『辰』に『砂』」と覚えているので余裕で書ける。スマートフォンで「しんしゃ」と打っても一発変換できないので、覚えておくとよいだろう。

【補足】
母岩:鉱物の周りについている岩のこと。母岩付きの標本は人気が高い。

【参考書籍】

「世界で一番素敵な鉱物の教室」
宮脇律郎 監修
三才ブックス 2018年

「鉱物擬人化図鑑」
イカロス出版 2018年

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