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『アルゴリズムフェアネス』 つづき‥

尾原和啓さんの『アルゴリズムフェアネス』について、前回のnoteでは、様々なアルゴリズムが働く現代では自由でいるためにフェアネスを志向しなければならない‥という話をまとめさせていただきました。

ただ、フェアネス(公平性)は視点が違えば内容も異なるもので、常に一つではありえません。国が異なれば対応も異なっています。

GAFA(Google.Apple.Facebook.amazon)、ITそのものに対する諸外国の対応とそれぞれフェアネスの視点の概観が興味深いものでしたので、まとめとして引用させていただきます。

【中国】中央集権で不幸の最小化を図る

中国政府は海外のプラットフォームに厳しい。
その理由は

■海外の情報から国民を遮断するため
■国内のBAT(アリババ、バイドゥ、テンセント)をはじめとするプラットフォームを保護するため

巨大IT企業に対し、中国はGAFAなど外資系を締め出す一方、国内企業を馬車馬のように走らせ、その富とデータをとり上げる戦略をとる。

中央集権によって大国になりえた中国は、BATの上に君臨することで、ITの世界も同じ手法で切り開こうとしている。

【ヨーロッパ】反省から求める自由とフェアネス

ヨーロッパはGAFAの台頭に対して、最も厳しい態度で臨んでいる。その怒りのポイントは、「国家と個人の利益を勝手に吸い上げるな」と言うことに尽きる。

一見すると、国による保護主義にも見えかねないヨーロッパの動き。しかし、この裏には、過去の自由とフェアネスに対する洞察がある。個人情報意識が高い背景には、過去のナチス台頭への反省があるのだ。

ヨーロッパは、不利益を被る人を出さないこと、そして対価を要求することに注力している。

【アメリカ】自由と独立、常なるフェアネス競争

個人の自由と独立は国家より上位にあるというのが建国の精神。
インターネット上で情報をやり取りできるという事は情報が筒抜けになると言う事でもある。
これは権力者によって容易に監視されることを意味するが、それを是としないのがアメリカの国民性。
そこでサイバー空間をめぐる監視と独立の攻防戦が行われる。
アメリカにおいてハッカーは不正を働くものではなく、逆に「歪みを見たら直さざるを得ない人」を指す。アメリカから見たら内部告発者による革命権の行使なのだ。

国内で常にフェアネス競争を繰り広げてきたのがアメリカ。

【エストニア】IT立国の最先端を走る

シンガポールのような公益と金融のハブではなく、エストニアは今や世界市民の「信用」のハブになろうとしている。
その手段はブロックチェーン技術。
エストニアは電子居住権と呼ばれる制度を設けている。

国籍を問わず申請者に対してIDを発行し、電子的なエストニア国民になることを認めている。国民になれば、会社も簡単に作れる。その会社間どうしの貿易はエストニア国内での処理となり、国際的な従来の手続きより簡略化できるというメリットがある。

エストニアはインターネット上の貿易のハブになろうとしており、いわばGAFAと同列のプラットフォームを目指している。

見方を変えれば私たちはGAFAを利用するような感覚で国家を選べるようになったと言うことです。

以上、中国、ヨーロッパ、アメリカ、エストニアのGAFAまたITそのものに対する対応をまとめさせていただきました。四つの地域、いずれも個性が出ていて面白いです。

ちなみに、本では日本についても触れていますが、日本は現状何も対応を打ち出していないに等しいようです。エストニアには学べることが多い、と尾原さんは述べられていました。

尾原さんのこの概観は歴史的、地政的、文化的など様々な文脈から語られていて、学ぶところが多かったです。自分の日常からは触れることのない情報ですが、知っていきたいと思いました。

知ったところでどうするのか、と自分に突っ込みたくもなるのですが、何事も知ることから始めていきます。

ここまでお読みいただきありがとうございました。



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