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卒業式 先生から最後に贈られた言葉

みなさんは卒業式の日のことを憶えていますか?
私は今も、卒業式の日に自分の席に着いて、そこから見た最後の教室の景色と、その時の担任の先生の姿を鮮明に憶えています。

その先生は、小学生のお子さんがいらっしゃる女性の先生だった。
毎日欠かさずB4サイズ1枚分のクラス通信を作って配っていた。
(毎日違う内容を、空き時間に書いて印刷して終礼で配る。今想像しても本当に大変な作業だったと思う)
生徒一人ひとりと向き合い、やんちゃな男子生徒にも真っ向からぶつかっていくような、とても熱くて、タフで、強い女性だった。

卒業式が終わり、各々の教室に戻ってのホームルームが行われた。
教室に入ってきた先生の首には輪っかになった紅白のリボンが提げられていた。そして先生からの最後の挨拶。

紅白のリボンを手に持ちあやとりをしながら、
「みんなはあやとりの『ゴムゴム』って知ってる?」
(技の名前に地域差はあるかもしれないが、あやとりの紐が伸び縮みする技のひとつが『ゴムゴム』である)

「私の娘は、生まれつき片方の手の指が欠損していて、上手くあやとりができません」

今までお子さんの話をあまり聞いたことがなく、いつも強そうな先生の姿からは想像もしない内容に驚いた。
そしてその後に語られたのは、指が足りないためにあやとりが上手くできず、同級生にからかわれたこと。それが悔しくて自分で練習して、指が足りなくても「ゴムゴム」ができるようになったことだった。

「みんなはこれからそれぞれの進路に進むけれど、その先で困難にぶつかったとしてもできないことなんかない」

先生はあやとりの話を例に、そう私たちに伝えてくれた。
これから高校、そして大学や社会に出て行く私たちにとって、それは強いメッセージを持った言葉だった。

中学を卒業し、私は偶然にもその先生の母校である高校に進学した。
その後、大学に進み、就職してもうだいぶ経つが、今でも時々、あの日の先生の言葉を思い出す。夜一人でドライブしている時や、仕事面白くないし転職したいなとか、このままでいいのかなと考える瞬間だったり。

先生、元気かな。あの時の先生の言葉、まだちゃんと憶えています。
人生に迷う瞬間、いつもそっとあの時の言葉が私を応援してくれているよ。


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