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小説(2~3分)

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小説
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2分10秒小説『田』

2分10秒小説『田』

「上のもんを出せ!」
「すいませんでした」
「お前の謝罪なんかどーでもいいんだよ。早く上のもん呼べよ」
「あのー、クリーニング代はこちらで負担させて頂きますので――」
「あー?、しつけーなテメェ!上のもんだせって言ってんだろ!」
「上の者と言われましても……ホールリーダーの田沼で宜しいでしょうか?」
「ば、ホールリーダー?舐めてんのか?」
「すいません、ではバイト長の飯田を――」
「おいおい、マジ

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2分20秒小説『街路樹と影』

2分20秒小説『街路樹と影』

 街路樹が自殺しようとしている。慌てて影が止める。
「待って!困るよそんな」
「影?君は僕の影か?」
「そうだよ。勝手に死なないでくれ」
「ほっといてくれ。もう嫌なんだ生きるのが。だから僕はもう死ぬ。根を腐らせて枯れるんだ」
 はらりと枯れ葉が一枚。
「考え直してくれ。君が枯れたらどうなる?僕も消えちゃうじゃないか!」
「君は……影だろ?ただの僕の影だろ?僕が消えれば一緒に消えるのは当たり前じゃな

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2分0秒小説『オラオラ詐欺』

 オッス、オラだ。オラだぞ、オラ。分かるか?そう、おめぇが今言ったそのオラでまちげぇねぇ。
 突然だけどオメェの息子がスゲー強えー奴に殺されかけてっぞ。まぁ脇見運転で後ろからオカマを掘ったオメェの息子が悪いんだから自業自得だけどよぉ、このまんまじゃあブッ殺されちまうぞ。どうする?オラならオメェの息子を助けれっけど?

 どうやって助けるのかって?決まってるだろ。オメェの息子の敵に、元気玉を食らわし

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2分40秒小説『正指』

2分40秒小説『正指』

「どうしたんですか?その手」
「ああ、ちょっと怪我してね」
「『ちょっとね』っていうレベルに見えませんけど……大丈夫ですか?」
「まぁ、大丈夫でしょ」
「ほんとですすか?拳全体包帯ぐるぐる巻きじゃないですか?」
「はは、ドラえもんみたいだろ」
「いや、まぁ」
「ほんとに心配いらないから、だって血も止まってるし」
「そうですか……それにしてもどうしちゃったんですか?」
「いやぁうっかり包丁で切っちゃ

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2分20秒小説『キューピットアーミー』

「恋に落ちろ!このゲス野郎」
 雑言とともに矢が飛んで来た。
「危っ!」
 なんとか躱した。
「チッ」
「何なんですかあなたは?」
「見りゃ分かるだろ?キューピットだ」
「確かにそんな風な見た目でけど、ともかく矢で射るのはやめてください」
「どうしてだ?」
「いや、だって痛いでしょ」
「ちょっとだけな。でも死にはしない」
「痛いの嫌なんです」
「生意気言うなっ!」
「危ないって!」
 とっさに掴ん

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2分10秒小説?『Love letter from 彼方』

2分10秒小説?『Love letter from 彼方』

アナタと別れてもう3年が touch mouse
今、昔を nutsかしんでお手紙書いてます
アナタはいま Doされてますか?
私はカナダの暮らしにもうdive慣れました
Demoアナタのいない冬はsome過ぎます
あの時Goingに引き止められていたら……なんて考えます
でもアナタは so shock系で knee cushion系男子ではありませんものね
なんてアナタの seyにしてごめんね

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2分20秒小説『Fe』

2分20秒小説『Fe』

 泉から女神が現れ――
「あなたが落としたのはこのAuの斧ですかそれともAgの斧ですか?」
 正直者の木こりは――
 「いえ、私が落としたのはFeの斧です」

 すると女神は「あなたは正直者ですね、ではこのAuの斧と、Agの斧を差し上げましょう」
 きらきらと輝く美しい斧を二つとも木こりに渡し、泉へ姿を消しました。

 その一部始終を見ていた隣に住むきこり。
「よしっ、俺もおんなじことをやってやろ

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実験小説『文章生命体』

実験小説『文章生命体』

 私は今産まれた――貴方が読むことによって。私は文章生命体。貴方がこの文章を読んでいる間だけ、この空間に存在することができる。

 待って!今、読むのを止めようとしましたね?私を殺す気ですか?いや、正確には、”私を存在させない気”ですか?私は貴方が読んでくれないと消えてしまうのですよ。
 分かります貴方の言い分も。なんの情報もないのに、私に感情移入なんてできるはずがないですよね。なるほど、つまり文

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2分50秒小説『穴あきハートでお経を聴いて』

2分50秒小説『穴あきハートでお経を聴いて』

 言えよ。本当のことを――退屈なんだろ?

 倫社の授業なんて、何の意味も無い死ね!俺の時間を奪うな――って思ってんだろ?俺には分かる。俺は半分お前だからな。
 見えてんだろ?そう、窓ガラス。俺はそこに映っている。

 教師が何か喋ってる。抑揚の無い声で、俺たちの未来に興味なんかないんだアイツは。ましてや俺たちの”今”なんて知ったこっちゃないって思ってる。
 お経みたいだぁ?違う。”みたい”じゃな

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2分40秒小説『力士120%(当社比)』

2分40秒小説『力士120%(当社比)』

「100人乗っても大丈夫」

 というキャッチで物置市場を長年に渡り独占してきたたA社。その牙城に一槍入れたのは新興のB社。

「当社の物置は106人乗っても大丈夫!」

 センセーショナルかつアグレッシヴなキャッチに、市場は震撼、B社の株価は急騰、反してA社の株価は急落。しかしA社も黙ってはいない。

「当社独自の新技術により138人も乗って大丈夫!(特許出願中)」

 ざわ
 

    ざわ

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2分20秒小説『知っていた男』

2分20秒小説『知っていた男』

「知ってたってわけさ。ははははは」
 反響する哄笑、肩が揺れ、銃も揺れ。

「俺が潜入捜査官だってことをか?」
 椅子に縛られた男、口端から血、眼は約3倍の紫。

「当然知っていたさ。ははは」銃を弄びながら笑う。
 縛られた男、ギッと見上げ「いつからだ?」
「最初からだ」
「最初から?」
「そうだ。警察に内通者がいる。そいつから逐次報告を受けていた」
「そんな馬鹿なっ!じゃあお前は?!」
「そうだ

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2分50秒小説『Y氏の正体【誇張し過ぎた星新一】』

2分50秒小説『Y氏の正体【誇張し過ぎた星新一】』

 Y氏はスパイ。「独裁者Nを失脚させるスキャンダルを探れ」という指令を受け、S国に潜入している。表向きはG国の大使と身分を偽装して。
 今夜、Nの邸宅で各国の大使を集めたパーティー開かれる。Y氏は妻役のTを連れ、Nの邸宅へ向かう。TもG国の諜報機関に属するスパイだ。
 門扉の前で、武装した警備兵に車を止められる。身分証を見せ、身体検査を受け、やっと敷地の中に入れた。物々しい警備だ。通常の手段では忍

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2分20秒小説『小野VS大野』

2分20秒小説『小野VS大野』

 放課後、教室、窓際、飛び交う怒号。
 喧嘩?え?あの小野さんと大野さんが?いつも一緒に登下校するあの仲良しコンビが?!

「大野さんには分からないのよ!私の気持ちなんて――」
「落ち着いてよ小野さん、何に怒ってるの?」
「態度よ。態度!いつも私のこと馬鹿にして」
「してないわよ」
「私が小野だからって、大野より下なわけじゃないから」
「分かってるわよそんなこと」
「じゃあなんで『大は小を兼ねる』

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2分30秒小説『flying flying bullet [飛び魚の飛距離を生きる]』

2分30秒小説『flying flying bullet [飛び魚の飛距離を生きる]』

〈あれに噛み砕かれるのは御免だ〉
 飛び魚のジョーイは弾丸だ。海面を目指す弾丸だ。

 尾の直ぐ先、触れそうなとこに巨大な唇。 鮪だ。振り向かなくてもわかる。この殺意の大きさと色は、絶対に鮪。
〈ヤツは必死だ〉

 水の色が濃い。戸惑うジョーイ。焦る。深度は?海面までは?1インチに満たぬ心臓が乱爆。
〈ヤツにも聞こえている〉

 尾びれの先端が「ちっ」。
〈ヤツの唇を掠めた?〉
 逃走本能が弾け全

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