- 運営しているクリエイター
#散文詩
散文詩『陽が差して敬啓。』
ボールペンの金属球は、酸化アルミニウムという素材で出来ているらしい。刺さるくらい見つめ、紙に着地させる火星の表土。
金属球が紙に押し付けられる。この段階ではまだ乾いている。誰かの眼球のように。ペン先が水平に動く。転がる。
細透明なプラカートリッジ、半透明に透けて見える――が、金属球の表面にインキを受け渡す。
銀色に見えるが黒く濡れている。誰かの眼球のように。転がる。紙に線が現れる。カーチェ
散文詩『さらばジョンへ伝へかし』
言葉の刃が触れる瞬間女の子は瞼で真剣白刃取りを試みた。
けど死んじゃったよ。まつ毛が鋼じゃなかったから。
僕ら電子言語をマスターしてる。で、それを石みたいに掴んで殴り合っている。まんまネアンデルタール。プロメテウスの飛び降り案件。
和して目に映る色とりどりの花、愛しい人の笑顔、人生を変えた絶景、待ち受けに張り付いた画像がまだ残像のうちに、タップ、ピンチ、スライド、呪いの言葉で画面を満た
散文詩『モラトリアム定食』
時が止まった。
窓から差し込む光、舞う埃の粒子をプリズムに、お盆の上に色彩を付与する。
サバの塩焼き、その焼け爛れた鱗の連なり、滲んだ脂が、背骨の辺りから差し上る太陽の微光を受け、冥王星にて未だ命名されぬ丘陵の佇まいで皿の上に転がる。
箸の先に十穀米が乗っている。その一粒一粒、小規模なビッグバンを準備している生命の核のよう――
「こんな莫大なエネルギーを口中に受け入れて、僕は無事でいら