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或虎
2024年1月24日 19:55
「くじ引きは今日の17時で受付終了です」「いや、そこをなんとか」「すいませんね。ルールだから」「そんなこと言わないで、たったの10分じゃないですか。お願いしますよ」「いやだから、ルールなんで」「こんなに集めたんですよ!日用品から何から、わざわざこの商店街まで出向いて買い物したんです。このくじ引きの為に」「それは有り難いですけどね。ルールを曲げるわけにはいかないので」「分かりました。じ
2024年1月29日 23:30
「――というわけで、僕は僕を殺したんだ」「朝食に何を食べたか告げるような口ぶりだな」「マフィンだよ。あとたっぷりのスクランブルエッグ」「ふざけるなよ」 科学者は眼鏡を外し、眉間を強く摘まんで「ピアニストという人種は、決して人を殺さないものだと思っていた」ため息を吐く。ピアニストは口角を上げ「言ったはずだ。1mmでも僕より劣っていたら処分するって」「自分で自分を殺すなんてどうかしている。ど
2024年1月8日 09:06
「機種変更したいんですけど、カタログとか見せてもらえませんか?」「有難うございます。しばらくお待ちください」 ショップのお姉さんが、カタログを持ってきた。「差し支えなければ、おすすめの機種をご紹介させて頂いても宜しいでしょうか?」「じゃあ、お願いします」「まずは、こちらですが、F15-E、通称イーグルストライクです。マクドネル・ダグラス社の開発した戦闘爆撃機ですね。第4.5世代ジェット
2024年1月8日 09:58
円形水槽の外縁には、強化ガラスで仕切られた四つのスペースがある。それぞれに巨大な魚影。雷鳴、屋外水槽の水面に激しい矢雨が無量に刺さる。「俺の創りだした魚が勝ち残るだろう」 と、色付き眼鏡の生物学者。「あんさんの?あのでっかい鰯みたいな魚が?笑わせまんなぁ」 泣きぼくろの生物学者が言った。「ふふっ、あたいの魚が一番だよ」 紅一点、どぎつい口紅の生物学者。「ぼ、僕の魚が、最も優れてい
2024年1月8日 17:25
「俺はウンコしか描かん」「それは分かっている」「じゃあ帰れ」「頼む、俺の話を聞いてくれ!」「散々聞いた。もう十分だ。なんと言われようと俺は変わらん」「何故だ?どうしてお前、こんなことになっちまったんだ?美術学校に在学中のお前は違った。”佐伯祐三の再来”と称された天才画家であるお前が、どうしてそんな画材ばかりを描くようになっちまったんだ!」「画材なんてい方はよせ!ちゃんとウンコと言え!俺