愛着障害は死に至る病⁈ ②
☆愛着障害を抱えた子どもたち
現代の方が愛着障害で病まれている大人が多くなっているのは一重に昔は愛着障害を抱えた子ども達は確実に長生きできなかったからにほかならないと作者は言っています。
1928年ペニシリンが発見され医療の進歩によって子ども達が生きながらえることができるようになりました。
けれども現代では昔ほど里子はありませんが、普通の家庭で育った子ども達が愛着障害を抱え、1960年あたりから年々増加しているようです。
愛着は世話をすることで生まれるもので、手間暇かけて可愛がらなければいくら経済的に暮らしを支えても愛着は生まれないのだそうです。
☆太宰治
太宰治も深刻な愛着障害をかかえていたといいます。
大地主の家に六男として生まれましたが母親は太宰の誕生を望まずすぐに里子に出しました。
人一倍親の愛情を望んだようですが願いは叶えられず自暴自棄になった太宰は、東大在学中に心中事件を起こし逆に親に縁を切られてしまいます。
その後も酒と麻薬に溺れ何度も心中未遂を起こし結局は玉川上水で不帰の人となります。
遺書とも言われている「人間失格」にも、他の人と心から打ち解けられないなど他者との関わりの違和感を拭いされずにいる自分とそれを見ているもう1人の自分がいると言っています。
☆三島由紀夫
その太宰治の生き方を批判して対抗意識を燃やしていた三島由紀夫もまた重度の愛着障害でした。
自分は酒や麻薬に溺れたり女性に溺れたりはしないと規則正しい生活を守り剣道などで体も鍛えていました。
けれども結局自死の道を選び愛した男性に首を落とされるということになりました。
三島由紀夫も母親に可愛がられなかったのですが祖母に溺愛され育ちました。
兵隊試験に落ちるほど虚弱な体質でしたが、誰よりも優先され一家の惣領息子として育ったので自己肯定感や有り余る自信は育っていったようです。
後に母親と暮らすようになりましたが良い親子関係は築けなかったようです。
その分勉学に励み広辞苑を全て暗記、東大法学部から大蔵省というエリート街道を進んでも母親から愛情を受けられなかった深刻な愛着障害を抱えたままでした。
☆エドガー・アラン・ポー
エドガー・アラン・ポーは2歳の時母親と死別しすぐに父親は蒸発してその後亡くなりアラン夫妻の養子になりました。
裕福な家であったので充分な教育を受けられたのですが、過保護に金品を与えられ過ぎたり結局は子どもの頃の養育者の交代や不在、愛情飢餓と過剰な甘えのアンバランスで愛着障害を引き起こしていました。
母親と似た従姉妹と結婚した短い期間だけ文学に専念できて傑作が生まれたそうです。
その妻が若くして亡くなってしまい、かつての恋人と再会して結婚しようと思った前日に酒を飲み過ぎて亡くなったそうです。
☆夏目漱石
夏目漱石は心身症と聞いたことがありましたがやはり愛着障害に苦しんでいたようです。
漱石の母親は年を取ってからの子どもだからと厄介者扱いしてすぐに里子に出してしまいました。
その家であまり大切にされていないのを見た姉が可哀想だと一旦は引き取りますが、またすぐに2歳で里子に出されてしまいます。
養子に出された夫婦は仲が悪く漱石にも恩着せがましくしていました。
行ったり来たりの養育者の交代、まして養父母にも可愛がられなかったら愛着障害を抱えてしまうのも無理ありません。
ロンドン留学では幻聴や妄想に悩まされて、結婚してからも妻子への暴言は日常茶飯事で創作活動だけが救いだったようです。
結局数々のストレスから胃潰瘍も悪化し命を奪われることになりました。
作家の人生が壮絶だという話は多く聞いたことがありましたが、子どもの頃の経験がこんなにも人間形成に影響を及ぼして自分を死滅させてしまうほどの心の病気があるのだと初めて知りました。
けれども数々の名作を残している作家達はそれだからこそ命がけで創作活動を続けていたのかと思うと作品ひとつひとつ丁寧に読み返してみたくなりました。
著者の岡田尊司さんはそれでも愛着障害は克服できる!と記しています。
興味のある方は是非読んでみてください。