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「アンラーニング」(学びを手放す)感覚が大切

知識や情報を得るうちに、自分の中に根づいてしまうモノや人への見方。
先入観、固定概念、思い込み…。
賢くなってるつもりで、微妙にやっかい。

私は、特にインタビューで対峙するとき、相手の職業や属性に惑わされず、なるべくまっさらな状態で話を聞くように心がけている。
著名人の場合は、公表しているプロフィールや実績という「表向きの情報」を一通り確認するものの、その情報で判断したりせず、質問のヒント程度にしておく。

上辺をなぞった「知ったつもり」は、相手の話を聞くときには邪魔になることがある。
気づかぬうちにバイアスがかかり、その勝手な「決めつけ」が、相手にとっては、幅を狭め窮屈なものになってしまう。

「人としてフラット」に対話する。
まずはこれが相手との信頼関係の第一歩だと思っている。

最近、音楽療法士・けるぼんさんと音声対談を通して、さらに確信した。

学びを外す「アンラーニング」という考え方

けるぼんさんとの対談で初めて知った「アンラーニング」(unlearning)というワード。
日本語訳では「学びほぐし」、意識的に知識をいったん棄て去り学び直す、という意味。

けるぼんさんによると、たとえば楽器の演奏においては、「正しく演奏」し「評価される」という過程を経ることが多く、いつのまにか「この楽器はこのように奏でなければならない」という固定的な「正しさ価値基準」を持ってしまう。
それが「自由さ」を奪い、音楽療法においては弊害になるため、学んできたものを外す、というプログラムを踏むらしい。

こちら、けるぼんさんとの対談で触れています

「あえて学ばない」ことで「あそび」を持っておく

「アンラーニング」は簡単に言えば、「学びを手放す」ことの体得。
一見矛盾した表現のようだけど、とても的を射ていると思う。
単に、学ばなくていい、学ぶのはやめよう、という意味とは違う。

私が心がけている「知ったつもり」で人の話を聞かない、とも共通しているような気がした。

もちろん「学ぶ」「知る」こと自体は、むしろとても大切。
自分を豊かにしてくれるし、仕事などでは、ノープラン、ノーリサーチで臨めばいいわけではない。

大事なのは、自分が「知っていることが全てだ」とか「正しい」という思い込みや、評価基準を持たないことだと思う。

思い込みは、「配慮」や「想像力」の欠如につながり、相手への決めつけや窮屈をもたらしてしまう。

自分が知っていたとしても、いったん外す。
とはいえ、自分が得た知識や情報は、なかなか忘れられないから、
それが正しいとは限らないかも?と自分を疑う。

私自身は、インタビューの際、知っていることでも「知らないふり」をして質問をすることもある。
「ふり」というと語弊があるかもしれないけれど、私は「もしかしたら私の認識が正しいとは限らないかも」という余地を残しておく。

そのほうが、相手の話を抵抗なく受け止めやすくなる。

もし自分の「知ったつもり」と相手の話が違ったときに、その余地がなければ、「その話よくわからない、ヘンだよ」と否定的な気持ちが生まれて、それ以降の対話がギクシャクしてくる。
抵抗感の壁は、結果的に相手の口を閉ざしてしまう。

かといって、相手の話に何でもかんでも共感すればいいというわけではなく。
良し悪しや賛否はさておき、フラットに、まずは受け止めたうえで理解できない疑問があれば、それを素直に聞いてみる。
そんな「想定外も入れる余地」=「あそび」を残しておくことが大事だと思っている。

「知りすぎない」ことは、自由な強み

情報を得れば得るほど、学びを手放す「アンラーニング」は必要だと思う。
なまじ今の私たちは、手軽に「情報だけは」得ることができる。
たやすく、うっかり「知ったつもり」になってしまう。

でも私は、実際の現場や生きている人は、計り知れないほどの背景や思いを抱えているもので、その裏側への配慮や想像力が必要だと思っている。
それを踏まえない「決めつけ」や「評価」が、人を窮屈にしている。
情報よりも、生の声、生身の経験。

だからこそ、手に入れた情報や自分の考えに対しては、
・これが全てではない かも
・正しいとは限らない かも
・相手も同じ思い(価値観、認識)とは限らない かも

疑ってみる、いったん横に外すことも大切だと思う。

同時に、「知りすぎない」ことは自由な強みがある。
知らないが故の、自由な発想、着眼点、客観視点、素朴な疑問が生まれて、そこに大きな「気づき」や可能性が潜んでいることもある。

その道の専門ではない者からの質問のほうが、専門的な難しい話がわかりやすくなったり、専門家自身が新たに気づきを得ることはよくある。
私の仕事の本懐もそんなところにある。

子どもが思いもよらない遊びを思いつくように。
子どもの何気ない質問にハッとさせらるように。

アンラーニングこそが、実は「最大の学び」かもしれない。

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