『僕愛君愛』ロケ地マップを作ってみました
『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』『僕が君の名前を呼ぶから』について、小説・映画にまたがったロケ地マップを勝手に作ってみました! 随時更新していきます。聖地巡礼のお供になれば幸いです。
作ってみましたと言っても、すでに大分市さんや明屋書店さんなどのすばらしいマップがあったので(下の方で紹介しています)、それを寄せ集めして少し追加しただけのものです。既存のマップを作られた方々、先行して調査くださった方々にひたすら感謝です。
2022年11月現在、現地にはまったく行ってません。個人的に大分は(縁のある土地ですが)土地勘は全然ありませんので、既存マップにない部分はひたすらGoogleストリートビューの中を歩き回って探したものになります。当然、Googleストビューで見えない部分はわからないので、かなり推測が入っており、間違いなど多々あるのではないかと思います(実際、記事公開後に色々な方の巡礼情報で多数間違いを発見でき、随時修正してます)。間違いに気づいた方は Twitter(@alltale2037)やコメント欄から教えて頂けますと幸いです!
巡礼・特定ガチ勢ではない完全ニワカ(これまで作ったマップは野﨑まど作品のみ)なので、いろいろ至らない部分があると思います。すいません。
住宅街なども含まれていますので、現地に行かれる方はくれぐれも近隣の方々のご迷惑にならないようにお気をつけ下さい。
元のツイートは乙野四方字先生にいいね、RT頂いてしまい、びっくりするやらうれしいやらです。ありがとうございます///
なお、マップ本体と本記事は小説・映画双方のネタバレを含みます。ご注意下さい。
参考にしたもの
作成にあたり以下を参考にしました。
明屋書店高城店さんが作成された小説版の聖地巡礼マップ
2016年の時点で地元高城の本屋さん、明屋書店高城店さんが作成された愛あるマップです!
OBS『アニマジン』のインタビューで当時明かされた情報も含まれていて、地元ならではの丁寧な解説がついています。映画版との違いを見てみるのも面白いですよね。
大分市×僕愛君愛 聖地巡礼マップ
このマップはすごいです! 大分市の本気を感じます。これをもらうために大分に行ってもよいレベルです。大分市ロケーションオフィスさんの作成によるものです。
大分市内では、映画館や大分駅などあちこちで配布されているようです(大分駅では回転焼まで提供されていたとのこと!)。
大分県外だと、10月末までパネル展を開催していた有隣堂ヨドバシAKIBA店さんや、Tジョイ京都さんでの配布があったようです(有隣堂さんでの配布は終了しています)。
県外在住者にとって入手難易度がすごく高いのは難点ではありますが、それがやはり現地に来てもらうための戦略だとしたら、その趣旨を尊重したいです。独自にマップを作成してしまった自分がいうのもなんですが、自分のマップが現地に行くモチベーションを削ぐようなことにならないことを祈っています(あえて自分のマップには情報を入れすぎないようにしましたが、もし営業妨害になるようでしたらご連絡頂ければ速やかに公開停止します!)。
実際マップには、他では読めない作者や制作陣のコメント、そして映画のカットがふんだんに使われており、自分のマップには含まれていない情報が多数あります。そして何よりこれは「公式」でありその信憑性が確実であるというのは強いです。現地に行って入手する価値はあります。皆様、ぜひ現地に行ってマップをゲットしてください!
映画公式パンフレットの”LOCATION & ART SETTING”
未入手の方、東映さんの通販でも買えます!
大分市のマップを見てもネットを見てもわからなかった情報(石碑の場所など)がさらっと載っていたりして助かります。もちろんロケ地情報以外にも、乙野先生インタビューや人物相関図、年表、用語集など、ファン必携の内容となってます。高校時代の暦が行ったうどん屋さんも、ちらっと載っている絵コンテの中に書いてありました。
公式映像
もちろん、YouTube東映映画チャンネルさんから公式に公開されている動画、映像が大いに助けになりました。予告だけでなく本編映像のかなりの部分を公開して下さっているのはありがたいことです。
他の方が作られた聖地情報
自分のマップを作っている最中に、アストラルさんの記事を発見しまして感動しました! 何より現地確認済で写真がある(ちゃんとアングルなど合わせて撮影しておられる)のが本当に素晴らしいです。今後も更新されていくようなので期待です。
またこちらのテリアブログさんの記事は、映画が公開される前から小説や映画予告編に基づいた聖地巡礼記事をやはり写真入りで作成されていて、とてもわかりやすいです。
マップの収録範囲と他の収録作品について
このマップは、映画と小説両方の情報を、スピンオフも含めて重ねて表示しているのが特徴です。また僕愛と君愛で色を変えています。これによって、小説版と映画版(異なる並行世界のお話と考えると楽しいですよね)の共通点と相違点がなんとなく見えてくる気がしています。
また、乙野四方字先生の他の作品(今のところ『ミニッツ』シリーズと『正解するマド』)についても推測できる範囲で掲載しています。実は僕愛君愛のスピンオフ『僕が君の名前を呼ぶから』と『ミニッツ』には共通する地名や設定が出てきます。遠い並行世界なのかどうかはわかりませんが、僕愛君愛を読み解くヒントになるかもしれません。『ミニッツ』は本文だけからは九州らしいということしかわからなかったのですが、大分合同新聞(H28.6.29)朝刊のインタビュー記事(鶴崎工業高校図書委員会さんの『四次元ポケット』5号で紹介されています)で「地名を出してはいないが地元を舞台にしていた」とあり、確証が持てました。
乙野先生がノベライズを手がけた『アイの歌声を聴かせて』(これもとても好きな作品で、昔感想記事を書きました)については、すでにショウさん(@nenpuchi)の素晴らしいマップがありますのでそちらをご覧下さい!
まだわかってない場所
特に映画版において、以下の場所がまだわかっていません。
僕愛で暦がプロポーズした高台の公園
君愛で晩年の暦が住んでいた古びたマンション→コメント欄で教えて頂きましたがフンドーキンマンションだそうです!現在は取り壊されてしまったとのこと…僕愛で中学校に通う暦が渡る歩道橋のようなもの
君愛でサマーデイドリーム挿入時に一瞬映るカラフルなマンホールのようなもの
暦がまだ幼児だった頃に住んでいたマンションやベビーカーを押して歩いた道
君愛で虫取りをした公園
君愛の逃避行で夕方に訪れた、ライトがついた公園?
君愛の逃避行で夜にとぼとぼ歩いた狭い路地
君愛の逃避行で夜を明かそうとした防空壕
僕愛で通り魔事件があったイベント会場
とはいえ、多くは住宅街なので、具体的な特定はせずこのままぼかしておいた方がよいのかもしれませんね。特にイベント会場は作中の事件の重さを考えると、あえて原作で使われていた実在の神社から架空の地域に変更している可能性はあります。
プロポーズの公園については、あまりに見つからないのでもしかしたら架空の公園なのでは……という気もしてましたが、『市報おおいた 2022.9.1(No.1814)』の特集において僕愛制作プロデューサーの大松裕さんが以下のように語っておられたので、実在するようです。ここはちょっと行ってみたいです!
マップから読み解けるロケハンの丁寧さと登場人物の解像度
ひたすらGoogleストリートビューとにらめっこしてわかったのですが、この映画、めちゃくちゃ丁寧にロケハンしてますね。本当に一瞬映るだけのカットにもちゃんと対応する場所があって、屋外のすべてのカットがロケハンされているのではという気がします。しかも現実地理と行動レベルで整合していて、「土地勘めちゃくちゃだけど絵面だけ借りてきた」カットとか、「なぜこの道を通る?」「逆方向じゃね?」みたいなカットがほぼ皆無でした。
それらをマッピングすることで、直接描かれてない登場人物の生活の解像度がぐんと上がってきたように思います。登場人物がちゃんと「現実に住みそうなところに住み」「現実に通るであろうルートを通り」「現実に通うであろう学校に通う」。これだけでもう登場人物が同じ世界に生きているような気がしてきます。
たとえば映画版で僕愛の高崎暦が住む高崎家があるのは恐らく大分駅から見て北西方向の地域。対して君愛の日高暦が住む日高家は虚質科学研究所のすぐそば(鶴崎駅周辺)です。
通っていた中学が別々なので、高崎暦は栞に会う機会が一切ありません。高校も、高崎暦にとっては普通に生活圏内なのに対し、日高暦にとっては自宅マンションからかなり遠く、そこそこアウェイ感があったのではと想像できます。実家住みの高崎暦が和音と大分駅ホームで待ち合わせて仲良く電車通勤していたのも、日高暦が職住近接で終電も関係なく研究に没頭していたのも、いかにもな生活スタイルがにじみ出ています。
日高暦と佐藤栞の逃避行ルートは、生活圏から離れてひたすら西へ西へと逃げようとする気持ちが伝わってくるようです。そして事故の翌朝に日高暦が昭和通り交差点を「たまたま」通過して栞の幽霊に気づくのも(それまでこの交差点は暦にとって何ら特別な場所ではなかった)、一人早朝に約束の場所(石碑)を訪れてから鶴崎の自宅に戻る通り道と考えると、当然の帰結です。
「生きた一人の人間」としての登場人物の行動と人生が立ち現れてくるような、そんな現実との地続き感の強い作品世界を作り上げることに本作品は成功している気がします。
そして。このリアリティラインの高さから推測できることは。
これはきっと現地に行くと「カメラが回ってない場面」「フレーム外の風景」が一気に襲ってきて情報量で窒息するやつです。あまりに豊穣なその世界に、自分がエキストラとして立っている気分になれるやつです。
自分もいつか近いうちに、現地に立ってその境地を味わってみたいです!
歩道橋があった頃の昭和通り交差点——僕愛君愛の原風景
現地を直接訪れて初めて体感できる作品世界の圧倒的にリッチな情報量。これはGoogleストリートビューには到底太刀打ちできません。少なくとも、今のところは。
でも、現時点でもひとつだけ、Googleストリートビューでしかなしえないことがあります。
それは。
時間方向への聖地巡礼。
いわば、パラレル・シフトではなくタイム・シフト(のようなもの)。
ひたすら記録の海を沈んでいき、分岐する前の世界を垣間見る技術です。
映画公開前、早川書房さんのインタビューで、乙野先生はこんなことを語っておられました。
そう、あの交差点にはかつて大きな歩道橋があったというのです。
それを見てみたい。この物語のはじまりの光景を、乙野先生にインスピレーションを与えたというその原風景を一目、見てみたい。
ちょうど、作中の高崎暦がその光景を何度となく夢想したように。
——できるんです。それが。
そう、Googleストリートビューならね(Googleの回し者ではないです)。
ギネス・カスケードもIPカプセルも要らない。マップ左上の日時をクリックして、ただ時間軸を遡るだけでいい。
2013年まで泡を沈めます。そうして見えてくるのが、「歩道橋が撤去された世界に分岐する前」の世界の昭和通り交差点の風景です(撤去されなかった世界もあるのかな?)。
ああ。
物語はここから始まったんですね。
登ることはできませんが本当に良い眺めです。さぞ壮観だっただろうな。
もちろん当時の交差点を撮った写真は上記の記事にも載っていますし、ネット上を探せばいくらでも出てきます。でも、Googleストリートビューでその地に「降り立ち」、周囲をぐるぐると見渡したり、前後左右に歩いてみたりしたときの没入感は半端ありません。「本物」から大きく情報量がそげ落ちてしまっているのは確かだけど、それでも「そこに立っている」気分にはなるし、少しでも乙野先生の感じたであろうインスピレーションを、暦の抱いたであろう憧憬を、追体験できるような気はしてくる。
少し足を伸ばして、原作小説で暦と和音が訪れたカラオケのモデルだったという、今はなきシダックス大分都町店にも行ってみます。現実にはもう二度と見ることのできない風景に、思わず作品世界が重なって見えてきます。和音に呼び出されておずおずと入店する高校生の高崎暦が、酔っ払った和音に付き合って入店する二十代の日高暦が、見えるような気がします。
日本の都市は新陳代謝が激しいです。思い出の場所も、懐かしい風景も、いつの間にか消えていき、忘れ去られていきます。僕愛君愛の聖地のなかにも、おそらくあと数年もすればなくなってしまうものが他にも出てくるでしょう。だから、現地でしか得られない情報量を体感するなら、早いほうがよいです。
でも作品は大分の街並みのスナップショットを永遠に留め続ける。このさき何年経っても、この小説や映画に触れた人達はきっとその風景を見たくなる。そんなときにきっとGoogleストリートビューの記録情報は絶大な力を発揮するはずです。
そして、そんな風にこの作品が時代を超えて末永く愛されると良いなあと思うし、このロケ地マップがその一助になれば幸いです。
追記:フォロワーさんが早速マップを参考にして現地に行ってくださったそうでうれしいです!
追記:フンドーキンマンション
コメント欄で教えて頂いたとおり、晩年の暦のマンションのモデルとなったフンドーキンマンションですが、2012年に閉鎖、2020年には取り壊されてしまったようです(ロケハン時に現存していた可能性はありますね)。聖地ということを差し置いてもデザイン的に貴重な建物なだけに、取り壊しは本当に残念です。道理でGoogle Mapで見つからないわけです。
というわけで、まさか時間方向の聖地巡礼を再びする羽目になるとは思ってませんでした。君愛世界でマンションが現役だということは、僕らの世界からはかなりIPの隔たりが大きいのでしょう。昭和通り交差点が目と鼻の先のこのマンションに暦はいつから住んでいたのか。研究所を退職後、鶴崎に住む理由もなくなり、栞といつでも会える距離に引っ越してきたのでしょうか。
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