電車から降りたら,身柄を拘束された恐怖体験
※今日はいつもより文字数が多めで、3,000文字程度あります。お時間に余裕のある時にお読みいただければと思います。
有料設定にしてありますが、全文無料でお読みいただけます。
またパニック発作の状況が記載されているため、パニック障害をお持ちで、読むのがつらいと感じられる方は、その先を読まれないことをお勧めします。
最近は調子よかったので忘れかけていたが、
私はパニック障害を患っている。
調子がよい時は発作も起きないので、
最近のように忘れかけている時もあるが、
断続的にもう25年以上も付き合いを続けている。
そして昨日、久しぶりに恐怖の発作が起きた。
美容院に行くために山手線に乗っていた時、
駅で電車の扉が閉まり、何分間も動かなかった。
閉所恐怖症なので、私は
そのような閉じ込められた状況が恐怖だ。
なぜ止まっているのか、
アナウンスがあればまだましだ。
あとどれくらいで動くだろうという
予測ができるから。
でも「只今、安全確認を行なっており〜ます」
と呑気な放送が1度あっただけで、
その後のお知らせは何もない。
電車が動き出す気配もない。
私は動悸がしてきて、iPhoneのゲームでもして
気を紛らわせようとしたが、
手が震えて、途中でやめてしまった。
段々息苦しくもなってきた。
扉がしまったまま電車が動かず、
そのまま5分近く経ったと思う。
私は段々気が動転して、何もできなくなった。
もう限界だと思った。
周りの人たちもどうして動かないのだろうと、
キョロキョロしている。
すぐにここから逃げ出さなければ、
気を失うのも時間の問題だ。出よう。
私は震える脚でふらふら扉の前に移動した。
非常停止ボタンを探したが、
今、停止しているんだし、
押しても意味はないだろう。
とにかくボタンは見当たらない。
では、どうすれば…?
最終車両まで走って行って、ガラス越しに
車掌さんに身振り手振りで説明する?
その前に自分は倒れるのでは…?
頭の中を色々なシーンが飛び交う中、
ドア付近に小さい蓋があり、そこに
「非常時にこのレバーを引けば、
ドアを手動で開けられます」
と書いてあるのを見つけた。これだ!
私は震える手で蓋を開け、レバーを引いた。
そして恐るおそるドアに手を掛けると、
意外と簡単に開いた。
私はするりとホームに降り立ち、
また震える手でドアを閉めた。
私が崩れ落ちそうによろめいた瞬間、
ホームを走って来た若い男性駅員に怒鳴られた。
「なんで勝手に出て来たんだよ! ッたく…!」
ホームに並んでいた人たちの注目を浴びたが、
私は羞恥心より恐怖心の方が優っており、
なんとも思わなかった。
立っているのがやっとだった。
「具合が悪かったから…」
一応答えようとしたが力が出なくて、
私の声は駅員の足音にかき消された。
駅員は私の手をつかみ、ほかの駅員に私を引き渡し、
「この人。この人だから、捕まえといて」
みたいなことを言って、走って行ってしまった。
電車は動き出す兆しもなかったのに、
具合が悪くて出てきたら犯罪者のような扱い?
私は電車の運行を妨げた罪で連行されるの?
何百万円もの罰金を払わされるの?
色々な思いが頭の中をめぐったが、
弱っている私は無抵抗。
駅員に腕をつかまれたままだ。
やがてその駅員も私をほかの駅員に託して、
どこかへ行ってしまった。
3番目の駅員さんも、
最初は言われた通り私の腕を取ったが、
私の身体が震えているのがわかったからか、
離してくれた。
こんな状態で逃げるわけがないと思ったのか、
私が悪人ではないと思ったのかはわからない。
最初の駅員は怒っていて、
次の駅員も感じよくはなかった。
でも3番目の駅員さんは優しかった。
私を連行するというより、
救急車を呼ぶ必要があるか聞いてくれたり、
救護室に空きがあるか問い合わせてくれたりして、
私がふらついた時だけ手を貸してくれて、
救護室まで案内してくれた。
「具合が悪かったのですか。
決まりではドアを開ける前に
車掌に許可を取らないといけないのですが、
具合が悪い時には
そうも言っていられませんよね」
と笑顔を見せてくれて、
やっと私の気持ちは救われた。
「でもどうやって車掌さんに
許可を取ればいいのでしょうか」
と質問すると、
「まず非常停止ボタンを押すと、
車掌と通話ができるようになるので、
そのボタンを探して押していただき、
車掌の了解を得てから出るように
していただく決まりなんです…」
そうなのか。
でもそれを知っている人は何人いる?
決まりがあるならドアを開けるレバーの周囲に
その説明を書いて欲しいし、
非常停止ボタンの位置も
わかりやすく書いて欲しい。
こういうことは職員だけが知っているのではなく、
乗客にも周知しなければ意味がないのでは?
…なんてことを歩きながら考えていたが、
それをこの親切な駅員さんに訴える気力もなく、
そのまま救護室に到着した。
私を椅子に座らせてくれて、
駅員さんがホームに戻られる時、
罰金の話はなかった。
結局私は、犯罪者ではないんですね…?
と思った。
ではなぜあんな風に捕まえられたのだろう?
私は救護室で休ませてもらいながら考えた。
最初は怖かったし、やっと自力で頑張って
車内から逃げ出したのに、
犯罪者のように扱われた。
でもとにかく無事だったのだからよかった。
倒れたりと、最悪の事態にならなくてよかった。
最初、電車から降りた私を怒鳴った駅員は、
安全確認をして間もなく発車できそうな時に、
乗客が飛び出してきたため、
また安全確認を一からやり直さなければ
ならない苛立ちと、
これ以上遅れを出さないようにという
プレッシャーで、つい怒鳴ってしまったのだろう。
それに私が具合悪いわけじゃなく、
待たされるのが嫌で
気軽に出て来ちゃった人だと思ったのだろう。
どちらにしろ怒鳴るのは
その駅員がまだ未熟だからだと思う。
いつもの元気な私なら
言い返してけんかになっていたかもしれないが、
弱っていてよかったね。
あなたも制裁を受けなくて済んだし。
あ、でも元気なら車両から飛び出したりしないか。
…そんなことを考えていた。
そしてここは何駅なんだ? と思い、
救護室内でiPhoneを出して、Googleマップで
現在地を調べたら、新宿駅だった。
新宿駅はホームドアがないから、
車内から滑り出られたのか…と後から思った。
色々なことが重なってこうなった出来事だった。
でも後に冷静になって思うことは、
JRは乗客が勝手に降りたから怒鳴るのではなく、
まずはなぜ止まっているのか明確にして欲しい。
3番目の親切な駅員さんによれば、
乗客のカバンがドアに挟まったから
安全確認をしていたそうだが、
その情報は職員間で共有されているだけで、
乗客には知らされていなかった。
そして長く止まるなら、
非常ベルで車掌と連絡が取れるから、
それで車掌の了解を得ることを
ちゃんと周知徹底して欲しい。
閉じ込められて具合が悪い人がいることも、
きちんと考えて欲しい。
そういう人がどうすれば安全に
車内から出られるかを、きちんと明示して欲しい。
遅れて美容院について、
ことの一部始終を美容師さんに報告すると、
「ホームに降りて怒鳴られた瞬間、
倒れて見せればよかったんじゃん?
そうしたら怒鳴った駅員が悪者になったかもよ」
なんて冗談を言われて、笑いながら、
そんな一芝居打つ余裕もなかったなぁと考えた。
とにかく最後は大事にならず、
収まったのでよかった。
それしか言えないくらいの恐怖体験だった。
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