アルフレッド巡礼記 4日目その2: ウィンチェスター(とホームズ余談)
まんがアルフレッド大王聖地巡礼記、4日目の続き。
計らずもアルフレッド王の防衛都市の双璧を渡り歩く事になった4日目、
ウォリンフォード (Wallingford) の次は、いよいよイングランドの奈良...もとい旧首都ウィンチェスター (Winchester) へ入城。
取りあえず5ページだけですが、余談が長くなったのでアップします。
※毎度ながら非常に曖昧な記憶を掘り出しつつ描いておりますので、記憶違い・勘違いなど多々あります。ご了承ください。
【改訂履歴:2023/2】「4-15」ページ一部修正(東西の間違い、言い回しの変更)。
◆本編
※左→右にお読みください。
◆補足情報
▶パブとお宿の「The Westgate」(旧 Westgate Inn/ Westgate Hotel)。
▶「ハット・フェア」は大人も子供も楽しめる無料の『屋外アートのフェスティバル』。7月の最初の週末に開催。1974年に始まった、イギリスで最も長く続いている屋外パフォーマンス祭りだそうです。
「ストリート・パフォーマンス」の多彩さは驚きでした。
▼マンガ内で触れたエアリアル・パフォーマンスのその他の写真。
シルク・ド・ソレイユのミニ版というか、ドレスで踊る空中コンテンポラリーダンスというか、こういう装置を持ち込めるというのも2011年時点では(自分には) 新鮮でした。ヨーロッパの「フェア (移動遊園地)」文化の一端でしょうか。
で、当時のプログラムがネット上にあったので確認したところ、
「Scarabeus Aerial Theatre」と「Candoco Dance Company」のコラボレーションだったようです。
▶ アルフレッド像の足元にある説明パネルの文面は、自分で撮った写真が無かったので Open Plaquesを参照にしました。以下全文:
◆【余談】アルフレッド像の除幕式の様子
このウィンチェスターのアルフレッド像の1901年 9月20日に行われた除幕式は、『1000年祭 (Millenary Celebration) のクライマックス』として、"池の向こう側" のニューヨーク・タイムズにも掲載されたようです。
アメリカからは (マッキンリー大統領暗殺の煽りで不在だった駐英大使の代理で) アダムズ家 (建国の父の) の末裔、チャールズ・フランシス・アダムズ氏 (Jr? III世?不明) が出席。更にニューヨークでもお祝いのイベントなどが計画されている事など、あれこれ書いてあります。
東海岸における「何だかんだ言ってイギリスが故郷」意識というか、 "アングロサクソン" 層の誇りが見えるというか、アルフレッド王ブーム、なかなか広範です。
▶1901年9月21日 Vol.51 No.16133、P.3、4列目上部「STATUE OF KING ALFRED UNVEILED」
◆【参考】ローマ時代とサクソン時代の街路
▼ ウィンチェスターの地図を描いたので、ついでに:
古代ローマ属州時代に「ウェンタ・ベルガラム (Venta Belgarum)」と呼ばれていた時代の街路と、アルフレッド時代以降の街路を重ね合わせた図。
微妙にズレてます。 ※真ん中がハイ・ストリート
©Winchester Excavations Committee, Drawn by Giles Darkes, 2017 (CC BY-NC-ND 4.0 )
▼ 【比較参考】おおまかな現在の地図の全体図。
現在の実際のハイストリートは、細かく曲がっている部分があります。
【余談:街の名前】
現在の地名「ウィンチェスター (Winchester)」もローマ時代と同様に「Venta (街、城市、市場 etc)」由来の名前で、「Wintan (Ventaの)-ceaster」、つまり「街の街」(砦の街) みたいな意味らしいです。
◆【余談】シャーロック・ホームズとウィンチェスター
お恥ずかしながら最近ようやく知ったのですが、ウィンチェスターのハイストリートには、シャーロック・ホームズの「ぶな屋敷」 (The Adventure of the Copper Beeches)内にホームズとワトスンが依頼人に落ち合う場所として出てくる「ブラックスワン・ホテル」があったようです。
George Newnes for The Strand Magazine, 1892
詳しいところはシャーロキアンの皆さんがすでに100万回くらい書いておられると思いますが、
折角なので、自分が見た部分に関連する簡単なメモなど。
◆【メモ】「シャーロック・ホームズ」のウィンチェスター関連のエピソード (3話):
・「ぶな屋敷」 (The Adventure of] the Copper Beeches)
・「白銀号」 (The Adventure of the Silver Blaze)
・「ソア橋 (トール橋)」 (The Problem of Thor Bridge)
◆「ぶな屋敷」の雑な概要 (関連部):
ウィンチェスターから 5マイル (約 8km) に所在する「ぶな屋敷」の主人に雇われた家庭教師、ヴァイオレット・ハンターは、その不思議な雇用条件に躊躇してホームズに相談しにくる。結局雇用されたが、どうも色々怪しい感じなので、ウィンチェスター内のブラックスワン・ホテルにホームズ達を呼び出す...。
▼以下引用 (和訳は拙訳):
▼更に引用:
◆「ブラックスワン・ホテル」の跡地
お宿「ブラック・スワン」は実在のホテルで、1934年に解体されてしまったようですが、宿があった場所は現在「ブラック・スワン・ビルディングス (Black Swan Buildings)」という建物になっています。
...と書きつつ、アルフレッド王にしか興味のなかった自分は、まったくのノーマークでした。
▼ しかし何故か「ブラックスワン・ビルディングス」の一部は撮っていたので、ご参考までに載せておきます。(※写真右側面がハイストリートに面している)
さかさまの床屋の看板が面白かったんだと思います。
下記の参考書籍「ホームズ聖地巡礼の旅」の著者・平賀氏が訪問された際 (2009~2010年頃?) には、片隅に「ブラックスワン」を冠する不動産屋が入っていたようですが、自分がこれを撮った2011年には既に無かったようです。
かつての名残として、ホテルの入り口を飾っていた黒鳥像 (オリジナルが壊れた後に作ったレプリカ) もあったっぽいですが、自分は見落として気づきませんでした...。
とは言え、この黒鳥像のレプリカも、クビがもげたまま10年くらい放置されていたのを、2012年~にようやく修理されたようなので、2011年当時は見ても気付かなかったかも知れません。
▼修復後のブラックスワン像。下記からお借りしました。
(C) Steven Richards (CC BY-SA 2.0) (2012年7月)
この「ブラックスワン」の建物は実際に駅から近く、駅からは約700m、「ウェストゲート」からは150m程度の場所にあります。
▼このハイストリート沿いの途中の右側にあります。
◆【重箱の隅】列車内から大聖堂は見えるか?
(マンガ内にもチラっと描きましたが)
ホームズとワトスンは、ロンドン発 ウィンチェスター11:30着の列車でやって来ますが、街が近づいた頃のホームズのセリフに:
とありますが、いや、見えなかったんでは...?という気が。
というのも、ロンドンからの列車は北側から来るのですが、大聖堂は街の南側にあり、意外と見通しが悪かったような気がするからです。
(見えてたらすみません)
▼ また、セリフ内の「塔/the tower」は単数形ですが、西側の正面入り口のあたりの塔 (尖塔/spires?) の事を差しているような気もします。何故なら...
ウィンチェスター大聖堂の単数形の「塔」は中心部にある四角い「central tower」で、微妙に目立たないというか。
(※個人の曖昧な記憶による偏見です)
▼ついで。ウィンチェスター駅全景はこんな感じ。
ホームズ達が利用した1892年頃は恐らく「Winchester (City)」駅。
※1890年代当時は街の東側の外に「Winchester Cheesehill (後の Chesil)」駅もあった。
こちらは現在は廃止され、跡地は立体駐車場になっているようです。
▼【参考】ウィンチェスターの東 (アルフレッド像から200m) にある、15世紀の建物を利用したレストラン「The Chesil Rectory」。
※「Chesil」は元々の地名「Cheesehill」が訛ったようで、現在は地名も「Chesil Street」。上記の「東側の駅」も、一旦廃止された後に別の鉄道会社が再開した際は「Winchester (Chesil) 駅」と呼ばれていたようです。(が、再び廃止され、今に至る。)
当時の鉄道のトンネルは、街の倉庫として使われているっぽいです。
◆「ソア橋」、「白銀号」についてはまた別途触れるかも知れませんが、
いずれも下記の参考記事/書籍などに詳しいですので、ご参照ください。
◆参考記事/書籍:
▶ Literary Winchester - Arthur Conan Doyle
英語記事ですが、ブラックスワン・ホテルの写真があり、「ここを見にいけ」ポイントもまとまっています。
▶「ホームズ聖地巡礼の旅」 平賀三郎・著 (2010年、青弓社)
日本語だとこちらに詳しいです。
アルフレッド王像をアーサー王像と間違えている部分 (校閲ミスっぽい) などありますが、これはア王信者には平常運転でご褒美。
ともあれ、時刻表やぶな屋敷、ソア橋の推定位置など、丁寧に考察しておられます。
▶「シャーロック・ホームズの建築」北原 尚彦、村山隆司 (2022/2/22日発売)
「ぶな屋敷」(「ウィンチェスターから5マイル」) についての言及のみですが、近刊ですので参考まで。
◆アルフレッド王ギャラリー☆
アルフレッド王の様々な表情をお楽しみください。
銅像が持っている剣は取り外しができるらしいです。掃除する時は火炙りになります!
▲バックシャン!見返ってない美人!
▲向こうに見えるのはギルドホール (Guildhall)。観光案内所などが入ってます。ウィンチェスター大聖堂はその向こうの左 (南) 側。
※ギルドホールの入り口の階段がグラナダTV版「シャーロック・ホームズ」の「ソア橋の謎」(>Amazon プライムビデオ)にチラっと映っています。
取りあえず一旦ここまで。
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