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アルフレッド巡礼記 4日目その2: ウィンチェスター(とホームズ余談)

まんがアルフレッド大王聖地巡礼記、4日目の続き。
計らずもアルフレッド王の防衛都市の双璧を渡り歩く事になった4日目、
ウォリンフォード (Wallingford) の次は、いよいよイングランドの奈良...もとい旧首都ウィンチェスター (Winchester) へ入城。

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取りあえず5ページだけですが、余談が長くなったのでアップします。

※毎度ながら非常に曖昧な記憶を掘り出しつつ描いておりますので、記憶違い・勘違いなど多々あります。ご了承ください。
【改訂履歴:2023/2】「4-15」ページ一部修正(東西の間違い、言い回しの変更)。

◆本編

※左→右にお読みください。

"By eleven o'clock the next day we were well upon our way to the old English capital. "
-- Dr Watson, "The Adventure of the Copper Beeches"

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◆補足情報

▶パブとお宿の「The Westgate」(旧 Westgate Inn/ Westgate Hotel)。

【宿泊費の覚書き】2011年7月当時の室料は、ツインで約£70 (約129円/£で9,000円) だったようです。今思うとツインにしてもお高いですが、海外慣れしていないので安いB&Bを見つけられず/安全を取っていたのと、東京の狭いビジネスホテルのシングルも8000円くらいがザラだった頃なので...夏期は特にホテル代が高騰するし...ゴニョゴニョ。

▶「ハット・フェア」は大人も子供も楽しめる無料の『屋外アートのフェスティバル』。7月の最初の週末に開催。1974年に始まった、イギリスで最も長く続いている屋外パフォーマンス祭りだそうです。
「ストリート・パフォーマンス」の多彩さは驚きでした。

▼マンガ内で触れたエアリアル・パフォーマンスのその他の写真。
シルク・ド・ソレイユのミニ版というか、ドレスで踊る空中コンテンポラリーダンスというか、こういう装置を持ち込めるというのも2011年時点では(自分には) 新鮮でした。ヨーロッパの「フェア (移動遊園地)」文化の一端でしょうか。

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で、当時のプログラムがネット上にあったので確認したところ、
Scarabeus Aerial Theatre」と「Candoco Dance Company」のコラボレーションだったようです。


アルフレッド像の足元にある説明パネルの文面は、自分で撮った写真が無かったので Open Plaquesを参照にしました。以下全文:

Alfred, king of the West Saxons (AD 871-899) drove the Danish invaders from Wessex. He created fortified centres, of which Winchester, the largest, was his capital. During his reign, the streets in use today were first established. Alfred was the most esteemed of English kings. He encouraged the revival of learning and monastic life, and laid the foundation for a single kingdom of England. this statue by Hamo Thorneycroft was erected in 1901.
拙訳:「ウェスト・サクソンの王、アルフレッド (AD 871~899年) は、ウェセックスに侵略してきたデイン人を追い払いました。彼は [各地に] 防塞拠点を整備しましたが、その中でも最大のウィンチェスターを首都としました。彼の治世の間に、現在も利用されている [ウィンチェスターの] 街路が初めて整備されました。アルフレッドはイギリスの歴代の王の中でも最も名声の高い王様です。彼は学びと修道院生活を復活させ、統一王国としてのイングランドの礎を築きました。このヘイモ・ソーニークロフトの手による像は、1901年に建立されました。」(※[ ] 内は訳者補足)


◆【余談】アルフレッド像の除幕式の様子

このウィンチェスターのアルフレッド像の1901年 9月20日に行われた除幕式は、『1000年祭 (Millenary Celebration) のクライマックス』として、"池の向こう側" のニューヨーク・タイムズにも掲載されたようです。
アメリカからは (マッキンリー大統領暗殺の煽りで不在だった駐英大使の代理で) アダムズ家 (建国の父の) の末裔、チャールズ・フランシス・アダムズ氏 (Jr? III世?不明) が出席。更にニューヨークでもお祝いのイベントなどが計画されている事など、あれこれ書いてあります。
東海岸における「何だかんだ言ってイギリスが故郷」意識というか、 "アングロサクソン" 層の誇りが見えるというか、アルフレッド王ブーム、なかなか広範です。
1901年9月21日 Vol.51 No.16133、P.3、4列目上部「STATUE OF KING ALFRED UNVEILED


◆【参考】ローマ時代とサクソン時代の街路

▼ ウィンチェスターの地図を描いたので、ついでに:
古代ローマ属州時代に「ウェンタ・ベルガラム (Venta Belgarum)」と呼ばれていた時代の街路と、アルフレッド時代以降の街路を重ね合わせた図。
微妙にズレてます。 ※真ん中がハイ・ストリート

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©Winchester Excavations Committee, Drawn by Giles Darkes, 2017 (CC BY-NC-ND 4.0 )

▼ 【比較参考】おおまかな現在の地図の全体図。
現在の実際のハイストリートは、細かく曲がっている部分があります。

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【資料】上のローマ-サクソン道路比較図は「The Land of the English Kin -Studies in Wessex and Anglo-Saxon England in Honour of Professor Barbara Yorke-」から拝借しました。(CC BY-NC-ND 4.0 )
該当の章「Winchester: A City of Two Planned Towns」もオンライン&PDFで読めます。


【余談:街の名前】
現在の地名「ウィンチェスター (Winchester)」もローマ時代と同様に「Venta (街、城市、市場 etc)」由来の名前で、「Wintan (Ventaの)-ceaster」、つまり「街の街」(砦の街) みたいな意味らしいです。


◆【余談】シャーロック・ホームズとウィンチェスター

お恥ずかしながら最近ようやく知ったのですが、ウィンチェスターのハイストリートには、シャーロック・ホームズの「ぶな屋敷」 (The Adventure of the Copper Beeches)内にホームズとワトスンが依頼人に落ち合う場所として出てくる「ブラックスワン・ホテル」があったようです。

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George Newnes for The Strand Magazine, 1892

詳しいところはシャーロキアンの皆さんがすでに100万回くらい書いておられると思いますが、
折角なので、自分が見た部分に関連する簡単なメモなど。

【メモ】「シャーロック・ホームズ」のウィンチェスター関連のエピソード (3話):
「ぶな屋敷」 (The Adventure of] the Copper Beeches)
「白銀号」 (The Adventure of the Silver Blaze)
「ソア橋 (トール橋) (The Problem of Thor Bridge)

◆「ぶな屋敷」の雑な概要 (関連部):
ウィンチェスターから 5マイル (約 8km) に所在する「ぶな屋敷」の主人に雇われた家庭教師、ヴァイオレット・ハンターは、その不思議な雇用条件に躊躇してホームズに相談しにくる。結局雇用されたが、どうも色々怪しい感じなので、ウィンチェスター内のブラックスワン・ホテルにホームズ達を呼び出す...。

▼以下引用 (和訳は拙訳):

『明日の昼にウィンチェスターの「ブラック・スワン」ホテルにいらしてください』と [手紙に] 記されていた。
"Please be at the 'Black Swan' Hotel at Winchester at midday to-morrow," it said.

▼更に引用:

「ブラック・スワン」は、ハイストリートの、[ウィンチェスター] 駅からほど近い場所にある評判の宿である。くだんの令嬢がそこで我々を待っていた。
The "Black Swan" is an inn of repute in the High-street, at no distance from the station, and there we found the young Lady waiting for us.

◆「ブラックスワン・ホテル」の跡地
お宿「ブラック・スワン」は実在のホテルで、1934年に解体されてしまったようですが、宿があった場所は現在「ブラック・スワン・ビルディングス (Black Swan Buildings)」という建物になっています。
...と書きつつ、アルフレッド王にしか興味のなかった自分は、まったくのノーマークでした。

▼ しかし何故か「ブラックスワン・ビルディングス」の一部は撮っていたので、ご参考までに載せておきます。(※写真右側面がハイストリートに面している)
さかさまの床屋の看板が面白かったんだと思います。

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下記の参考書籍「ホームズ聖地巡礼の旅」の著者・平賀氏が訪問された際 (2009~2010年頃?) には、片隅に「ブラックスワン」を冠する不動産屋が入っていたようですが、自分がこれを撮った2011年には既に無かったようです。

かつての名残として、ホテルの入り口を飾っていた黒鳥像 (オリジナルが壊れた後に作ったレプリカ) もあったっぽいですが、自分は見落として気づきませんでした...。

とは言え、この黒鳥像のレプリカも、クビがもげたまま10年くらい放置されていたのを、2012年~にようやく修理されたようなので、2011年当時は見ても気付かなかったかも知れません。

修復後のブラックスワン像。下記からお借りしました。
(C) Steven Richards (CC BY-SA 2.0) (2012年7月)

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この「ブラックスワン」の建物は実際に駅から近く、駅からは約700m、「ウェストゲート」からは150m程度の場所にあります。
▼このハイストリート沿いの途中の右側にあります。

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◆【重箱の隅】列車内から大聖堂は見えるか?
(マンガ内にもチラっと描きましたが)
ホームズとワトスンは、ロンドン発 ウィンチェスター11:30着の列車でやって来ますが、街が近づいた頃のホームズのセリフに:

さて、大聖堂の塔だ
"...Well, there is the tower of the Cathedral,"

とありますが、いや、見えなかったんでは...?という気が。
というのも、ロンドンからの列車は北側から来るのですが、大聖堂は街の南側にあり、意外と見通しが悪かったような気がするからです。
(見えてたらすみません)

▼ また、セリフ内の「塔/the tower」は単数形ですが、西側の正面入り口のあたりの塔 (尖塔/spires?) の事を差しているような気もします。何故なら...

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ウィンチェスター大聖堂の単数形の「塔」は中心部にある四角い「central tower」で、微妙に目立たないというか。
(※個人の曖昧な記憶による偏見です)

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▼ついで。ウィンチェスター駅全景はこんな感じ。
ホームズ達が利用した1892年頃は恐らく「Winchester (City)」駅。

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※1890年代当時は街の東側の外に「Winchester Cheesehill (後の Chesil)」駅もあった。
こちらは現在は廃止され、跡地は立体駐車場になっているようです。

【参考】ウィンチェスターの東 (アルフレッド像から200m) にある、15世紀の建物を利用したレストラン「The Chesil Rectory」。
※「Chesil」は元々の地名「Cheesehill」が訛ったようで、現在は地名も「Chesil Street」。上記の「東側の駅」も、一旦廃止された後に別の鉄道会社が再開した際は「Winchester (Chesil) 駅」と呼ばれていたようです。(が、再び廃止され、今に至る。)
当時の鉄道のトンネルは、街の倉庫として使われているっぽいです。

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◆「ソア橋」、「白銀号」についてはまた別途触れるかも知れませんが、
いずれも下記の参考記事/書籍などに詳しいですので、ご参照ください。

◆参考記事/書籍:
Literary Winchester - Arthur Conan Doyle
英語記事ですが、ブラックスワン・ホテルの写真があり、「ここを見にいけ」ポイントもまとまっています。

ホームズ聖地巡礼の旅 平賀三郎・著 (2010年、青弓社)
日本語だとこちらに詳しいです。
アルフレッド王像をアーサー王像と間違えている部分 (校閲ミスっぽい) などありますが、これはア王信者には平常運転でご褒美。
ともあれ、時刻表やぶな屋敷、ソア橋の推定位置など、丁寧に考察しておられます。

▶「シャーロック・ホームズの建築」北原 尚彦、村山隆司 (2022/2/22日発売)
「ぶな屋敷」(「ウィンチェスターから5マイル」) についての言及のみですが、近刊ですので参考まで。


◆アルフレッド王ギャラリー☆

アルフレッド王の様々な表情をお楽しみください。
銅像が持っている剣は取り外しができるらしいです。掃除する時は火炙りになります

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▲バックシャン!見返ってない美人!

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▲向こうに見えるのはギルドホール (Guildhall)。観光案内所などが入ってます。ウィンチェスター大聖堂はその向こうの左 (南) 側。
※ギルドホールの入り口の階段がグラナダTV版「シャーロック・ホームズ」の「ソア橋の謎」(>Amazon プライムビデオ)にチラっと映っています。

取りあえず一旦ここまで。

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