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【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第10話
成美が小学6年生の或る日、いつものように尚人を連れて友達の家に行こうとしたら、尚人から頭が痛いと言われて断られた。
折角の自慢の弟をお披露目するいい機会だったから、少々強引ではあるが連れて行こうとしたが頑なに拒否する尚人の様子に結局諦め、一人で友達の家に行った。
成美は友達との会話の中においても何かしらこじつけて弟の自慢をしたのであるが、友達の一人である佳美が何か言いたそうな雰囲気だった
【小説】カレイドスコープ 第15話 泰人
前回
最初に目に入ったパンチングが施された正方形の板の集合体が、天井の細工だと分かるまでに30秒近くかかった。
そして自分が寝そべっていて上を向いている事を理解するまでにも、更に30秒ほどの時間を擁している。
左腕には点滴の針が刺さっていて、まだ点滴液は半分程度も残っているようであった。
重力が倍近くあるくらいに自分の体を動かすのが難しく、体のあちこちは打撲のような痛みでヒリヒリ
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第8話
「ただいまーっ」
なるべく抑揚の少ない声で玄関を開けてから言うと、母が玄関まで一人で来るととりあえず怒っているポーズを取る為か眉間に皺を寄せ、「ちょっと最近遅い事が多いんじゃない?」と注意をした。
「はーい、ごめんなさい」
成美は一応は遅くなった事に対しての言い訳を帰り道で考えてはいたが、この様子だったら別に言わなくてもやり過ごせそうな雰囲気だったので、馴れ合いの状況を作って靴を脱い
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第7話
Re:k@へのメールを打ち返して帰路を急いでいると、目前の文房具店から眼鏡を掛けて化粧っ毛の無い女子高生が出てきたのに気が付いた。
両手に画材を抱え込んでいるその子は、成美の立ち位地からは逆光で見えにくかったが、中学時代の同級生の川口美智子である事がすぐ分かり、虚を付かれたようにすぐに反応が出来なかった。
美智子も成美の存在に気が付いたのか一瞬笑顔を向けたが、すぐによそよそしい態度になり
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第6話
Re:k@からのメールは同年代にしてはとても子供っぽい印象を与えたものである。
今時の高校生にしてはデコメを多用したものではないのであるが、記号を使って顔文字を使ったものや、漢字の当て文字を本来の漢字に代わって使用したものを駆使し、それは某巨大掲示板で一度成美が見たものに似ており、彼女がかなりのオタクである事が分かった。
今回のメールの内容は先月にTV放送され始めたアニメに対しての感想だ
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第5話
ファーストフード店を出てその店先で解散する事になり、馴れ合いの簡単な挨拶を交わしてその場から各々の帰路に着いた。
帰宅途中に成美の携帯にメール着信の短いバイブ音が鳴ったので、ディスプレイを開くとメル友のRe:k@からメールが届いていた。
Re:k@は或るサイトの掲示板で知り合った女の子で、お互いの趣味が一致したのを理由に盛り上がり、アドレスを交換して近況のやり取りをしている友人だ。
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第4話
やっと店を出た頃はすっかり辺りが暗くなってきており、携帯で時刻を確認すると8時過ぎになっていた。
成美は一応門限を七時半と決められてはいたが、母が何故か必要以上に理解力があるせいでそんなに父親からも怒られた事がない。
或る日はついつい話に盛り上がって帰宅したのが9時前になってしまったのであるが、恐る恐る家に帰ると誰からも何も言われずに拍子抜けした。
小さい頃に遊び過ぎて遅れて帰ってき
【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第3話
既にファーストフード店に入って2時間は経過していたが、成美と澤口達の会話はまだまだ終わりそうな雰囲気ではなく、むしろやっとエンジンが掛かってきた様子を呈し始めていた。
「結局アノ人は、私と他人だから何も理解できないのよ」
澤口はいつもの決め台詞を呟き、窓の外の遠くを眺めるような仕草をした。
そのポーズを取られると、その場に残っている二人は暗黙の了解で重々しく頷くのが習慣になっており、
【短編小説】デジャヴ
心地よい振動に揺られてウトウトしていたところ、急な車線割込みをしてきた車を回避する為に路面バスは急ブレーキを掛け、彩菜はその衝撃で熟睡の一歩手前で我に返った。
自分の席のすぐ後ろに違和感があったのでさりげなく振り返ると、20代半ばの男がスマホを片手に車内の撮影をしているのが分かり、その様子からバス好きのYOUTUBERか何かだと思い、あまり他の人の存在に気を遣っていない様子に少し嫌悪を感じた
【短編小説】 浮気疑惑
100円ショップで買った伊達眼鏡は幅が狭いせいか克弘のこめかみを圧迫し、軽い頭痛に似た痛みが先程からの緊張感を更に増幅させていた。
握った掌を開けば久しく見たことのない量の汗をかいており、慣れない事を必死にこなそうとしている健気な自分が間抜けではないかと思える度に、くじけそうな心をなんとか立て直して身体に力を入れた。
普段穿かないジーンズは妙に太股に張り付く違和感がずっと気になり、上に羽