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【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第5話

 ファーストフード店を出てその店先で解散する事になり、馴れ合いの簡単な挨拶を交わしてその場から各々の帰路に着いた。

 帰宅途中に成美の携帯にメール着信の短いバイブ音が鳴ったので、ディスプレイを開くとメル友のRe:k@からメールが届いていた。

 Re:k@は或るサイトの掲示板で知り合った女の子で、お互いの趣味が一致したのを理由に盛り上がり、アドレスを交換して近況のやり取りをしている友人だ。

 学校での生活のほとんどは澤口達と過ごしており、表面上は一番の友達と言う事になっているのではあるが、成美はいつまで経ってもそれに馴染む事は無く違和感を抱えたままになっているのは否めなかった。

 別に彼女達に対して不満や不信感が有る訳ではないのだが、親友と言うよりはライバルに近い感情を抱えていたのには間違い無い。

 毎日どれだけ自分がクールであるかを競い合い、なるべく無感動な振りをしてやり過ごす事で、達観した風な印象を周囲に与える事を共通の価値観として認識している仲だ。

 それは心地良い瞬間をもたらしてくれる一方、どうしようも無く孤独感に襲われる事もあった。

 中学生時代まで一緒につるんでいたドン臭い連中が、急に懐かしくなってくる。

 決して戻りたくはないと思う反面、あの頃のように体面を気にせずにはしゃげたらそれも楽しいかもしれないと夢想する事も少なくなかった。

 成美はRe:k@とは或るオタクアニメのサイトの掲示板で知り合った。

 中学生時代にアニメオタクだった川口美智子の影響で、一時期は同人誌作りにも加担していた成美にとって、そのアニメサイトは高校生になってまだ友人が少なかった時期に簡単に友人を作る事が出きる場所であったのだ。

 つるむ友人が出来た今でも、何故かRe:k@との連絡を途絶える事無く続けていた。

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